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よくある標本の誤解のひとつ

先日(と言っても1か月ほど前)手に入れたモーレンカンプオオカブトの標本を展足しているところ……というのが、以下の写真なのですが、、、
モーレン展足01

「針がいっぱい刺さって、まるで剣山みたい。カワイソウ…」


ありがちな誤解です。

昆虫の標本というのは、確かに針を刺す場合が多いです。
「なぜ刺すのか?」という理由については過去(だいぶ前)に記事を書いているので詳しくはそちらに譲るとして(→記事リンク:昆虫針)、まぁ簡単に言ってしまえば「標本を壊さないよう、大切に扱うため」です。
…でもって、虫の体に刺す針は1本だけなのです。

モーレン展足02

写真をよく見て頂きたいのですが、右のハネに刺さっている針以外、他の針はすべて体の各部にピッタリと添えているだけで、刺さっていません。これらの針は実は押さえ針で、標本を乾燥させる間に足の形などがズレて狂ってしまわないようにするために留めています。
そして、乾燥が済んだら抜いてしまい、体に刺した1本の針だけを残します。

これ、昆虫標本の世界では常識なのですが、そうでない方には意外と知られていないポイントだったりします。
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虫を指すなら、「固体」ではなく「個体」です

昆虫関係でネットサーフィンをしていると、ちょいちょい言葉の誤用が目につきます。
そのひとつが、「個体」「固体」 と誤表記しているもの。

「つかまえた固体は~」とか、「あの時の固体が~」とか、そんな書き方をしているのをたまに見かけますが、この場合の正しい表記はにんべんの付く方の「個」個体です。

「固体」は液体や気体に対する言葉であり、虫やその他の 生き物1頭 を指していう言い方ではありません。
似た漢字なので、勘違い誤用以外にも単に慌てて誤変換に気付かずにそのまま使ってしまっている場合もあるとは思いますが、書いた側はともかく読んだ側は意外とそこで気になって引っ掛かってしまったりします。

…別に揚げ足を取りたいワケではないのですが、他にもWeb上でいくつか昆虫や生き物関係で目につく誤表記・誤用がありますので、Blogのネタに困った時に 気が向いた時に時々取り上げていこうかな、と。





…恒例の記事と関係ない写真は、昨年秋にススキにとまっていたオオカマキリ。
ススキとオオカマキリ
日本産のカマキリ類は、そこまでがっつりな擬態ではないように思えるが、こうしてススキなんかにとまっていると、ナカナカどうして立派なカムフラージュになっているなぁ、と思った次第。

サンカンムシ

先日のホシカムシの記事にちらっと出てきましたが、甲虫屋の専門用語(…というかスラング)に 「サンカンムシ」 という言葉があります。
甲虫に詳しい虫屋さんと一緒に採集をしていたりして、「こいつはサンカンムシだな…」と言った時には要注意。
鵜呑みにして「ほうほう、これはサンカンムシという名前の虫なのか」と思い込んではいけません。
決して、サンカンムシという名前の虫がいるワケではないのです。


先にご紹介した「原色日本甲虫図鑑」は全4巻になっており、1巻は概説、2巻はオサムシ・クワガタ・コガネムシ・ハネカクシなどの仲間、4巻はカミキリムシ・ハムシ・ゾウムシなどの仲間を掲載しており、他のマイナー甲虫の多くは第3巻に掲載されています。

…。

他のマイナー甲虫の多くは第3巻に掲載されています。

……。

…………。


…気付かれましたか?



…そう、実は「サンカンムシ」というのは、
『原色日本甲虫図鑑の3巻に載っているようなマイナー甲虫』
のこと。

サンカンムシという種類の虫ではなく、「3巻虫」 なのです。

「をいっ!」 と思わずツッコミを入れたくなりますが、虫屋の思考回路というのは時として非常に単純。
私も、初めて「サンカンムシ」という言葉を知った時には笑ってしまいました。



…ただし、タマムシ・コメツキムシ・テントウムシなんも同じ第3巻に掲載されているので、3巻に載っている虫が全てマイナーなワケでもないのですが。
タマムシの飛翔

採集記録を付けよう

「昆虫採集」というのは個人の趣味であると同時に、たとえ子供が作った標本であってもきちんとしたデータラベルが付いていれば学術資料として扱うことができる。虫を殺して刺して並べて悦に入るだけの趣味だと勘違いしている方も時折いるようだが、そうではない。きちんと管理された標本が、後々貴重なデータとして活きてくる事もある。
そういう意味では、専門家でなくても学問の一端に触れ、関わることができる貴重な分野でもある。
ハナムグリ箱
※「ハナムグリ箱」…この中に、10種類以上の日本産ハナムグリ(カナブンの仲間)が入っている。

自分が採集し標本にした昆虫たちを、よりきちんと扱いたい、残しておきたいと思うなら、まず採集記録を付けよう。
標本そのものに付けるデータラベルについては以前に記事にした(→記事)が、それだけではなく、採集に行った時ごとの「採集記録データ」を付けておこうということ。

昔ながらの採集手帳(フィールド手帳)を持ち歩く人も多く、採集したその日の夜にデータを記入する。
…私自身は実は手帳までは持っていないのだが、採集から帰るとすぐにパソコンで Excel にデータを入れるようにしているし、遠征で泊りがけの時は携帯などにデータをメモしておき、帰宅後に入力するようにしている。

最低限書いておく内容として、

・日付
・場所
・採った種類と数


…あたりは付けておきたい。
これを必ず付けておくようにすると、「去年の今頃は何採ったっけ?」とか「あの虫また採りに行きたいけど、いつ頃だったっけ?」など後から調べるのが容易になる。
標本にラベルを付けていれば、虫からデータを引き出すことはできるが、時期から虫を調べるというのは標本からでは難しい。
また、そうやってデータが何年も蓄積していくと、同じ虫でも「去年は早くからいた」「今年は出てくるのが遅い」など、発生の変動が見えてきたりもする。
ハナムグリ箱-2
「日付」は、ラベルを作る時と同じく西暦4桁から必ず記入し、和暦(昭和とか平成とか)は使わないようにする。
どうしても和暦を入れたい時は、別途に必ず西暦も書いておこう。

「場所」は、都道府県・区市町村・大字や字を入力し、○○公園や××山など詳細地名があればそれも書いておくとより良いだろう。離島なら島の名前も入れておこう。
また、より詳しいデータとしてGPSで緯度経度を拾って入力する人もいる。「何もそこまで…」と思うかもしれないが、市町村などは合併して名前が変わってしまうこともあり、絶対に変わらない緯度経度というのは最も確実なデータだったりする。

「採った種と数」も、あとから調べる場合に非常に重要なので、分かる限り書いておく。一見すると「数」は書かなくても良さそうにも思えるが、何度も行くようなポイントだと、「いつ頃に最も多く見られたか」などのデータにもなるので可能なら書いておきたい。

また、これらの他に「標高」「当日の天気」「当日の気温」等のより詳しいデータがあると、更に良い。
他にも「気が付いたこと」なども備考として書いておくと、後から役に立つこともある。
特定の植物から採集した虫がいるなら植物種も書いておくのも良いし、ベイトトラップや灯火など採集した方法を書いておくのも良い。
後々どんな情報が役に立つか分からないので、データはより詳しく書いておく方が吉。

また、自宅にパソコンがあるなら、ぜひとも Excel にもデータを入れておこう。
記事中にも触れたが、Excel は順序を並べ替える機能があるので、画像のように日付順に入力しておいても、例えば「都道府県別」とか、「年は関係なしに同じ日付でデータを集める」とかいうことも出来る。
そのため、紙の手帳よりデータを調べやすい事も多い(もちろん、一長一短あるけど)。
また、Excelデータにしておくことで持ち運びもしやすくなり、必要に応じてコピーして移したりということも可能になる。

ちなみに、私の Excel 入力の仕方はこんな感じ。※クリックすると大きな画像が出ます。
採集データ
…ただ、これは見本ではなくあくまで一例なので、ぜひとも自分なりに改良して頂きたい。

更に上級になると、標本1頭ずつに番号を付けて、それを1つずつ Excel データに入れて管理する。
そうすることでデータはより一層利用しやすくなりベストなのであるが、恥ずかしながら私自身もそこまではやっていない。
標本の数がそれなりに多いので、番号とデータを付けようにも膨大でヤル気が起きず、そうするうちに更に標本は増えていき…という悪循環…(^^;


標本を残すだけでなく、それをデータ化しておくことは自分の採集に役立つだけでなく、後世に残すことでまた別の人の役に立つ可能性もある。
自分が死んだ後も、集めた虫や記した情報が後世に残り記録として扱われていく。
昆虫という分野はそうした膨大な記録が蓄積し、今の図鑑や研究の元にもなっていたりする。
記録は貴重かどうかだけでなく、小さなものでも蓄積していくことがとても大切である。
「自分程度の記録なんて…」と思わず、たとえ自宅の前で拾ったアオドウガネでも、できるなら標本にして記録を付けておきたい。

離島遠征に行ってみよう(2)

※本記事は前回記事の続きです。
最初から読みたい方は、以下リンクからどうぞ。
 ↓↓↓

離島遠征に行ってみよう(その1)


…さて、行きたい島・行く時期・狙う虫が決まったら、いよいよ具体的な予約へと計画を進める。
ナガサキアゲハ(2)
1~数泊ぐらいなら、まずはJTBなどのパックツアーのパンフレットをかき集めよう。
大きめの駅なら旅行パンフを置いてある場所も多く、他にもデパートなどでもツアー会社のテナントが入っていることが多いので、機会があればついでに見てみよう。

パックツアーは飛行機・宿がセットになっており、レンタカーも一緒に付いているコトが多い。
一度の予約で全部を押さえられる上、割引が掛かるのでお得なのである。
…ただ、ひとつ注意しておきたいのは、パンフレットを見て「フリープラン」のものを選ぶということ。
中には観光地を巡る旅行行程をガッチリ決められてしまっているようなツアーもあるので、採集目的で行く場合には間違ってそういうのを予約しないように気を付けたい。
宿(ホテル)は複数から選べるが、それぞれ価格が異なるコトもある。
値段とも相談しながら、メイン採集ポイントに決めた場所に近いホテルを選ぼう。

食事は朝夕ついてくる事が多いが、選べるなら夕食は外してもいい。
その場合、夕飯は外食するなり商店で調達するなりする事になるが、特に夜間採集をやる場合、宿の夕食の時間がネックになることもあるので、考えてから決めよう。

レンタカープランが付いていれば、免許を持っているなら利用した方がいい。別々に予約するより割引が利いて安くなる。

予約の方法はパンフレットに詳しく書かれているので、それを読んだまま実行すればいい。
要するに、パックツアーを利用する場合は「ホテルは選択肢の中から立地で選ぶ」「夕食をどうするか」をメインに決めることになる。

徳之島ケブカ♂-2

さて一方、幸運にも1週間以上の長期で日程を取れる場合は、ツアープランを利用する他に「自分で全て手配する」という選択肢も出てくる。
パックツアーを予約するのと違って、飛行機、宿、レンタカー、とそれぞれ手配しなければいけないので面倒ではあるが、宿の選択肢も広がり、立地やランクなどより自分の都合に合わせた宿を選ぶことができる。
民宿などはホテルより安いことも多いし、素泊まりで1泊2,000円なんて安宿が見つかることもある。
「キレイじゃなくても寝泊りできれば十分」というなら、こういう安宿を利用する手もある。
宿を探す際は、普通に「奄美 宿泊」などのキーワードで検索する他、「奄美 民宿」などより限定的なキーワードで調べると絞り込んで調べられるし、そういうのをまとめたサイトなんかもHitするので活用できる。
また、学生の頃なんかは仲間でテント担いでキャンプ場泊まりして宿泊費を浮かす、という人もいた。

レンタカーは、そこそこの島なら複数社があることが多く、値段やその他の条件を比較して決めよう。
狭い道を走ったりする虫屋は、保険加入は必須。「事故ったりしないからダイジョブだよ」なんて入らなかったりすると、枝や小石でついた傷で修理費を取られてイタい目に遭う可能性もあるので、必ず加入しよう。
…かくいう私は、2013年に奄美大島で自走不能に陥り、この保険のおかげで免責50,000円のみで済んだ(保険に入っていなければ多分数十万円取られてた…)という経験(→奄美大島採集記2013秋~その4~)があるので、保険加入は絶対にしておいた方がいい。

航空券の手配は、航空会社のホームページから行える。
…ちなみに、別に会員になっていなくても誰でも予約できる
恥ずかしながら私は、当初はマイレージなりJAL会員なりになっていないとホームページから予約できないと思っていた(^^;)のだが、決してそんなことはなく、会員特典が付かないだけで予約購入は誰でも出来る。
支払いも、別にクレジットカード必須ではなく、コンビニ支払いなども選択できる。

プロペラ

JAL・ANAの二大航空会社のほか、最近ではスカイマークや、バニラエアやピーチなどの格安航空会社も出てきているので、目的地に合わせて選ぼう。私自身はまだ格安航空会社は利用したことはないのだが、前3社に比べて遅延はしやすいようなので、安い分の覚悟はしておこう。

基本的にホームページで「出発地」「目的地」「日時」を入れればその日に飛ぶ便が表示される。
時期や時間によって値段が違うので、日程や懐具合に合わせて選ぶ。
早朝や夜間の便は安く、良い時間帯の便は高めに設定されていることが多いが、島によっては1日1便しか飛んでいないこともある。
私の場合、選択肢があるなら可能な限り早朝の便を選ぶことが多い。
早起きしなくていけないが、その分早い時間に現地に着けるので初日から採集に時間を使える。
…ただし、あまり早い時間にしてしまうと始発電車で空港に向かっても間に合わなかったりすることもあるので、チェックイン等も含めて1時間ぐらいは余裕を見ておいた方が良いだろう。
通常は航空券の購入は2ヶ月前ぐらいからだったと思うが、最近は超早割など何ヶ月も前から予約できる割引サービスもある。
予定が早いうちから確定できたなら、そういうのを利用するのも手である。

アママル♂-1

航空券・宿・レンタカーの3つを予約して、支払いが済んだら、このテの準備は完了。
あとは当日まで、現地情報を集めたり、虫の情報を集めたり、具体的な行動について計画を練ろう。


…そうそう、当日、空港には離陸時刻の1時間前には着いておくようにしたい。
飛行機は電車と違い、空港に着いたらチケットを見せてそのまま乗れるワケではない。
チェックインカウンターで大きな荷物を預ける手荷物検査搭乗口へ…という手順があるため、搭乗まで時間が掛かる。
行く途中で電車が遅れたり、時間帯によっては空港の手荷物検査場が激混雑していてハラハラさせられるコトもあるし、ギリギリに着いたりするともうチェックインを締め切られてしまうこともある。
運良く間に合って乗れたとしても、そのせいで離陸時刻が遅れたりすると大変な迷惑になる。
時間には余裕を持って行くようにしたい。
可能なら1時間半前到着が理想だが、せめて1時間前には着いていたいところだ。
プロフィール

虫けら屋

Author:虫けら屋
夏を中心に東京農業大学の「食と農の博物館」や公立図書館で標本教室を行い、毎年大好評を頂いています。また、科学館の昆虫展の教育展示標本を手掛けたりもしています。
趣味面でも年齢=昆虫歴というぐらいの虫好きで、好きが高じて農大で昆虫学を学び、きちんと基礎を踏まえた上で教室もやっております。

なお、Blog内の写真・文章等については、少しの引用的転用ぐらいなら構わないのですが、決してフリー素材として置いているワケではありませんので、勝手な使用はご遠慮ください。

※お問い合わせを頂く際はEメールにてお願い致します(採集ポイント等についてはお答えできかねますが…)。なお、採集遠征等により、お返事まで数日以上掛かる場合もございますので予めご了承下さい。
   ↓↓↓
lucanidae@hotmail.com

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