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沖縄ケブカコフキ探索2016~その3~

12月26日

朝起きて、まずはバキバキに固まった体を動かし、ほぐす。
天気予報によるとこの後は次第に下り坂になっていく予報なので、昼間にチョウを採るなら今日ぐらいしかチャンスはないかもしれない。
まずは一通りライトトラップをチェックするが、ケブカコフキは影も形もない。
これは、いよいよもってボーズの予感が…と暗雲立ち込めるが、まずは昼間の採集をしよう。

センダングサが咲いてキチョウなどが飛んでいる辺りに車を停め、網を振る。沖縄といえど12月ともなると流石にチョウの数は少ないが、それでも種類はいくつか見られる。アオスジアゲハ、カラスアゲハ、ジャコウアゲハ、ルリタテハ、アサギマダラ、リュウキュウアサギマダラ、ツマベニチョウ…どれも1~数頭ずつなのだが、思っていたよりチョウの種類は多い。
なにより、この時期にカラスアゲハの成虫がいたのはちょっと驚きだった。
いくつかのチョウを採っていると、午後になりやがて陽射しがなくなってきた。

陽射しがなくなると途端にチョウは飛ばなくなってしまうので、とりあえず少し買い出しでもしようかと島に2軒しかない商店に向かう。
流石に大手コンビニのような便利さは求められないが、パンなどの食料はあるし最低限必要な物は手に入る。ありがたい限りである。
必要な物も入手したし、さてどうしようかと考えたが…とりあえず、昨夜通った際に煌々と灯火の点いていた某施設に行ってみることにした。


…ところで。
どうやらカーナビさんによると、ここで右折すると東へと抜ける道らしいのだが…
カーナビの道

…右を見ると、こんなステキなススキ草原が広がっているのだが
実際の道


…。


……。


…OK、分かった。
渡嘉敷島の人からすれば、これぐらいは車で通過できる なんだ!(※違います)

見るからに「道があった痕跡」はあるので、元々は車が通れるレベルの未舗装道路があったものと思われるが、集落が近くにないためこの道を利用する人も少なく、次第に荒れて、今ではこうして藪に埋もれ自然に還ろうとしているのだろう。
だが、離島ゆえデータ修正もないままカーナビには残ってしまっているのだろう。
(…実際、帰ってから最新の地図で見てみたら、この道は既に消されていた。)


さて施設に辿り着き、自販機で飲み物を買ってそれを飲みながら少しフラフラする。
「青少年交流の家」とかいう所で、利用者でなくても通り抜け可能なので、まぁちょっと歩かせてもらうぐらい良いだろう。
昨夜通りがかった時にライトが点いていた所を見てみるが、蛾の死骸もない。
甲虫とかだと隙間に隠れてたりするよなー…なんて思いながら芝生と壁の境のあたりを何気なく見てみたところ…



「あっ!」

思わず声を上げて反射的に拾い上げると…




渡嘉敷島ケブカ♂
ケブカコフキじゃねーか!!!!Σ(゚Д゚;)

残念なことに既に死んでしまっているが、まぎれもないケブカコフキコガネである。
触ってみると関節もまだ柔らかく、かなり新鮮なように思える。

なんという事だ…

見つけてしまった。

…だが、ここは沖縄本島からの宿泊客も来る可能性が高いスポットであり、しかも見つけたのは死骸。
万々が一ではあるが、沖縄本島から来た人にくっついて島に来てしまった死骸(または生きて入り込んだ)という可能性も考えられなくはない。
これは是非とも追加個体を見つけて、この島に生息している確証を得たい。

俄然モチベーションが上がり、ヤル気が出てきた!
陽が落ちて暗くなるのを待ち、さっそく動き出す。

まずは施設付近のリュウキュウチク群落からチェックする。
ライトトラップにはケブカは飛来しておらず、懐中電灯を持って藪を歩いてみるが、羽音はない。既に発生ピークは完全に越えてしまっているので個体数は相当少ないだろうが、あの1頭はおそらくこの島に生息している個体だと思われるので、まだ活動している個体はいるというコトだ。
同じ「羽音も聴こえない状況」でも、昨夜とはモチベーションもだいぶ違う。

まずは灯火を狙ってみようかと、だいぶ離れた場所の灯火を見に行ってみることにした。
離れた…と言っても小さな島なので、車で30分かそこらで着いてしまう。駐車場に車を停めて近くの明かりを見ると、いきなりいた。
灯火に飛来した小型♂がアリに襲われている。
見た目にもかなりスレた個体なのは分かったが、貴重な個体なのでアリから横取りする。
「はいはいはい、ちょうだいね~。」
虫の全身にまとわりついたアリを吐息で吹き飛ばし、確保。まだ生きている。
夕方に死骸を拾った場所からここまで飛来してくるとは思えず、これで生息はほぼ確定だろう。
「よっしゃ!」

これで渡嘉敷島の初記録、ついでに生息確定と考えて良いだろう。

気を良くして近くの明かりも見ていくが、ヤモリが来ていたぐらいで追加の個体は見られなかった。
すぐ裏には丈の低いリュウキュウチクの藪があり、そこで発生した可能性が高そうだ。
「発生ピークだったらなぁ…」と呟いてみるが、状況は変わらない。
他のライトトラップに飛来した可能性もあるので巡回しに行ってみる。
カーナビに打ったポイントを頼りに順番に回っていくと、カンショコガネやガムシなど他の甲虫類がいくつか飛来している。昨夜はろくに飛来していなかったので、昨夜よりは多少好転していると思うことにしておくが、一通り巡回してもケブカコフキは来ていなかった。

生息が確認できたからには、可能なら♀も採りたいところではあるが…♂すらこれだけ少ない状況ではかなり厳しい。
とりあえず一巡したのでまた最初の場所に向かってみる。
仕掛けたライトトラップを確認しようと藪に踏み込もうとすると、足元を何か小さなモノが走った。

「ぅん…?」
トカゲ…いや、ヤモリ…?でもなんか見慣れない色だったような…?

気になって腰を屈めてみると、また走る。
だがすぐに止まったので姿を確認できた。
「トカゲモドキ!」
渡嘉敷トカゲモドキ幼体

南西諸島の一部の島に分布するヤモリに近い仲間だが、壁などに貼り付いているイメージのヤモリと違い、体を起こして地面を走り回ったりする。
日本にいる種はクロイワトカゲモドキといい、ここ渡嘉敷島にはその亜種であるマダラトカゲモドキが生息している。
一度は見てみたいと思っていた生き物のひとつで、興奮しながら撮影。捕まえて触ってみたくなるが、クロイワトカゲモドキは天然記念物に指定されているので、お持ち帰りは元より触るのもご法度…撮影だけで我慢しておく。

ケブカコフキも見つかり、素敵な生き物に会えて気分は軽い。
トラップ巡回2周目を回っていくと、今度は路上にヘビの姿。近付いてみると、なんとなくヤマカガシに近い雰囲気が…
ガラスヒバァだ。
渡嘉敷ガラスヒバァ
牙が小さいために咬まれた被害報告は無い(?)らしいが、けっこう強い毒を持った毒蛇である。穏やかな顔をしているが、万が一というコトもあるので不用意に手を出さない方が良い。
撮影だけしてまた走り出すと、今夜は生き物とよく出遭う。
タイワンクツワムシに、
渡嘉敷タイワンクツワムシ
リュウキュウアオヘビも。
渡嘉敷アオヘビ

途中、空が満天の星空なのに気付き、少し開けた辺りで車を停めて空を眺める。
久しぶりに見る天の川。
ケブカ探索で張りつめていた神経がスーッと緩んでいくのが分かる。

とうとう初記録出したなぁ…

渡嘉敷島でケブカを見つけたという興奮はだいぶ収まり、感慨がスーッと胸に染み込んでくる。
2010年辺りからずっとケブカコフキコガネを追い続けてきたが、♀の初記録は各所で出しつつも「完全な島初記録」は出したことがなかった。喜界島も初記録ではあるが、ネット上に採れた話が出ており、いるのは分かっていた。
まったく生息地からある程度距離があって、情報の無い島にチャレンジしたのは、伊平屋島が最初。でも見事に惨敗。続けて伊江島も行ってみたものの、またしても惨敗。やはり、これだけ大型の虫で初記録を出すのは簡単ではないと思い知らされた。
だが、懲りずに今年は渡嘉敷島に挑戦した。資金も日程も厳しい中で、無理してでも来て良かった。

静かな満天の星空を見上げてしばし穏やかな感慨に浸る。
さて、そろそろ探索を続きをしようかと車に戻ろうとしたが、その前にちょいと道脇の側溝を覗いたら、
渡嘉敷島トカゲモドキ成体
「トカゲモドキ!」

…なんと、本日2頭目のマダラトカゲモドキである。
しかも、先程の個体より遥かに大きい。こうして見ると、先程の個体はまだ幼体だったのだとよく分かる。
こちらは全体にゴツくて顔つきも鋭い。先程の個体は格好良い中にも幼さが残っていたように思う。

場所が場所だけに写真もいまいちシマらないが、触るワケにいかないので仕方ない。
そのすぐ近くにはコブナナフシもいた。
渡嘉敷コブナナフシ

今夜は本当に生き物が多い。
この調子でケブカコフキの追加個体も!…と意気込んだが、そこまで現実は甘くなく、深夜2時過ぎまで探索を続けたものの追加の個体はおろか死骸すら見つけることは出来なかった。

だが、これで生息は確認できた。
本島に戻るのは明後日の予定だから、もう一晩ある。だが、今年はもう完全に発生ピークを過ぎてしまっている。
明晩もう一頑張りするか、それとも記録は出せたのだから予定を早めて明日の船で本島に戻ってしまうか…
悩みつつ、今夜は眠ることにした。
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非公開コメント

おめでとうございます!

情報のないポイントで目当ての虫や、思いも掛けなかった憧れの虫が採れた時の達成感は堪らないものがありますよね。ましてや初記録となると、痕跡を見つけた時の『擦り切れかけた気力がたちまち漲る』のも、もの凄く共感できるものがあります。

No title

おめでとうございます。
初記録は本当に誰にも塗り替えられないものなのでいいですよね。
3度目の正直で懲りずに挑戦するのはすごいなあと思います。
自分の好きな虫で初記録を作るのは本当に贅沢ですね!

Re: おめでとうございます!

>きむらいずみさん
ありがとうございます。
ハマり、何年も追い掛けてきた虫だけに、初記録を自分の手で叩き出せたのは本当に嬉しいです。

Re: No title

>タイコウッチさん

> 自分の好きな虫で初記録を作るのは本当に贅沢ですね!

…まさにコレです(笑)
偶然採れた虫が初記録…というのも悪くはないのですが、好きで追い掛け、狙って初記録を出せたというのは本当に贅沢な喜びだと思います。
無理してでも行って良かった…!
プロフィール

虫けら屋

Author:虫けら屋
もっぱら採集中心の虫屋さん。当初は東京で発生が確認されたが、後に埼玉県に移入、現在は千葉県での生息が確認されている。
肉眼で見て楽しめるぐらい大きなミーハー虫が好き。

Blog内の写真・文章等については、少しの引用的転用ぐらいならOK…と思っていたのですが、なんか最近フリー素材か何かと勘違いされているフシがあるので、今後は勝手に使わないでね。

※お問い合わせを頂く際はEメールにてお願い致します(採集ポイント等についてはお答えできかねますが…)。なお、採集遠征等により、お返事まで数日以上掛かる場合もございますので予めご了承下さい。
   ↓↓↓
akepon6464@yahoo.co.jp

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