2015年に千葉に転居して、2016年に地元で
フチグロトゲエダシャク(→
春の蛾を訪ねて)が採れることが分かり、2017年には複数の♂を採集できた。
そして訪れた2018年初春。
今年こそ♀を狙いたいと意気込む中、SNSに本種の採集報告がポツポツと見られ始めた。
そして3月1日に一気に気温が上がり最高気温が20℃を超えたため、翌
3月2日に近所の川の土手に向かった。

10時前に土手に到着し、おろしたての網を組み立て、握る。
2月に奄美大島でケブカコフキを採集したとはいえ、本格的な網振り採集は今年初。
前日がかなり暖かかったのでそれに比べると少し肌寒く感じるが、空は晴れ渡り、空の青と土手の枯草色とのコントラストがまるで合成映像のように見える。
雰囲気的に少し時期が早いようにも思えるが、はてさて…と歩いていると、何かが飛んだ。
だが、黒っぽく見える。
となると…

やはり
ベニシジミ だ。
とまると朱~オレンジの鮮やかさが目立つが、飛んでいると意外と黒っぽく見える。
一方でフチグロトゲエダシャクは白っぽく見えるので、似たサイズの虫ではあるが飛んでいる時の色味である程度見分けは付く。
ギシギシの葉の上を動くものがいるなと目をやれば、
ナナホシテントウ。

モンシロチョウ、モンキチョウも1」頭ずつ見掛けた。
まだ肌寒さは残るが、確実に春は始まっているらしい。
そうして11時を過ぎた頃…
明らかに、ソレと分かる白っぽいものが飛んだ!
慌てて駆け寄り網を振るが、スカ!
フッチーは一度振り逃すと風に乗ってはるか風下へと逃げてしまうコトが多い……
…のだが、今回はなぜか風に逆らうように飛んでおり、数回振り回して幸運にもネットイン!

相変わらず、
ぷりてぃ な蛾である。
そして、ハネの表の模様はよく写真で見るが、裏面はこんなに白っぽい。
飛んでいるとこの裏面の色がよく目立ち、かなり白っぽく見える。
この日は、時折飛んでいる♂を見掛け、数頭を採集出来たものの♀の発見には至らず…
ただ、個体数的にもまだ発生の前半と思われ、まだチャンスはあろうと午後1時に引き上げた。
そして、その4日後の
3月6日。
朝は曇り空で気温も低く、『せっかくの休みだけど、今日は無理かなー…』と思っていたのだが、やがて日が射し始め、迷い始めた。だが日は射しても気温は低めで肌寒く、風もまだある。
う~ん…どうしたものか…
そうこうするうち、10時半を過ぎる頃には風も穏やかになってきたので、思い切って行ってみることにした。
こういう時、行かないでいると後で「やっぱり行っておけば…」と後悔することが多い。
11時前にポイントに立つと、さっそくモンシロチョウ。少し歩けばまたモンシロチョウ。
先日より明らかに数が多い。この数日で羽化したのだろう。
フッチーの姿を探して土手下から見上げるようにしながら歩いていく。
…以前の記事でも書いたが、この虫は枯草の上を飛ぶと非常に見づらく、簡単に見失ってしまう。
そのため、自分は低い位置から土手を見上げることで
空を背景にして姿を探すようにしている。
彼らは地表に近い低い位置を、こんな感じにランダムに、しかも素早く飛び回る。

少しでも枯草に紛れさせないように視線を低くして探していく。
…
万が一ミニスカートの女性でも通り掛かろうものなら確実に勘違いされそうな行動であるが、まぁここならジョギングや自転車で通る人はいてもミニスカの女性は滅多に通るまい(笑)
1♂を採集し、その後は次々とスカって成果も上がらず、しばらくして…
時刻はちょうど12時頃、いつも以上に地表スレスレを飛ぶ♂を見つけた。スピーディーさもなく、まるで何かを探すように…いや、
何かに近付こうとするようにゆっくりと飛んでいる。
そして、枯草の上に止まった。
フチグロトゲエダシャクの♂がとまるなど初めて見た……
…というコトは、もしかして…!?
とまった場所から視線を外さないようにしながらゆっくりと近づき、確かめる…
♀ キタ----(゚∀゚)-----!!!!
♂の下にいる地味な色をしたのが♀である。
…っていうか、本種の実は♀を見つけたのはこれが初めて。
嬉しくなってバシバシ撮影していると、やがて♂は交尾を終えてパッと飛び去ってしまった。
少し勿体無い気もしたが、せっかくなので♀単体の写真も撮っておく。

…♀の姿がおかしいことに気付いただろうか。
実は、フチグロトゲエダシャクの
♀には翅(ハネ)がない。
これでも立派な成虫で、♀は飛ぶことなく地上を歩きまわる。そしてフェロモンを飛ばして♂を呼び寄せ、飛んできた♂と交尾をするのである。
お腹は卵が詰まってパンパンに膨らんでおり、思っていた以上に大きい。
地元でフッチーを初採集してから3年目、初めて採集(埼玉)してからなら4年…
ようやく本種の♀を採集することができた。
内からジワジワと込み上げる喜びを噛み締めながら、♀を眺める。
…その後、数頭の♂を採集して、1時半頃に採集を切り上げた。
ギシギシの葉上で交尾するコガタルリハムシも見られ、春は確実に来ているのを感じた採集だった。