杉の樹皮の下に

近所の林を軽い気持ちで探索。枯れた杉の樹皮の下に何かいないかとベリベリッと剥がしてみたところ、黒いツブツブが。
何かと思ってよくよく見れば、クロウリハムシの集団だった。
越冬クロウリハムシ
ハムシの中でも「超」の付くド普通種で、活動シーズンにはカラスウリなどにいくつも付いているのを見掛けるが、越冬している姿となると見た記憶はあまりない。
見慣れた普通種であっても、普段と違う状況で見つけると嬉しいものである。
面白くなって他にも何かいないかとめくっていくと、チビタマムシやハムシダマシなんかも姿を現す。
更には、ヤモリまで。
越冬ヤモリ

他の木はどうかと歩いていると、大きな杉の切り株。
見てみると樹皮の一部だけ浮いているようなので、そこを力任せにベリベリッと剥がして見たところ、モロモロモロッと大量のワラジムシが溢れ出した。
うわっ!と思ったものの、艶消し灰色の中に青みがかった金属光沢が混じっているような気がしてよくよく見てみると、
越冬マイマイ2頭
あッ!

やや青みがかった黒っぽいモノが2つ、頭を覗かせている。
「こんな隙間によく潜り込んだなぁ…」なんて思いながら丁寧に引っ張り出せば、やはりマイマイカブリである。
越冬マイマイ2頭-2

…それにしても、千葉に転居してからマイマイカブリの遭遇頻度がずいぶんと上がったような気がする。
以前は、マイマイカブリなんて年に一度出遭えるかどうか…という感じだったのが、千葉に来て2年弱で既に十数頭は出遭っている。
そのうち「マイマイカブリを採るぞ!」と狙って採ったのが4頭、残りは普通に探索をしていて偶然バッタリなものばかり。

この辺りのマイマイそこそこ密度が高いのか?
それとも普通に生息している地域で腰を据えて採集していればこのぐらい出遭うものなのか?
…よく分からないが、見つけるとついつい採集してしまう。

なんにしても、こんな大きな虫が採れるのは想定外で、毒ビンも持っておらず、仕方なく生かしたまま指に挟んで自転車に跨り、家まで帰った。
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沖縄ケブカコフキ探索2016~その5~

※~その4~の最後の方に加筆修正しました(^^;


12月28日

空が明るくなってきてウトウトと目を覚ましかけたが再び目を瞑り、やがて携帯のアラームで目を覚ます。
ぼんやりと外を眺めながらゆっくりと目が覚めてくるのを待ち、8時になったので、まずは渡嘉敷村のホームページを開き、船の運航を確認する。
どうやら無事に運航するようだ。…これで一安心。

目も覚めたのでトラップを回収するが、残念ながら追加のケブカコフキは入っていなかった。
まぁ今回は完全に時期もハズしてしまったし、4♂採れただけでも大成功だろう。
あとはもう船の時間まで暇になってしまうので、側溝に溜まった落ち葉の下にゴミムシでも隠れていないかと枝を拾って落ち葉を引っかき回してみる。

…すると、不完品ながらコカブトムシが出てきた。
渡嘉敷島コカブト
「をを!」
これはちょっと嬉しい最期の収穫である。
あとはお世話になった渡嘉敷島のスタンドでガソリンを入れ、のんびりと船を待つのみ。
再び昨日の港売店に行ってみると、昨日のお姉さんがオバチャンと喋っていた。
昨日買った鮪ジャーキー(渡嘉敷島特産土産)が思いのほか美味しかったので、土産としても買って行こうと、相方へのお土産と共に選ぶ。
食事は美味しかったものの、自然に詳しいというご主人には会えなかった旨を伝え、やがてやってきた船に乗り込み、沖縄本島へと向かう。
渡嘉敷港

1時間ちょっとの船旅は、思ったほど揺れはしなかった。
港が空港の近くなので、本島近くまで来た時に真上を低く飛行機が飛んで行った。

明日には帰るので最後の晩は何処で…と思ったが、今シーズンが完全にピーク過ぎなのか確認する意味も込めて、再度南部ポイントに行ってみることに(…他のポイントまで行くのが面倒だったとも言う)。
頃合いの時間になり、まずは灯火を見てみると、いきなり♂が落ちていた。
「おるやんけ!」
南部ケブカと外灯
確保してそのまま藪に突入する…………

……

……が、結局2~3時間探してもケブカの羽音すら聴こえず。
仕方がないので車を走らせ、知念方面で目を付けていた場所に行ってみる。

だが、そちらでもケブカコフキは影も形もなく、コブナナフシ1♀を拾ったのみだった。
うぅむ…本島最南部のケブカは…やはり…そういうコトなのか…?

翌日は飛行機の時間までだいぶあったため、末吉公園で軽く採集をして帰った。
…夏ならオキナワヒラタとかいそうな雰囲気もあり、夏にも一度ぐらい沖縄本島来てみたいよなぁ…なんて思いつつ(バナナトラップの残骸に少々不愉快な思いをしたりもしつつ)沖縄を後にした。



これで渡嘉敷島のケブカコフキコガネを正式に報告できる。
…となると、おそらく慶良間諸島の他の島々にも生息している可能性は高く、まだまだ調査しなくてはいけない島々は場所はあるようだ。
とりあえず、再来年は座間味島か、阿嘉島か…






…なお、最後の晩に採集したコブナナフシ♀は、現在自宅にて飼育中。
ポツポツと産卵もしており、無事に孵化してくれたら楽しいのだが…
沖縄コブナナフシ♀

沖縄ケブカコフキ探索2016~その3~

12月26日

朝起きて、まずはバキバキに固まった体を動かし、ほぐす。
天気予報によるとこの後は次第に下り坂になっていく予報なので、昼間にチョウを採るなら今日ぐらいしかチャンスはないかもしれない。
まずは一通りライトトラップをチェックするが、ケブカコフキは影も形もない。
これは、いよいよもってボーズの予感が…と暗雲立ち込めるが、まずは昼間の採集をしよう。

センダングサが咲いてキチョウなどが飛んでいる辺りに車を停め、網を振る。沖縄といえど12月ともなると流石にチョウの数は少ないが、それでも種類はいくつか見られる。アオスジアゲハ、カラスアゲハ、ジャコウアゲハ、ルリタテハ、アサギマダラ、リュウキュウアサギマダラ、ツマベニチョウ…どれも1~数頭ずつなのだが、思っていたよりチョウの種類は多い。
なにより、この時期にカラスアゲハの成虫がいたのはちょっと驚きだった。
いくつかのチョウを採っていると、午後になりやがて陽射しがなくなってきた。

陽射しがなくなると途端にチョウは飛ばなくなってしまうので、とりあえず少し買い出しでもしようかと島に2軒しかない商店に向かう。
流石に大手コンビニのような便利さは求められないが、パンなどの食料はあるし最低限必要な物は手に入る。ありがたい限りである。
必要な物も入手したし、さてどうしようかと考えたが…とりあえず、昨夜通った際に煌々と灯火の点いていた某施設に行ってみることにした。


…ところで。
どうやらカーナビさんによると、ここで右折すると東へと抜ける道らしいのだが…
カーナビの道

…右を見ると、こんなステキなススキ草原が広がっているのだが
実際の道


…。


……。


…OK、分かった。
渡嘉敷島の人からすれば、これぐらいは車で通過できる なんだ!(※違います)

見るからに「道があった痕跡」はあるので、元々は車が通れるレベルの未舗装道路があったものと思われるが、集落が近くにないためこの道を利用する人も少なく、次第に荒れて、今ではこうして藪に埋もれ自然に還ろうとしているのだろう。
だが、離島ゆえデータ修正もないままカーナビには残ってしまっているのだろう。
(…実際、帰ってから最新の地図で見てみたら、この道は既に消されていた。)


さて施設に辿り着き、自販機で飲み物を買ってそれを飲みながら少しフラフラする。
「青少年交流の家」とかいう所で、利用者でなくても通り抜け可能なので、まぁちょっと歩かせてもらうぐらい良いだろう。
昨夜通りがかった時にライトが点いていた所を見てみるが、蛾の死骸もない。
甲虫とかだと隙間に隠れてたりするよなー…なんて思いながら芝生と壁の境のあたりを何気なく見てみたところ…



「あっ!」

思わず声を上げて反射的に拾い上げると…




渡嘉敷島ケブカ♂
ケブカコフキじゃねーか!!!!Σ(゚Д゚;)

残念なことに既に死んでしまっているが、まぎれもないケブカコフキコガネである。
触ってみると関節もまだ柔らかく、かなり新鮮なように思える。

なんという事だ…

見つけてしまった。

…だが、ここは沖縄本島からの宿泊客も来る可能性が高いスポットであり、しかも見つけたのは死骸。
万々が一ではあるが、沖縄本島から来た人にくっついて島に来てしまった死骸(または生きて入り込んだ)という可能性も考えられなくはない。
これは是非とも追加個体を見つけて、この島に生息している確証を得たい。

俄然モチベーションが上がり、ヤル気が出てきた!
陽が落ちて暗くなるのを待ち、さっそく動き出す。

まずは施設付近のリュウキュウチク群落からチェックする。
ライトトラップにはケブカは飛来しておらず、懐中電灯を持って藪を歩いてみるが、羽音はない。既に発生ピークは完全に越えてしまっているので個体数は相当少ないだろうが、あの1頭はおそらくこの島に生息している個体だと思われるので、まだ活動している個体はいるというコトだ。
同じ「羽音も聴こえない状況」でも、昨夜とはモチベーションもだいぶ違う。

まずは灯火を狙ってみようかと、だいぶ離れた場所の灯火を見に行ってみることにした。
離れた…と言っても小さな島なので、車で30分かそこらで着いてしまう。駐車場に車を停めて近くの明かりを見ると、いきなりいた。
灯火に飛来した小型♂がアリに襲われている。
見た目にもかなりスレた個体なのは分かったが、貴重な個体なのでアリから横取りする。
「はいはいはい、ちょうだいね~。」
虫の全身にまとわりついたアリを吐息で吹き飛ばし、確保。まだ生きている。
夕方に死骸を拾った場所からここまで飛来してくるとは思えず、これで生息はほぼ確定だろう。
「よっしゃ!」

これで渡嘉敷島の初記録、ついでに生息確定と考えて良いだろう。

気を良くして近くの明かりも見ていくが、ヤモリが来ていたぐらいで追加の個体は見られなかった。
すぐ裏には丈の低いリュウキュウチクの藪があり、そこで発生した可能性が高そうだ。
「発生ピークだったらなぁ…」と呟いてみるが、状況は変わらない。
他のライトトラップに飛来した可能性もあるので巡回しに行ってみる。
カーナビに打ったポイントを頼りに順番に回っていくと、カンショコガネやガムシなど他の甲虫類がいくつか飛来している。昨夜はろくに飛来していなかったので、昨夜よりは多少好転していると思うことにしておくが、一通り巡回してもケブカコフキは来ていなかった。

生息が確認できたからには、可能なら♀も採りたいところではあるが…♂すらこれだけ少ない状況ではかなり厳しい。
とりあえず一巡したのでまた最初の場所に向かってみる。
仕掛けたライトトラップを確認しようと藪に踏み込もうとすると、足元を何か小さなモノが走った。

「ぅん…?」
トカゲ…いや、ヤモリ…?でもなんか見慣れない色だったような…?

気になって腰を屈めてみると、また走る。
だがすぐに止まったので姿を確認できた。
「トカゲモドキ!」
渡嘉敷トカゲモドキ幼体

南西諸島の一部の島に分布するヤモリに近い仲間だが、壁などに貼り付いているイメージのヤモリと違い、体を起こして地面を走り回ったりする。
日本にいる種はクロイワトカゲモドキといい、ここ渡嘉敷島にはその亜種であるマダラトカゲモドキが生息している。
一度は見てみたいと思っていた生き物のひとつで、興奮しながら撮影。捕まえて触ってみたくなるが、クロイワトカゲモドキは天然記念物に指定されているので、お持ち帰りは元より触るのもご法度…撮影だけで我慢しておく。

ケブカコフキも見つかり、素敵な生き物に会えて気分は軽い。
トラップ巡回2周目を回っていくと、今度は路上にヘビの姿。近付いてみると、なんとなくヤマカガシに近い雰囲気が…
ガラスヒバァだ。
渡嘉敷ガラスヒバァ
牙が小さいために咬まれた被害報告は無い(?)らしいが、けっこう強い毒を持った毒蛇である。穏やかな顔をしているが、万が一というコトもあるので不用意に手を出さない方が良い。
撮影だけしてまた走り出すと、今夜は生き物とよく出遭う。
タイワンクツワムシに、
渡嘉敷タイワンクツワムシ
リュウキュウアオヘビも。
渡嘉敷アオヘビ

途中、空が満天の星空なのに気付き、少し開けた辺りで車を停めて空を眺める。
久しぶりに見る天の川。
ケブカ探索で張りつめていた神経がスーッと緩んでいくのが分かる。

とうとう初記録出したなぁ…

渡嘉敷島でケブカを見つけたという興奮はだいぶ収まり、感慨がスーッと胸に染み込んでくる。
2010年辺りからずっとケブカコフキコガネを追い続けてきたが、♀の初記録は各所で出しつつも「完全な島初記録」は出したことがなかった。喜界島も初記録ではあるが、ネット上に採れた話が出ており、いるのは分かっていた。
まったく生息地からある程度距離があって、情報の無い島にチャレンジしたのは、伊平屋島が最初。でも見事に惨敗。続けて伊江島も行ってみたものの、またしても惨敗。やはり、これだけ大型の虫で初記録を出すのは簡単ではないと思い知らされた。
だが、懲りずに今年は渡嘉敷島に挑戦した。資金も日程も厳しい中で、無理してでも来て良かった。

静かな満天の星空を見上げてしばし穏やかな感慨に浸る。
さて、そろそろ探索を続きをしようかと車に戻ろうとしたが、その前にちょいと道脇の側溝を覗いたら、
渡嘉敷島トカゲモドキ成体
「トカゲモドキ!」

…なんと、本日2頭目のマダラトカゲモドキである。
しかも、先程の個体より遥かに大きい。こうして見ると、先程の個体はまだ幼体だったのだとよく分かる。
こちらは全体にゴツくて顔つきも鋭い。先程の個体は格好良い中にも幼さが残っていたように思う。

場所が場所だけに写真もいまいちシマらないが、触るワケにいかないので仕方ない。
そのすぐ近くにはコブナナフシもいた。
渡嘉敷コブナナフシ

今夜は本当に生き物が多い。
この調子でケブカコフキの追加個体も!…と意気込んだが、そこまで現実は甘くなく、深夜2時過ぎまで探索を続けたものの追加の個体はおろか死骸すら見つけることは出来なかった。

だが、これで生息は確認できた。
本島に戻るのは明後日の予定だから、もう一晩ある。だが、今年はもう完全に発生ピークを過ぎてしまっている。
明晩もう一頑張りするか、それとも記録は出せたのだから予定を早めて明日の船で本島に戻ってしまうか…
悩みつつ、今夜は眠ることにした。

沖縄ケブカコフキ探索2016~その2~

12月25日

朝9時に港に行って手続きを済ませ、フェリーに乗り込む。
出港までまだ1時間もあるので、窓際の席に座って一眠り。

やがて、腹の底に響くようなエンジンの振動が始まり、船が動き出す。
天気は穏やかで波もなく、ウトウトしているうちに早々と行く手に島が見えてくる。
慶良間諸島
今回の目的地を含む、慶良間諸島(けらましょとう)である。

今回の目的地である渡嘉敷島もこの慶良間諸島に含まれる島で、諸島の主島となっている。
この渡嘉敷島をはじめ慶良間諸島ではまだケブカコフキコガネの生息は確認されておらず、採集記録は全くない。
もし1♂でも採集することができれば、渡嘉敷島だけでなく慶良間諸島からの初記録として報告できるのである。

…ちなみに、慶良間諸島は沖縄本島とは地学的な成り立ちの異なる島々だそうで、フェリーで1時間強という近距離にありながらカブトムシやアマミノコギリクワガタなど『沖縄本島と久米島にいるのに慶良間諸島にはいない』という生き物が色々いたりする。

…と言うことはつまり、ケブカコフキもいない可能性がある のだが(汗)

実際、「渡嘉敷島にケブカを探しに行きたい」という話をしたら「慶良間にはいないんじゃない?」と言われたコトも何度かあった。
ただ、Googleのストリートビューで見るとリュウキュウチクは島のあちこちに確認できるので、環境だけで見るなら生息している可能性は十分にあるようにも思える。
沖縄のケブカコフキコガネはリュウキュウチクの群落が良い目安になるのでポイントを絞りやすく、今回の計画を立てるに当たっても事前にストリートビューでさんざんリュウキュウチク群落のある場所を調べまくり、地図に書きこんでおいた(笑)

さて1時間ちょっとの船旅を終えて無事に島に上陸し、まずは事前に目星を付けていた場所を回ってみる。
なるほど山の中を抜ける道沿いにはあちこちにリュウキュウチクが見られ、雰囲気は非常に良い。
良さそう場所に簡易式ライトを設置してはカーナビにポイントを打っていく。

…こういう時、カーナビは非常に便利だと思う。
林道などは似たような景色が多く、どの辺りにトラップを設置したか分からなくなってしまう事が多々ある。
しかし、カーナビで設置ポイントを登録しておけば場所が分かるのでチェックや回収の漏れもなくなる。
忘れっぽいクセに何個もトラップを入れたがる自分には、非常に便利なアイテムである。

ケブカコフキは♂の走光性(※虫などが光に向かってくる性質)が高く、生息ポイントにライトトラップを設置しておけば高確率で飛来する。
発生ピークを越えてしまった可能性が高いとは言え、8~9ヶ所にライトを設置して数日やれば、生息しているなら採れないハズはない…

……

…………

…はず、たぶん。

さして大きな島でもないので一通りの道を走って環境を確認し、オキナワカラスアゲハなんぞを採集しつつ、夜を待った。


やがて陽が落ち、周囲が闇に包まれる。
設置したライトトラップを確認しつつ望みのありそうな場所を探索していく。

風と葉擦れの音。
小さな虫は飛んでいる。
ライトに大きな黄色い物体が貼りついているので何かと思ったら派手な色彩の蛾だった。
キイロヒトリモドキ
九州より南に生息しているキイロヒトリモドキという蛾だそうで、大型だしナカナカ格好良いのだが、メンドクサイので採らない。
…いや、ケブカコフキがわんさか採れていたなら、「こいつも採っとくか」となったかもしれないが、目的の虫がまったく気配もない今の時点では、食指は動かなかった。

しかし多い。
ライトにも来ているし、走っていると車のヘッドライトにも何度も飛んでいるのが照らし出される。
「これが全部ケブカだったらいいのに…」とお約束の呟きを漏らしつつ、更に探索を続ける。

これぐらいの島なら一晩でポイントも一通り回れるし、ケブカが生息しているなら初日から見つかる可能性は高い。
昼間にチェックしたリュウキュウチクの群落のうち確率の高そうな場所から順に見ていく。
…だが、森の中は静まり、甲虫の大きな羽音は聴こえない。

リュウキュウチク群落に潜り込んでは耳をそばだてながら徘徊し、数十分探索しては別の群落に向かう…というのを繰り返す。
雰囲気は良く、今にも藪の向こうから眼をオレンジに光らせながら下手くそな飛び方でケブカコフキが現れそうなのに……


…来ない。


…結局、日付が変わるぐらいまで探索を続けたものの、ケブカコフキのケの字もないまま渡嘉敷島初日の探索は切り上げる事となった。

正直、この時点でかなり望みが薄いと感じた。
生息していない可能性もありうる、と。
ただ、沖縄が既にピークを過ぎてしまっていた事からも、「いないのではなく終わっちゃった」の可能性も考えられ、なんとも判断しづらい。
とりあえず、まだ初日なので明日以降に望みをつなぎ、今日は休むことにした。

沖縄ケブカコフキ探索2016~その1~

二年に一度の自主的クリスマスぼっち、ケブカコフキコガネ探索である。
前回の沖縄は伊平屋島・伊江島と2つの未記録島に挑戦したもののあえなく敗退、沖縄本島南部で♀を採集するという逆転打の採集となった。
さて今年はどうしようかというコトになり、金銭的にかなり厳しい状況ではあったが ケブカ採らないと死んじゃう病 に罹ってしまった自分としては、行かないワケにもいかなかった。
場所はと考え、実は以前から温めていた渡嘉敷島に行ってみることにした。
この島はケブカコフキの公式記録はおろか目撃例や噂もなく、まったく未知の島。
いるかいないか、行ってみなければ分からない。

当たれば初記録、外れたらボーズという究極の二択採集なのである。



12月24日

一番早い飛行機だと朝イチに自宅を出ても間に合わなかったため、8時25分発の飛行機にした。
羽田空港2016
一昨年の沖縄は行きがけからとんでもない事態※自業自得になっていたが、今回はそういったアクシデントもなく、普通に空港に着いて手続きを済ませ、時間になったので搭乗。
座席に着いてしばし外を眺めていると、やがて飛行機がゆっくりと動き出したのでそのまま窓に寄り掛かって目を瞑った。

…遠征の前日は大抵準備が終わらずバタバタして当日睡眠不足なコトが多く、道中の飛行機内は睡眠の足しに眠ることが多い。
今回もそのつもりで眠りに落ち、しばらく…
ふと目が覚めて、“今、どの辺飛んでるのかな…?”と窓の外を見ると、飛行機が地上にいる。
「あれ、もう着いちゃったのか。」
と時計を見ると、まだ離陸予定時刻から20分ぐらいしか経っていない。

をや?

少し寝惚けた頭で考え、ようやく「…ああ、まだ飛んでないのか」と思い当たる。
それを裏付けるように、機内アナウンスが「まだ離陸許可が出ておりません」と伝える。
以前に某方の採集記で読んだ、「朝の離着陸ラッシュ」らしい。

まぁ、初日はどうせ最終目的地までは行けないので、焦る必要はない。
…結局、朝のラッシュでフライトが30分以上遅れたものの、とりあえず無事に那覇空港に到着。
出来ればこのまま今回の目的地である渡嘉敷島まで行ってしまいたいのだが、残念ながらそれは出来ない。一日一便しかない渡嘉敷島行きのフェリーは、自分がまだ空の上にいる頃にもう港を出てしまっている。と言うか、自分が沖縄に着く頃には既に向こうの島に着いてしまっているだろう。…初日は本島に滞在せざるを得ない。

さて、じゃあ今夜は何処でやろうか。

渡嘉敷島行きのフェリーは那覇空港から程近い泊港から出るため、いつものヤンバルまで行くのはあまりに遠い。
思い出のうるま市ポイントぐらいなら行けないこともないが、とりあえず初日は手近な場所にしようと一昨年も採集した南部ポイント(→沖縄ケブカコフキ探索2014~その5~)にした。
明日のフェリーを電話で予約して、暗くなる頃合いにポイントへ。

ポイントの様子は一昨年と変わっておらず、これなら同じ感覚でイケるだろう。
南部のケブカ環境
まずは体を慣らし、ケブカ探索の勘を取り戻さなくては。

陽が落ちて周囲が真っ暗になり、やがて良い時間になる。
まずは懐中電灯を持ち、藪を照らしながら歩いてみる。♂が飛び始めればライトに反応するハズである。
ほどなく藪から1♂が飛び出してきたのを引っ捕らえ、それではと藪に潜り込む。
♂の羽音はしないが、まぁまだ始めたばかりだ。マクロ視点での濃い・薄いは実際やって探し当てるしかない…そう思いながら周囲を丹念に見ていくと、葉裏に付いた♀が見つかった。
開始5分。

をいをい、南部ケブカはこんな簡単じゃないだろう…

…と思ったら、後が続かない。
ヤンバル程ではないにしても、探索をしていれば♂はぼちぼちライトに飛来するハズなんだが、羽音ひとつ聴こえず、まったく気配がない。

これは…もしや…

30分ぐらい探してみるも羽音ひとつ聴こえず、仕方なく少し場所を変えてみる…
…が、そちらもいない。
事前情報からすると、発生初期というのは考えづらい。
発生初期でないのに個体数が少ない理由…
実は一昨年の南部探索が発生年の中でも大発生で、今回のこれぐらいがここでは普通、という可能性も考えられるのだが…

足下の悪い斜面をリュウキュウチクを掻き分けながらふと振り返ったら、そこに♀。
沖縄南部ケブカ♀2016
この時点で1♂2♀。

ケブカコフキ採集で♀の方が採れてるとか意味分からん。

だが、これは嫌な予感がどんどん確信に変わっていく…
そうこうしていたら、ようやく♂が飛来した。

既にピークを越えちゃった説、濃厚。

更にしばらく探索をしてもう1♂追加できたが、数時間探索して♂が3頭だけというのはあまりにも少な過ぎる。そのクセ♀が2頭も採れている。
今年は相当早くから発生が始まっていたとの情報も入り、ピーク過ぎ説がいよいよ濃厚になってきた。

それでも粘ればまだ1~2頭ぐらいは追加できたかもしれないが、既に一昨年採集したポイントであることだし、探索の本番は明日以降なので、体力温存のために初日は切り上げることにした。
沖縄ケブカ2016♂

…だが、もし渡嘉敷島でも既に発生ピークを越えて、既に終息に近くなってしまっていたら…
かなりキビシイ戦いになるかもしれない。
『悪魔の証明』なんてよく言われるのだが、

いる事を証明するには実物を連れてくれば良いが、いない事を証明するのは非常に困難なのである。

採れさえすれば「いました」と言えるのだが、採れないという結果であっても「生息してない」のか「既に終わっちゃった」のか「場所が違った」のか等々、理由が様々考えられるのだ。
とは言え、行く前からそんな事を考えていても仕方ない。
まずは明日以降の本番のため、と港の近くで眠りに就いた。
プロフィール

虫けら屋

Author:虫けら屋
もっぱら採集中心の虫屋さん。当初は東京で発生が確認されたが、後に埼玉県に移入、現在は千葉県での生息が確認されている。
肉眼で見て楽しめるぐらい大きなミーハー虫が好き。

Blog内の写真・文章等については、少しの引用的転用ぐらいならOK…と思っていたのですが、なんか最近フリー素材か何かと勘違いされているフシがあるので、今後は勝手に使わないでね。

※お問い合わせを頂く際はEメールにてお願い致します(採集ポイント等についてはお答えできかねますが…)。なお、採集遠征等により、お返事まで数日以上掛かる場合もございますので予めご了承下さい。
   ↓↓↓
akepon6464@yahoo.co.jp

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