久しぶりに原点回帰(?)で、標本の作り方。
きちんと書かなきゃな、と思いつつ保留になっていた「チョウの標本の作り方」です。
標本を作る際、クワガタのように主に脚の形を整えるのを
「展足(てんそく)」または「展脚(てんきゃく)」と言うのに対し、チョウなどのように主に翅(ハネ)の形を整えるのを
「展翅(てんし)」 と言います。
展翅には、展翅板と展翅テープという道具を使います(※道具詳細は
こちら)。

まず展翅作業を始めるための準備として、展翅テープを展翅板の中央溝に
ピッタリ沿うように上を針で留めます。

紙製のテープなどで弱い場合は、先を数回折り返して補強してあげると破れにくくなります。
これで準備完了。
まずは、チョウに
昆虫針を刺します。

針を刺すのは胸部の真ん中、また前から見ても横から見ても針がチョウの体に直角になるように刺します。
針を刺したチョウを展翅板に留めます(※展翅板の溝の底にはペフやコルクなど針が刺さる部分がありますので、そこに針をしっかり刺します)。

せっかくチョウに昆虫針をまっすぐに刺しましたので、展翅板にも斜めにならないように気を付けて刺します。
この状態からチョウの翅を整えていくワケですが、チョウやガの翅は鱗粉(りんぷん)という粉に覆われており、指で触ったりするとその粉が剥げ落ちてしまいます。
そこで、その損傷を極力少なくするため、展翅の際は細い針を引っ掛けて(刺さずに引っ掛ける)、ハネを押し上げて形を整えます。
昆虫の翅には、木の葉っぱのような脈があります。
虫の種類によってこの脈筋は色々異なるのですが、チョウやガの脈筋は、おおよそこんな感じに走っています。
(※下のサムネイル画像をクリックして頂くと、より大きな画像で見られますので翅脈が分かりやすいかと思います。)

そこで、この翅脈に
針を引っ掛け、ハネを押し上げます。
特に、前縁の緑色の点線を引いた翅脈は比較的太く強いので、ここに針を引っ掛けます。

クワガタ等と違い、チョウやガの翅は薄いため、力加減を間違えると簡単に破れてしまいます。
しかし加減を言葉で説明するのも難しく、いくつも標本を作って練習し、自身で加減を掴んでいくしかありません。
また、外側から引っ掛ける以外にも、内側から針を入れて展翅する方法もあります。
内外どちらが正解というものでもなく、個々人でやりやすい方を選択すれば良いかと思います。

…ちなみに、利き手と逆側の翅を展翅する場合は、無理に反対の手でやっても上手くいきませんので、展翅板を逆さまにして行うとやりやすいかと思います。

後翅も同じように持ち上げ、バランスを整えます。
後翅のバランスはチョウの種類や個体によっても異なるので一概に言えず、図鑑やネットの画像などを参考にされるのが良いかと思います。

触角も、出来るだけまっすぐになるようにして展翅テープの下に挟み込みます。
あとは、腹部が上がっている場合は針を十字にしてまっすぐになるように押さえ、下がっている場合はティッシュなどを丸めてお腹の下に入れて枕にし、まっすぐにしてやります。

この状態で1~2ヶ月ほど乾燥させれば筋肉が乾いて動かなくなりますので、押さえた針を抜いて展翅板からチョウをはずし、ラベルを付けて標本は完成です。
乾燥の際は、陽の当らない風通しの良い場所に保管しましょう。

乾燥やラベルについては、以下リンクも併せてご参照下さい。
ドライボックスデータラベルの書き方データラベルの作り方