沖縄島採集記2011秋 10月20日

過去、ヤエヤママルバネクワガタ(石垣島)とアマミマルバネクワガタ(奄美大島)は採集した。となると、あと種としてはオキナワマルバネクワガタだけだ。
通称「オキマル」ことオキナワマルバネクワガタは、沖縄本島北部のやんばる地域に生息し、採集方法は「木採り」と「流し」の2パターンが知られる。しかし、森に入るのは毒蛇ハブの恐怖があるため採集に行く人の大多数は「流し」だろう。
「流し」は、発生後期になると発生木を離れて歩き始めるオキマルを狙って、やんばるの林道をひたすら車でゆっくりと走って探すという方法。
今回、自分もその方法でオキマルを狙おうと、10月20~28日まで8泊9日で沖縄に行ってきた。


10月20日。
早朝、空港はまだ目覚めたばかりで、どうやら自分が乗る飛行機はANA全便中で本日最初に飛ぶ便らしい。

飛行機時刻表

…JALが“あんなコト”になる前は、遠征の際はいつも安チケット屋を通して購入していたのだが、株主優待が無くなり安チケット屋を使う意味がなくなってしまったため、今回はANAのホームページから直接チケットを申し込んだ。

9時前には那覇空港に到着し、早々にレンタカー屋で手続きをして北部へ向かう。
昨年(2010年)冬に別の虫を狙いに沖縄に来ているが、この時期にガチの採集で来るのは初めて。
当然オキマル採集も初めてでまだ勝手も分からないので、バナナトラップを仕掛けつつ、まず下見がてら他の虫を軽く採集しながら流してみるが、キオビエダシャクが見つかったぐらいで、他に目ぼしい虫は無し。

ちなみに、キオビエダシャクは黒に近い濃紺の翅にオレンジのラインが入り、襟周りに青い金属光沢をもつ美しい蛾だ。
…そう、これだけ美しいが、これでも立派な「蛾」である。
だが、ヘタな蝶よりよほど美しい。

キオビエダシャク

…そうして夜、初のオキマル採集でテンションは高い。
国道・県道・林道を時速20~30kmでゆっくりと走り、路上の黒い虫を探す。
他にも数台、同じような感じの走り方をしている車がいる。
あえて遅めの時期を選んだが、まぁ同業者ゼロとはいかないか。
目を見開いて路面を睨みながら、ゆっくりゆっくり車を走らせる。

流し(1)

シリケンイモリ、バッタ、松ぼっくり、枯れ葉…
どれもこれも怪しく見え、その度にブレーキを踏んで確かめるのだが、空振りの繰り返し。
目が痛くなってくるが、こうやって探すしかないので無心で続ける。

他の採集者は採れているんだろうか?…なんて思いが頭をよぎる。

某ダム灯火をチェックがてら小休憩。
何か面白い虫でもいれば…と思っていたら、バシッと音がして、振り返ると黄色い塊が芝生の上で暴れている。

蛾のようだが、けっこう大きいし、しかも黄色い…?

「ハグルマか!?」
慌てて確認してみると、思った通りハグルマヤママユである。
日本では南西諸島にしかいないヤママユガの仲間で、黄色い翅に歯車のようなもようがあり、ピンク色の眼状紋があるという特異な蛾だ。

ハグルマヤママユ

以前にマレーシアで採集したが、日本では初めて。
だいぶスレてしまっているが、初晩から嬉しい収穫だ。

更に、仕掛けたばかりのバナナトラップに早くもオキナワヒラタの♀が来ていて、今回初クワガタ。
オキナワコクワかと思うぐらい地小さな個体ではあったが、沖縄亜種は未採集だったこともあり、十分に嬉しい。

オキナワヒラタ♀

…しかし、その後しばし採集を続けるも結局本命のオキマルは現れず、睡魔に勝てなくなって3時間程仮眠をとる。
オキマルは夜間が中心だが、朝方に拾われることもあり、明け始めた空を気にしながら走っていると、道の前方を鳥が横切った。
黒い体に赤い嘴、目の部分に白い線………ヤンバルクイナ!!

超が付くぐらい有名な沖縄県の天然記念物。
奄美のアマミノクロウサギ、沖縄島のヤンバルクイナ、西表島のイリオモテヤマネコは個人的に南西諸島の有名天然記念物TOP3だと思っているが、その一角が見られるとは…!
(…ちなみに、アマミノクロウサギは奄美大島で嫌ってほど見ている)

…と、そんな所で初晩は終了。本命のマルバネさんは現れず。
まぁ、初日の晩からそうそう上手くはいかないか。






※採集記目次はこちら→沖縄島採集記2011秋[目次]
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沖縄島採集記2011秋~目次~

沖縄島採集記2011秋 [目次]

沖縄島採集記2011秋 10月20日
沖縄島採集記2011秋 10月21日
沖縄島採集記2011秋 10月22日~23日
沖縄島採集記2011秋 10月24日~25日
沖縄島採集記2011秋 10月26日~27日
沖縄島採集記2011秋 10月27日~28日

2011年秋にオキナワマルバネクワガタの採集に行った採集記です。
この年は最悪のハズレ年。あまりの採れなさを一緒に味わって下さい(笑)

帰ってきました

沖縄の海2011

帰ってきました。
近日中に報告をUPしたいと思いますが、とりあえず明日・明後日は出身校の収穫祭。
明日は厚木キャンパス、明後日は世田谷キャンパスの方に行ってきます。

データラベルの作り方

さて、データラベルの書き方の次は、作り方です。
(データラベルの書き方については、前回の記事をご覧下さい。→データラベルの書き方
前にお伝えしたとおり、標本というのは数百年以上保存可能ですので、ラベルもそれに見合った保存性が必要になります。

手書きの場合
標本の数が少ない場合は、手書きしてしまった方が早いです。
その場合は、他の方も読み取れるよう、字は丁寧に書きましょう。
本人以外読み取れないような字では、ラベルの意味をなしません(笑)

筆記具は、鉛筆(シャープペンシル)・ロットリングペン・インク(昔からのペン用インク)のどれかを使いましょう。
ボールペン使っている方が意外と多いのですが、実はボールペンはアウトです。
…と言うのも、ボールペンは字が消えなくて良いと思われがちですが、実はボールペンのインクは紫外線に非常に弱く、数十年もすると色が消えてしまう事が多いのです。
そうなると、「久しぶりに昔の標本でも見るか」と思ったらラベルが真っ白に…なんて事が起こりかねないのです。
鉛筆は炭素なので消しゴムで消さない限り何百年でも消えませんし、ロットリングペンや昔ながらのペン用インクは色が消えない上に紙に染み込むので消しゴムでも消えず、一番適しています。


印刷の場合
印刷の場合はまず作製ソフトを考えますが、これは自分が使いやすいソフトで構いません。
私の場合は「Excel」を使用していますが、「Word」で作る人もいますし、PCの扱いに慣れているなら「Access(アクセス)」を使うとデータ管理も同時にできるので便利です。
一度にたくさんのラベルを作る場合、PCソフトを使えば複製なども簡単にできるので非常に便利ですし、保存しておけば必要時にまた印刷する事もできます。
ラベルは「縦1cm × 横1.5cm」程度を目安に作りますので、通常のままの設定では字が大き過ぎます。
フォント設定で字を小さくするか、もしくは印刷設定で35%~40%程度に縮小して印刷します。

ちなみに私の場合、1回きりの採集地であれば日付も全て入力した上で印刷する事が多いですが、季節や年を変えて何度も訪れるような場所の場合、日付のみ空欄のラベルを大量作製して、日付部分のみ鉛筆で書き込む事が多いです。

ラベル(1)日付入
ラベル(2)日付なし

次に印刷するプリンターですが、通常のインクジェットは残念ながら不向きです。
これは経年変化で色が消えてしまうためと、水に弱いためです。
色が消えるという点については近年かなり改善されてきているようですが、水に弱いのは変わっておらず、誤って水一滴溢してしまうと全ての字が滲んで消えてしまいます。

そのため今までは「レーザープリンター」が最適と言われていましたが、近年は「顔料インクのプリンター」が一番良いと言われています
顔料インクは水にも強く、また色も消えません。
私自身、黒のみ顔料インク(カラーはインクジェット)のプリンターを使用しています。


手書きにしろ印刷にしろ、使う紙は中性紙なら何でも良い(※酸性紙は数十年でボロボロになるのでダメです!)のですが、無地の名刺紙や葉書紙など多少厚みのある紙を使う場合が多いです。
また、ラベルに使う紙は必ず「白」いものにして下さい。
赤や青のラベルは新種記載などに関わる特別な標本に使われるため、混乱を避けるためラベルの紙は白を使います。


出来上がったラベルは、虫と一緒に同じ標本針に刺しておきます
ラベルの高さは、「平均台」を使うと美しく揃えることができます(→平均台
「別にして虫の横に付けた方が見やすい」という場合もありますが、標本というのは移動する事も多く、ラベルが別になっていると移動の度にデータ混乱の危険も出てくるため、必ず一緒に刺すようにして下さい。
どうしても大きい字のデータラベルを別に付けたい場合は、標本自体にもデータラベルを付けた上で、別途に大きめのラベルを作って付けておくようにしましょう。

また、同所で複数の虫を採集した場合、代表で1枚付けるのではなく、必ず全ての個体に1枚ずつラベルを付けます
これは、「ラベルを付けた代表の1頭」が何処かに移動された場合、他の虫が全てデータ不明になってしまう危険があるためです。


…今回は2回続けて小難しい話になってしまいましたが、標本というのは個人の思い出というだけでなく、時に重要な学術資料にもなり得るため、ある程度きちんと作っておく必要があるのだという事を心の片隅にでも留めておいて頂ければ幸いです。

まぁ、そもそもに「標本」とは、動植物や鉱物などで研究用または教育用に保存されるものを指します。
本体そのものだけでなく、それが「いつ」「どこで」採れたものなのかが分かれば、標本から新発見があった際にその場所を再度調査する事もできますし、地域で標本を分けたら地域による形態差(形の違い)など何か新たな事が分かるかもしれません。
同じ場所の標本を日付で分けていったら、長い年月の間に昆虫相や植物相が変化していった事が分かってくるかもしれません。
つまり、標本という資料はデータが多ければ多いほど有用になり、またそのデータが誰でも読み取れる状態である事が大切になります。
そのためにも、分かりやすいラベルを付ける事が重要になるのです。

…ま~それに、きちんと基本に則って作られたラベルが付いていると、標本も格好良く見えますし(笑)

データラベルの書き方

標本を作る際、「いつ・どこで・誰が採集したか」を明記するデータラベルというのは非常に重要です。
学術的な面から見れば、展足の出来などより、このデータラベルがきちんと付いている事の方が遥かに重要です。

「クワガタの標本の作り方 ~基礎編~」でも少し紹介しましたが、「ラベルというのは標本の履歴書」です。
(→クワガタ標本の作り方~基礎編~
つまり、他人にも分かるように書く必要があり、また「後世に残るように」書き、作る必要があります。

さて実際の「書き方」ですが、基本情報として書くことは3つ「いつ」「どこで」「誰が」採集したか、です。
例えば「2006年8月16日に、奄美大島の湯湾岳で採集した虫」のラベルを作ることを考えてみましょう。

(例)鹿児島県(奄美大島)
   宇検村 湯湾
   湯湾岳
   2006年8月16日
   井上 三太郎 採集

採集地名については、必ず都道府県から書きます。
これは、奄美をよく知らない人から見れば宇検村が何処かすぐに分からないためと、市町村合併で市や町自体が名前が変わってしまう場合もあるため、後から他の人が見た場合でも分かりやすいように都道府県名から書くようにします。
また、場所が離島である場合は、島の名前も( )などで入れておくと、より分かりやすいです。
山や川、公園、キャンプ場など特定の名前が付いていれば、そこまで書くとより詳細地点を特定できるようになります。

採集年は必ず西暦4桁で書きます。
和歴では年号が変わると非常に分かりにくくなるのと、標本というのはきちんと保管すれば数百年からそれ以上の長期間に渡り保存できる物ですので、100年後、200年後に年が分からなくならないよう、西暦4桁で書きます。

採集者名については、自分や知人が採集した虫ならできるだけ記入しておきます。
ただし、購入した標本(特に海外から輸入したもの)などは採集者が不明な場合が多く、そういう場合は採集者は空欄にします。
分からないからと言って自分の名前を書いたりすると、「自分が採集した」という意味になってしまいますので、気を付けましょう。

これが基本となる情報ですが、人によってはこの他に「当日の天候や気温」「採集方法
(ライトトラップ、など)」「採集地点の緯度・経度(GPS計測)や標高」などを記入する場合もあります。


ところで、日本語の書き方で通じるのは当然日本国内だけです。
海外の方から見たら全く読めない言葉で書かれたラベルは、判読に非常に手間と時間が掛かります。
そこで、もし海外の方と標本の売買・交換を行ったりする可能性が場合は、ラベルも英語で書いた方が親切です。
上記と同じ場所で採った虫のラベルを、今度は英語表記してみましょう。

(例)JAPAN:Kagoshima-ken
   Amami-oshima Is.
   Uken-son, Yuwan
   Mt. Yuwan-dake
   16.Ⅷ.2006
   Santarou Inoue leg.

まず、英語表記をする場合、真っ先に国名を書きます。
国名は全て大文字で書き、その後に「:(コロン)」を付けます。
次に都道府県ですが、「都・道・府・県=Pref.(Pref.=prefectureの略)」(例:Kagoshima-Pref.)と表記しても良いのですが、必ずしも「prefecture」の指す「県」が日本・フランス・イタリア等で同じ自治単位とは限らないため、近年は「Kagoshima-ken」「Tokyo-to」などそのまま都道府県読みで表記する場合が増えてきています。
市町村についても、「city」や「town」でも良いのですが、都道府県と同じ理由から「-shi」「-machi(または -cho)」と書く場合が増えています。
また、県・市・字(あざ)などを一行に続けて書く場合は、間を「,(カンマ)」で区切ります。

採集地が離島なら島の名前も書きます。
その際、例えば「奄美大島」を「Amami Is.」と書いても間違いではないのですが、「奄美大島」という言葉でひとつの固有名詞となっているので、「Amami-oshima Is.」と表記する方が親切でしょうね(Is.=Islandの略)。
また、山なども「Mt. Yuwan」でも良いのですが、同じ理由で「Mt. Yuwan-dake」と書いた方が親切です。
仮に「槍ヶ岳」で採集した場合、「Mt. Yari」と書いてあるのと、「Mt. Yari-ga-take」と書いてあるのと、どちらが分かりやすいでしょうか?

…それと、英語ラベルは詳細地名から逆順に書く場合もあります
どちらでも間違いではないのですが、近年はどちらかというと国名から順に書く場合が多いようです。

採集年月日は並び順が変化します。
日本語表記の場合は「年→月→日」の順に並びますが、英語表記では「日→月→年」の順になります。
また、「月」はローマ数字で表記するのが一般的ですが、英語の月名を略称で書く場合もあります。

採集者名も苗字と名前が逆になり、後ろに「採集」を表す「leg.」を付けます。
標本好きの会話の中で「○○さんレグ」なんて言葉が出てきますが、これは「○○さん採集の個体」という意味になります。
日本語ラベルでも、「採集」と書くと面倒なため「leg.」と表記する場合も多いです。



なお、データラベルに昆虫の種名も一緒に書く場合がありますが、できれば種名は別のラベルにした方が良いです。
と言うのも、生物というのは分類が進むと「1種と思われていたものが実は2種いた」とか、「別種だと思われていたのが実は同種だった」などにより名前が変わる場合があるからです。
例えば、キリギリスという有名なバッタの仲間がいます(いました)が、実はこれは1種ではなく2種が混じっていた事が分かり、「ニシキリギリス」「ヒガシキリギリス」という2つの名前に分かれました。
つまり、今日本に、ただの「キリギリス」という名前の昆虫はいないのです。
そうなると、データラベルに一緒に種名「キリギリス」と書いていた場合、データラベルごと作り直さなくてはならなくなり、その際に写し間違い等が起きる可能性も出てきます。
また、種名が変わる場合だけでなく、個人的な同定間違いや種名の書き間違いなども起こり得ます。

つまり、種名というのは後になって書き直す可能性が十分に考えられるため、種名ラベルはデータラベルとは別にした方が良いのです。
(そして、種名というのは標本があれば後日他の人でも調べられますが、採集データというのはラベルを作っておかなければ当人以外分かりません。“種名を調べるまでラベルは保留して…”なんてやっていて、データが分からなくなったりしたら、それこそ最悪ですし。)


…さて、長くなりましたので、“ラベルの作り方”は次の記事に続きます。
(→データラベルの作り方

ちょっと出掛けてきます

本日より、ちょっと現実逃避に 採集に行ってきますので、しばらくコメント等にお返事等ができなくなります。
記事は2件ほど投稿予約にしてありますが、数日おきのUPになりますので、のんびりまったりとお楽しみ下さい。
(…実はこの報告も予約投稿で、これがUPされる頃に現地到着の予定)

帰ってきたら、成果報告か採集記を書きたいと思いますので、期待せずにお待ち頂ければ幸いです。
それでは~

ウェストポーチ

ウェストポーチ

常用の採集用品ではなく、シーン限定ながら結構便利なのがコレ、ウェストポーチです。
それも、普通の物ではなく、カメラ用品用のウエストポーチ。

昆虫採集にウェストポーチを採集に使用している人はたまにいますが、その多くは普通のもので、カメラ用の物を使っている人はごく少数です。
しかし、実はこのカメラ用というのが非常に便利なのです。

一般の物との一番の違いは、型崩れしないという点です。
通常の物は生地が柔らかく簡単に型崩れしてしまうのですが、カメラ用の物はかなりしっかりしており、潰れにくく、また潰して歪ませても元に戻ります。
更に、底が平らになっており、中にマジックテープ式の仕切りもあります。
そのため、採集で激しく歩き回っても木に登っても、入れた中身がゴチャゴチャにならないのです。
自分はPPサンプル管No.7(また今度紹介します)を12本と、GPS、予備の酢酸エチル(栄養ドリンクの瓶)を入れて使用しています。

ガッツリ行く前の軽い様子見の時や、木登り・斜面登りなどで両手を空けておきたい時には非常に便利で、必要になったらチャックを開ければ中は整理された状態のままなので必要な道具も取り出しやすいのです。

自分は、マルバネクワガタ採集の際などにも愛用しています(タコ採れには縁遠いので…)。
巨木を求めて藪漕ぎをしたりするので腰の横に何かを付けるのは引っ掛かって邪魔になりますし、かと言っていちいちザックから容器等を取り出すのも面倒…。
しかし、ウェストポーチであれば前や後ろに着けておけるので邪魔にもなりにくく、しかも腰なので必要になった時にはすぐに取り出せるのです。

ヨドバシカメラ(カメラ館)など、大型のカメラ専門店に行くといくつかの種類が置いてありますので、近くに行かれた際はお店を覗いてみてはいかがでしょうか?
ちょこちょこと採集に行かれる場合は、持っておくと意外と便利です。
オススメ。

ビーズ細工

ビーズ1

虫けら屋は東京農業大学出身ですが、短大(環境緑地学科)→4年制(農学部農学科)と編入で進んでいます。
その短大の頃の話。

収穫祭(他大でいう文化祭ですね)が近付くと、通称「虫研(むしけん)」こと植物保護学研究室(現・緑地生態学研究室)は大忙しになります。
当時は11月1~3日というのがお決まりだったのですが、そこで毎年出店して、低温管理で遅期羽化させたスズムシと、手作りのビーズ細工を販売していたのです。
そのため秋はビーズ作りの追い込み時期で、室員は「1人○○個作れー!」とかノルマを課せられ、毎日講義が終わると研究室に顔を出してはチマチマチマチマとビーズ細工を作っていたワケです。

…と、なんかちょっと嫌そうに書いていますが、実は私はもともとこういう手先作業が大好きなので、このビーズ細工には相当ハマりまして。
カマキリ、カブトムシ、クワガタ、トンボ、タマムシ、スズメバチ、カワセミ、トトロ、シシ神…色々作っていました。
まぁ基本は量産のため“あまり手間が掛からず、見栄えのするもの”というコトで、トトロだのシシ神だのは1~2個ぐらいしか作りませんでしたし、「虫研」なので、作るのは昆虫中心でした。
今回は、そんな中から2つ程紹介(カマキリ&ヘラクレスオオカブト)。

ビーズ2

…作るのが面白くて、実は今でも自分用に家にビーズと細いワイヤーを買いそろえてあったり。

クワガタの標本の作り方~番外編:私のクワガタ展足~

ヒラタ展足

これはもう本当に「参考程度」に留めておいて頂きたいのですが、私の展足の形です。
やり方を書いていますが、これはあくまで私個人のやり方であり、展足の一般ルールではありません

※なお、クワガタ標本の作り方自体を知りたい方は、過去の記事を先にご覧下さい。(→クワガタの標本の作り方~基礎編~

私は、たいてい後脚から展足を始めます。
特に理由はないのですが、なんとなく後脚から順に上がっていくのがやりやすいように感じるからです。
全体の流れとしては「後脚→中脚→前脚→大アゴ→触角→前脚フ節を調整→全体の微調整」という順で整えていきます。
脚の位置の基準としては、

後脚
・後脚脛節の末端が、クワガタの上翅(鞘翅)末端とほぼ同じ位置にくる
・後脚と上翅は多少の隙間が開く
・フ節は左右平行

中脚
・腿節は、ヒラタなど脚の短い種ならほぼ真横、ミヤマなど脚の長い種は斜め上向きに出るように
・脛節は左右平行で胴体とも平行になるように
・フ節は平行か、ごく僅かにハの字に開く

前脚
・腿節はやや斜め下向きに
・脛節は左右平行に
・フ節は左右平行に

大アゴ
・軽く開く
・頭を上げ過ぎない

触角
・第1節を真横に出し、第2節以降は直角に前方に曲げる
・ミヤマなど脚の長い種は、前脚フ節と十字に交差させる

クワガタ展足参考画像

最後に小アゴひげなども左右対称になるように整えて、あとは乾燥させます。
ちなみに私の場合、クワガタムシは必ず一度カラカラに乾かしてから軟化展足しており、展足後はドライボックスに入れて10日程で乾燥終了。

1日目:展足
2日目:手を付けず
3日目:触角の横を押さえる針を抜く
4日目:触角の第1節の針を抜く
5日目:フ節の針を抜く
6日目:脛節と大アゴ以外の針を全部抜く
7日目:大アゴの針を抜く
8日目:脛節の針を抜く
9日目:予備でもう1日乾燥
10日目:ラベルを付けてマウント

…こんな感じで徐々に押さえ針を抜いていき、乾燥日数のカウントに利用しています。
(一気に全部抜くのが面倒というのもあります…(^^;))

まぁ、先にも書いた通り、これはあくまで私個人のやり方なので、これがベストとも思いませんし、人によって「好みの形」「やりやすい方法」は異なると思います。
自分の標本を見て、他人の標本を見て、また自分で展足して、そうやって続けていく事で自分の中で「理想の形」「ベストなやり方」が出来てくると思います。
私のやり方が、その探究の一助にでもなれば幸いです。

ナナホシキンカメムシ

ナナホシキンカメムシ生態

カメムシというと、地味で、クサくて、突然部屋に入ってきたり洗濯物に付いてきたり、時は農作物に害を与えたり…と害虫的なイメージが強い。
しかし、中にはこんな美しい種もいる(…やっぱり臭いニオイは出すんだけど)。

南西諸島に生息するナナホシキンカメムシは、とにかくもうめたくそに金ピカ。
あんまりピカピカなもんだから、カメラだとなかなか色が表現しづらいほど。
この美しさは、ちょっと感激だ。
沖縄本島や奄美大島でも見ているけど、南に行くほど数が多くなるようで秋の石垣島では大集団を何度も見ている。
林内の沢沿いなんかでよく大集団が見られ、マルバネクワガタを採集していると出くわしやすい。
この写真も、よく見ると背景の葉に多数の個体が付いているのが分かる。
正面の1頭だけではないのである。
そして、腰下ぐらいの低い木に100頭以上が集まっていたりする。
集団越冬のためらしいけど、マルバネの発生時期だとまだ比較的暖かく、集まってはいるものの結構活発に活動する。

カメムシの中でもこのナナホシキンカメムシが含まれる「キンカメムシ科」というグループは、金属光沢をもつ美しい仲間が多い。
本土でもよく見掛けるアカスジキンカメムシや、それを十倍以上ゴージャスにしたようなニシキキンカメムシ、オレンジと黒の模様に薄い紫の膜のような光沢がのるオオキンカメムシなど。

アカスジキンカメムシ

ところで、彼らの背中は一見すると他のカメムシと大きく異なっている。
実はこれは小楯板(しょうじゅんばん)と呼ばれる部位が大きく発達して背中全体を覆っているためで、それにより他のカメムシとは異なって見える。
(ちなみに小楯板というのは、カブト・クワガタでいうと上翅の付け根の三角形の部分に当たる)

カメムシの小楯板

時に、その金属光沢と背中の様子からコガネムシと勘違いされることもある程だ。
実際、採集中にアカスジキンカメを「これ、コガネムシ?」と聞かれた事が複数回あるが、コガネムシと違って背中に上翅会合線(左右の上翅の合わせ目の線)はない。
飛ぶための翅は、他のカメムシでは半分以上露出しているが、キンカメムシの仲間はこの小楯板の下に畳んでしまっている。

ちなみに、カメムシは常日頃から臭いワケではなく、身の危険を感じた時に脚の付け根近くにある臭腺という場所からあの独特の臭気を放ち(ゴミムシの仲間と違って、お尻からではないのだ)、外敵から身を守る。
なので、もし腕や服などにとまった場合、摘まんだり無理に手で払ったりするとカメムシが危険と判断して必殺の“カメムシsmell(フレグランスKamemushiでも可)”を出されてしまう可能性が高いので、息で吹きとばしたり、近くの葉に移らせたりした方が安全にカメムシを取ることができる。
慌てず、落ち着いて対処しよう。

あちらさんも別に好き好んで人に止まるワケではないし、洗濯物に付くのも越冬場所と勘違いしての事。
穏便に済ませるのが、どちらも嫌な思いをせずに済むので一番である。

オオスズメバチを食べる

スズメバチ揚げ

信州などでは「蜂の子」と言ってクロスズメバチ類の幼虫や蛹を貴重なタンパク質源として昔から食してきました。
地域によっては「ヘボ」という呼び方をする所もあります。
ところが、九州地方に行くとクロスズメバチより遥かに大きい真正スズメバチを食す習慣があります。

写真は、かのオオスズメバチの蜂の子の素揚げです。
宮崎の知人の家に行った際に御馳走になったもので、中には羽化直前の蛹も入っており“ザ・スズメバチ!”という姿にビックリ。
幼虫も4cmぐらいあり、ブリブリに太って迫力満点。
ところが、食してみたら意外にかなり美味(…ちなみに、個人的にはその「羽化直前の蛹」が一番美味でした)。
自分はお酒はほとんど飲みませんが、“ビールのつまみにピッタリ”という感じの味でした。
いやもう一度食べたら手が止まらない。
かっぱえびせんよりよほど“やめられない止まらない”ですよ(笑)

この地域では、スズメバチの巣を見つけた場合、よほど危険な場所でない限りすぐに駆除はせず、秋近くなって巣が最大級に大きくなるのを待ち、たっぷりと幼虫の詰まった巣を回収するのだそうです。


美味しかったからまた食べたいけど、さすがにオオスズメバチを巣を強襲する度胸はないなぁ…(汗)

ドライボックス

ドライボックス(1)

本来カメラ用品の除湿保管用の容器なのですが、それなりに使い勝手が良いので愛用しています。
価格はヨドバシカメラで2,000円でお釣りが来ます。

蓋にゴムパッキンが入っていて密閉できるので、タッパー同様外気の湿度に関係なく中の虫を乾燥させる事ができます。
また長さがあるタイプなので、展翅板や志賀の展足板がそのまま入り、少ないながらチョウやトンボも採る自分にはうってつけ。
…市販の展翅板や展足板を使わない場合は、タッパーウェアや他のサイズのドライボックスでも良いと思います。

ドライボックス(2)

ちなみに、私は中に小さな金属棚を入れて2段にして使っています。
使用している乾燥剤は、押し入れ用の中に水が溜まるタイプ。
別にこれが特に虫用に特別優れているというワケではないですが、スペースがあるのでたっぷり吸湿できる物にしました。
中をもっと広く使いたい場合は、シリカゲルシートなど薄いタイプの乾燥剤を使うと良いかと思います。

ドライボックス(3)

もっと大量の標本を作る人の場合、乾燥用の棚を作ったり温風機を取り付けて更に乾燥期間を短縮したりと色々な工夫をしているようですが、まぁのんびり屋の私にはドライボックスぐらいで十分なのです。

「もっとたくさん展足したいんだけど、タッパーが空かない。むき出しで置いておくのは虫に食われる心配があるし…」なんていう時には、カメラ屋さんを覗いてみると良いかもしれません。

ハチジョウノコギリクワガタの雌雄モザイク

ハチジョウノコのモザイク(2)

写真中央の個体、オスともメスともつかない体型をしている。
…そう、いわゆる「雌雄モザイク」と言われる、オス・メスの特徴が混在する個体なのだ。
左のオス&右のメスと比べてみると、頭部や前胸の形がメス、大アゴや脚の形はオスの特徴が出ているのが分かると思う。

雌雄嵌合体というと「左右きれいに真っ二つに分かれた個体」が有名で、もう少し詳しければ「グチャグチャとモザイク状に特徴が混じり合ったあまり美しくない個体」も写真等で見ているかもしれない。
しかし、中にはこんなふうにきれいに特徴が混じり合う個体も出てくるのである。
きれいに混ざり過ぎてあまり「異常感」がなくなってしまうが、これも立派な雌雄嵌合体。

…この個体を採集したのは2010年5月22日の八丈島。
畑脇の捨てられた鉢植えをどかしたところ、その下にとても小さなハチジョウノコギリがいた。
頭がやたらと小さくてバランスの悪いオス…

ハチジョウノコのモザイク(1)

………オス…?
……ん?
え?え?え?
これはもしや…!?

…とまぁ、そんな感じで採集したのが本個体。





※2012.10.04
記事の語句を一部修正しました。
『×雌雄同体 → ○雌雄嵌合体』
「雌雄同体」は雌雄が混ざったものではなく、もともと両方の機能を持っているもの(カタツムリ等は、個々の個体がオスとメス両方の機能を持っています)を指し、今回のように何らかの異常により雌雄が混じり合ったものは「雌雄嵌合体」というのが正しい呼び方です。
…分かっていてもつい私も混同してしまいます…気を付けないと(^^;

平均台

平均台

平均台と聞いたら、おそらく九割以上の人が“小学校の体育で使ったヤツ”を頭に思い浮かべるかと思いますが、こと昆虫標本の世界においては全く違う物を指します。
写真の階段状の小さな台、これが平均台です。

無くても良いけど、あると標本が美しく整って見えるアイテムです。
良く見ると段ごとに小さな穴が空いており(最上段には2つ、2~4段目には1つずつ)、この穴は下の土台につく所まで深く空いています。
つまり、段ごとに、標本の虫の高さやラベルの高さを揃えられるというワケです。
標本の高さというのは揃えなければいけないわけではありませんが、揃っていると非常に全体が美しく見えます。
また、研究等で使用する場合は顕微鏡下で見るのに高さが揃っていた方が見やすいという事もあり、多くの方が使用しています。

さて、どの段で何の高さを揃えるかという事ですが、

平均台(上面)

・最上段左:標本を背面で高さを揃える
・最上段右:台紙に貼る小型昆虫の高さを揃える
・2段目 :交尾器等の付属物を取り出した際に、台紙に貼って刺す
・3段目 :データラベル
・4段目 :種名ラベル

…というのが一般的でしょうか。
2段目に交尾器等を刺さない場合は、その高さにデータラベルを刺す人もいます。

最上段左は、針の頭(尖っていない方)を下にして刺し込むため、穴が少し大きくなっています。
平均台(上段)
※一瞬ゴキっぽくも見えますが、ゲンゴロウの一種です。

最上段右は、針の尖った方を下にして台紙の高さを揃えます。
平均台(台紙)

ラベルも高さが揃っていた方が整って見えますので、3段目(データラベル)・4段目(一番下の段:種名ラベル)も利用しましょう。
平均台(ラベル)

ラベルは標本と同じ向き(標本が本来の向きの時に、ラベルの字が読める方向に揃える)に刺すのが基本ですが、写真の台紙縦貼りのように標本が細く縦長になる場合は90°右に回して縦に刺す場合もあります。
これは標本本体が縦長・ラベルが横長となり、そのまま刺すと余計に場所を取ってしまうので、どちらも縦長になるように揃えるためです。
多数の標本を一度に扱う研究者の人に多いです。
(※台紙貼り標本については、またいずれ記事に書きたいと思いますので、首を短くしてお待ち下さい)

…で、高さを揃えて標本をつくっていくと、並べた時にこんな感じになるワケです。

日本産ミヤマクワガタ属箱
平均台(標本箱)

今回ご紹介した写真は、志賀昆虫普及社製の「平均台 並型」です。
価格も500円程度なので、持っていて損はないと思います。
また、「平均台 小型」という商品や、他メーカーでも作っている所がありますので、気になる方は色々調べて比較してみても良いかもしれません。
ちなみに私自身は志賀の「平均台 並型」を使っています。

…ただ、1つ難点を挙げるとすれば、木製のため長年使用していると僅かずつ穴が掘れて深くなっていってしまい、次第に高さが変わってきてしまうという事でしょうか。
まぁ安い物なので1~2年に一度買い換えれば問題ないのですが、個人的には“金属製の平均台を誰か作ってくれないかなぁ…”なんて思ったりも。

ハンミョウ

ハンミョウ

先日のタガメ採集の際、別ポイントでハンミョウ(ナミハンミョウ)がやたらと群れていたので、携帯片手に追いかけ回して、やっと撮れた奇跡の1枚。
ズームのあるデジカメならともかく、敏感なハンミョウに対し携帯でここまで寄れたのは奇跡と言っていい。

ハンミョウは漢字で書くと「斑猫」で、斑(まだら)模様で猫のように素早く動く、という所から来ているそうな。
ちなみに英語だと「Tiger Beetle」なので、やっぱりネコ科を連想させるらしい。

人の歩く数m先を、まるで道案内でもするかのように飛んでは止まり、飛んでは止まりする様子から「ミチオシエ」とも言われる。
極彩色の背面はまるで『私を見て!』とでも言わんばかりの派手さだが、ところがどっこいコレが実は保護色なのである。
アスファルト上なら目立つその姿も、乾燥したダート道に降りた途端、その姿は地面に紛れて消える。
着地した場所を確実に目視確認していなければ、ほぼ確実に消える。
一度でも目を離せば、もう消える。
そして“たしかこの辺に降りたはず…”と1mぐらいまで近付いた途端、また飛び立つのである。

…ちなみに、漢方薬に「はんめう(はんみょう)」というのがあるが、実はこれはミドリゲンセイなど「ツチハンミョウ」という全く別の仲間。
この仲間は体内にカンタリジンという毒を持っており、皮膚に付くと炎症を起こす。
捕まえたりしても関節からもカンタリジンを染み出させるので、見つけても手では触らないようにしたい。
で、このカンタリジンが使いようによっては薬にもなる、という事。
しかしながら、同じ「ハンミョウ」と付くもののハンミョウとツチハンミョウは“科”レベルで違うグループ。
『オサムシとクワガタぐらい違う』と言えば全然違うグル―プである事が分かるだろう。

…なので、写真の“ハンミョウ”は毒もないし、いくら集めても残念ながら漢方薬にはならないのである。

タトウ

標本中心のいわゆる“虫屋さん”の間で、甲虫やカメムシなどの一時保管や簡易展足等によく使われるのが「タトウ」というアイテムです。

タトウ

まぁアイテムと言ったってカット綿を紙で包んだだけなので、本当に簡単な物なのですが。
どういうものかと言うと、死んだ昆虫をカット綿に並べ、それを半紙や新聞紙など吸水性が良く通気性のある紙で包んで乾燥させ、軟化するまで保管しておくという保管・整理用品です(※生理用品ではないッスよ)。

タトウ開く

半紙や藁半紙など無地の紙で作った方がデータが書きやすくて良いのですが、旅先などで半紙が手に入らない場合は新聞紙でも構いません。
その場合は、できるだけ印字の少ない部分が表になるように折り、マジックなどで見やすくデータを書き込みます。
なお、広告チラシなどツルツルした紙は吸水性・通気性が良くない場合が多く、あまり向いていません。
吸水性・通気性の悪い紙だと、中の虫が乾燥せずにカビたり腐ったりしてしまう可能性があります。


さてタトウの作り方ですが、カット綿はどこの薬局でも必ず売っているので、それを紙で包んで作ります。
上の写真に折線が見える通り、「下側→上側→右側→左側」と順に折り、最後に右側の袖を左側の袖に挟み込んで(もしくは差し込んで)完成です。
とっても簡単。

タトウ折
(※ちなみに、この折る順番については人によってクセがあり、異なる順で折る人もいます)

タトウが折れたら、表側に、中に入れる虫のデータを書き、あとは中の虫を乾燥させてしまうだけです。
ちなみに、タトウに並べる前に、虫の各関節を一度しっかり動かして死後硬直が解けているのを確認しておいた方が、後で軟化展足する時にやりやすくなります
遠征などですぐに展足できない時や、一度乾燥させてから軟化展足したい時など、用途は多いです。
自分などは、虫は一度タトウでしっかり乾燥させてから軟化展足をする場合が多く(その方が展足後の乾燥期間が短くて済むのです)、このタトウを非常に多用しています。
更に、このタトウをタッパー等に入れておけば保管場所も少なくて済み、誤って破損させる危険も少なく、非常に効率的(防虫剤を忘れずに)。

タトウ収納

その際に、タトウの表にデータを書いておくようにしないと、後から何処で採った虫だか分からなくなってしまうので、必ず明記します。
また、原則的に1タトウ1データにしましょう。
色々な場所で採った虫を同じタトウに入れてしまうと、万一タトウの上で虫が転がったりした時に、どれがどのデータだか分からなくなってしまう危険がありますので、同じタトウには同じ日・同じ場所で採った虫しか入れないというようにした方が安全です。

また、タトウの大きさに決まりはないので、入れる虫の大きさや数によってサイズを好きに変えられます。
自分の場合、2種類の大きさのタトウを使い分けています。

・大きい方はカット綿そのままのサイズを藁半紙で包んだもの
・小さい方は、カット綿を1/3サイズにカットして、100均の半紙1/2切で包んだもの

…です。

タトウ大小

ミヤマクワガタやタガメなど大型種を入れる場合や、小型種でも大量に採れた場合は大きなタトウを使用し、コクワガタ1頭とか小さな虫が少量の場合には小さいタトウを使用しています。


展足が追い付かない時、すぐに展足する余裕がない時、まずはタトウで保管しましょう。

また、小型の昆虫などではタトウの上で展足し、そのまま乾燥させて台紙に貼り、マウントする場合もあります。
つまり、押さえ針を使わないで、このまま綿の上で展足してしまうワケです。
詳細はリンク記事をご覧下さい(→小型甲虫の標本の作り方)。


保管から展足まで使えるお手軽アイテム「タトウ」。
便利ですよ。


※ちなみに、「タトウ」という名の由来は、着物を包む和紙から来ています。
着物は和紙に包んで保管するのですが、それをタトウと言い、同じ折り方をするのでこちらも「タトウ」と呼びます。
近年、薄いプラスチックケースに綿を敷いて同じように保管使用する「プラタトウ」なるものも出てきていますが、名の由来から考えると、これはタトウと呼んで良いものか……悩むところです(笑)

タガメ

タガメ2010

『水中のギャング』とも称されるタガメ。
この面構えを見れば、その呼び名も納得がいくというもの。
プロレスラー蝶○のサングラスを彷彿とさせるような吊り上がった眼と、バネ仕掛けのような速度で一瞬で獲物を捕える鎌、そして♀ならば7cmにも迫ろうかという体躯。

毎年一度栃木県某所にタガメを見に行くのだけど、このポイントは年々確認できる数が減っている。

タガメ2011

初めて行った年は、仲間と3人で40頭ぐらい確認できた(リリース分を含む)のだが、年を追う毎に確認しづらくなっていき、今年の確認は3♂のみ(※1♂キープ)。
原因はよく分からない。
また、“タガメの痕跡”はよく見つかるので、もっと見つかって良いハズなのだけど…。
う~ん…他にも採集者が入ってる…?

タガメ痕跡

…何はともあれ、このポイントが今後も健在であり続けることを願うばかり。

ライターガス

ライターガス

ライターの補充用ガスですが、実は標本目的の虫の殺虫処理にも使えるのです。
即効性がかなり高く、オオスズメバチ等でもガスを吹き込んで数秒で痙攣状態になり、死んでしまいます。
ガスなので飛行機には持ち込めませんが、コンビニで簡単に手に入るため、離島でもコンビニがあるような島なら入手可能です(※その場合、帰りの飛行機に持ち込めないので使い捨てになりますが)。
また、酢酸エチル等と異なり、明るい体色の虫でもガスによる変色がないというのも特徴です。

<利点>
・入手が容易
・即効性が高く、殺虫処理が早い
・ガスによる虫の変色がない

<欠点>
・防腐効果はない(大型の虫などでは腐敗しやすい)
・体がやや膨らむ傾向がある(交尾器が飛び出すことが多い)

<その他>
・引火性が非常に高い(ライター用のガスなので…)

クワガタならコルリクワガタなどの小型種、あとは甲虫ならハンミョウやハムシなどに向いていますが、大型の種には残念ながら不向きです。
ハエ屋さんが好んで使うことが多いとのことで、小型の虫を傷付けたり薬品で濡らしたりせずに素早く殺虫したい場合には非常に有効です。


なお、ライター用のガスなので非常に引火性が高く、扱う際は当然火気厳禁です。
間違っても、タバコを吸いながら扱ったりしないように、重々ご注意下さい。

クワガタの標本の作り方~基礎編~

まぁ、クワガタに限らずカブトムシの標本の作り方もコガネムシもカミキリも、要はある程度大型甲虫の標本作製なら基本的に同じなんですが。

昆虫の標本というのは、多くの場合、基本的には整形して乾燥させるだけです。昔あったような赤と緑の液体を注射する「昆虫採集セット」などは使いません。
(…ぶっちゃけ、アレはインチキです。そのうちブログネタにしようかな(笑))

およその手順は、以下の通り。

(0)殺虫・防腐処理
(1)展足
(2)乾燥
(3)マウント

(0)殺虫・防腐処理
最初から標本目的の場合、先日紹介した酢酸エチル等の薬品で殺虫処理をする場合が多いです。
標本というのは学術的な見方をすれば「情報の塊」ですので、基本的には完品に近ければ近いほど情報価値が高くなります。
チョウなんかの場合、翅(ハネ)がボロボロで模様が分からなくなってしまったら、その種の模様を調べる事が出来なくなりますし、脚が取れたクワガタはその脚の形が分かりません。
なので、標本に重点を置く場合、可哀想かもしれませんが採集してすぐに殺虫処理を行う場合が多いのです。
酢酸エチルの入手・使用方法等については先日の日記をご参照下さい(→酢酸エチル

なお、お断りしておきますが、私は別に誰にでも虫を殺すことを推奨しようというワケではありません
自身は標本主体ですので実際に殺虫を行っていますが、昆虫は生きている時の姿が一番魅力的だと思っています。
威嚇するミヤマクワガタ、葉先にとまってテリトリーを張るゼフィルス、懸命に鳴くセミ…どれも、標本ではその魅力を十分に伝え切ることは出来ません。
また、飼育が好きな人は当然ペットである虫を殺すのに大きな抵抗があるでしょうし、子供はまずは虫を捕まえて生きた状態でいじくり回して観察する所からで良いと思っています。
殺虫処理は、あくまで「標本目的であれば」という前提であることをお伝えしておきます。

…ちなみに、飼育して死んだ個体の場合、防腐処理が施されていないので腐敗が早くなりますが、もし死んですぐに気付く事ができれば、死んだ直後に毒ビンに入れておく事で、ある程度は酢酸エチルの防腐効果を期待できます
ですので、少しでも良い状態で標本を残したい場合は、殺虫をするつもりがなくても酢酸エチルは持っておくと便利です。
お試しあれ。


(1)展足
クワガタなど、主に脚の形を整えるのを「展足(てんそく)」または「展脚(てんきゃく)」と言います。
一方、チョウなどのように主に翅(ハネ)の形を整えるのを「展翅(てんし)」と言います。

展足にも色々なやり方があり、どれが正解というものでもありません。
重要なのは完成した形であり、途中のやり方など自分がやりやすいようにやれば良いのです。
とは言え、それだけでは初めての方にはあまりに不親切なので、オーソドックスなやり方をご紹介します。

甲虫の展足で最も基本的なのは、「針展足」と言われる“針で脚や大アゴを押さえて形を整える方法”です。

手順としては、まずは標本にする甲虫の体に「昆虫針」を刺します。
(※この針は、専門店で売っているものを使った方が良いです。昨日の日記参照→昆虫針

クワガタ展足針刺し(横)
クワガタ展足針刺し(後)

甲虫の場合、真ん中ではなく右上翅の上寄り(裏から見た時に、中脚と後脚の間に針が出るように)に刺すのが通例です(展足写真参照)。
前後左右から見て斜めにならないように、虫の体に垂直に刺します。
…なお、先に昆虫針を刺さず乾燥後に刺す人もいますし、どちらでも構わないのですが、虫の種類によっては乾燥後は体が破損しやすくなり、針を指すだけで背中が割れてしまうものもいるため、「先に針を刺しておく」が基本になります。

昆虫針を刺せたら、展足板(発泡スチロールの板でOK)に虫を乗せて整形していきます。
乾燥中に筋肉の収縮等によって形が変わってしまわないように、こんな感じで脚の上で針を十字に交差させ、しっかりと展足板に押さえ付けます。

クワガタ展足脚固定

関節が動いてしまう事もあるので、脚の先だけ押さえるのではなく、各節をしっかり固定しておいた方が良いです。
整える上で、「前脚の角度は…」とか「大アゴは何度の角度で開く」とか、そんなルールはありません。
基本的に、

・脚や触角などをきちんと体の下から出して見やすくしておく
・およそ左右対称にする

…という感じにしておけば、あとは自分が格好良いと思う形に整えていけば良いのです。
ただ、体の正中線(中心線)は頭から翅の先までまっすぐになるよう注意しましょう。
脚や触角を一生懸命キレイに整えても、正中線が曲がっていると格好悪い標本になってしまいます。
あとは、あまり脚を広げ過ぎると標本箱の中でスペースを食ってしまうのと、縮め過ぎて脚などが見えにくくなってしまわないようにだけしておきましょう。
ちなみに私はこんな感じにしています。

※「×印」は昆虫針を刺す位置
クワガタ展足参考画像

別にこれが万人にベストな形というワケではありませんが、参考程度にでもなれば幸いです。
この個体は大アゴの湾曲が弱いので、格好良く見せるために大アゴを少し大きめに開いています。
湾曲が強い個体の場合はもう少し開き方を弱くしています。
…とは言え、これも個人の好みの問題なので、どの角度がベストというものでもありません。
いくつも展足をしたり、他人の標本を見たりするうちに「自分の中の理想の形」というのが出来てくると思いますので、まずは作ってみることが大事です。


(2)乾燥
展足が済んだら、それぞれの虫に「いつ・どこで・誰が採った」というデータを書き添えて乾燥させます。
乾燥が不十分だとカビや腐敗の原因になりますので、しっかり乾かしましょう。

陽の当らない風通しの良い場所に置くのがオーソドックスですが、梅雨時など湿度が高いとなかなか乾燥せず腐ってしまう場合もありますので、タッパーウェアなどの密閉容器に多量の乾燥剤と一緒に入れておく方法がオススメです。
しっかりを蓋をしてしまえば、外気がいくら湿度が高かろうが問題ありません。
また、基本的には直射日光は厳禁です。
日光などの強い光は標本の色褪せの原因ですので、必ず日陰で乾燥させましょう。
(※博物館の展示標本が白っちゃけた色をしているのは、長年照明の光を浴び続けた事による褪色が原因です)

早く標本箱に入れて悦に浸りたい 眺めたいのはやまやまですが、コクワガタで1ヶ月、ミヤマやオオクワなど大型種なら1ヶ月半~2ヶ月ぐらいは乾燥させたいところです。
繰り返しますが、乾燥が不十分な場合、カビや腐敗の原因になります


(3)マウント
さて、虫がしっかり乾いたら、いよいよ標本完成間近です。
最後に標本で最も重要な「データラベル」を付けます。
いつ・どこで・誰が採ったかという3点を明記するワケですが、注意点がいくつかあります。

・ラベルには、正確なデータを書く
・年号は西暦4桁で書く
・地名は都道府県から書く

(例) 鹿児島県(奄美大島)
    宇検村 湯湾
    湯湾岳
    2008年8月16日
    井上三太郎 採集

故意に間違ったデータを書くのはもちろんご法度ですが、「これ、どこで採ったんだっけ…?」なんて場合に、適当なデータを書いてしまうと、誤りがあった場合に後世まで間違った情報が残ってしまう事になりますので、必ず正確なデータを書きます。
詳細地名(字名など)などが分からない場合は、分かる所まで(○○県××市、など)だけを書くようにします。
年号については、必ず西暦4桁で書くようにして下さい。
平成などの和歴や、「'95」などの省略はしないようにします。
これは、標本は個人の思い出だけでなく、万が一にも何かの研究に使われた際にきちんとしたデータとして機能するようにするための約束事です。
また、地名は都道府県からきちんと書きます。
いきなり「鳩ヶ谷市」とかから始まったら、近隣の人以外はそれがどこなのかサッパリ分かりませんし、まして市町村合併でなくなってしまったりすると、後から調べるのが非常に大変になってしまいます。
まして「自宅の庭」なんて書かれたら、採集者の住所を知らなきゃもはやデータとして機能しません。

データラベルとは、その標本の履歴書です。
つまり、自分だけ読めれば良いのではなく、誰でも分かるように書くことが重要なのです。


…さて小難しい話はこのくらいにして、ラベルが書けたら、それをクワガタに刺した針に一緒に刺して、標本は完成です。

クワガタ展足ラベル


…文章にするとどうしても長くなってしまいますが、実際にやってみるとそう難しくはないハズですので、ぜひチャレンジしてみて下さい。



※詳しいラベルの書き方・作り方については、以下のリンク記事をご覧下さい。
データラベルの書き方
データラベルの作り方

昆虫針 ~なぜ標本に針を刺すのか~

針刺しミヤマ

標本を作る際、昆虫の体に直接刺すための針を「昆虫針」と言います。
標本作製用品のほとんどは一般流通品で代用が効きますが、昆虫針に関しては専門の物を買った方が良いです。
時々「虫ピン」「シルクピン」「マチ針」などで標本を刺している人を見掛けますが、標本針は専用に作られているので長さがあり、扱いやすいように出来ていますので、是非ともこちらをお薦めします。

現在、日本国内で主に使われているのは「志賀針」と呼ばれる国産針と、「ナイロンヘッド」と呼ばれるヨーロッパ製の針です。
写真左が国産の「有頭シガ針」、写真右が「ナイロンヘッド針」です。

昆虫針

志賀針は安価で普及率も高いので入手しやすく、ナイロンヘッド針はコシがあり針先が鋭いという特徴があります。
また、それぞれ号数があり、数字が大きくなるほど針が太くなっていきますので、虫の大きさに合わせて針の号数の変えていきます。
志賀針は00号、0号、1号、2号、3号、4号、5号、6号の8種類、
ナイロンヘッドは000号、00号、0号、1号、2号、3号、4号、5号、6号、7号の10種類があります。

特にどの虫に何号針を刺すという決まりはないのですが、ミヤマクワガタなど大型種に0号や1号だと標本がフラフラしてしまいますし、テントウムシに6号針を刺そうとしたら太過ぎて虫体が壊れてしまいます。
参考までに、私はこんな感じで号数を使っています。

2号:スジクワガタ大型、コクワガタ中型、モンシロチョウ
3号:コクワガタ大型、ノコギリやミヤマの小型、中型タテハチョウ
4号:ノコギリやミヤマの大型、オオムラサキ、
5号:カブトムシ大型、メンガタスズメ(蛾)

…とは言え、これはあくまで私個人の判断であり、これより細い針を刺す人もいますし、逆に太い針を刺す人もいます。
多少の違いは個々人の好みで判断して構いません。

また、志賀針は全号長さ約40mm、ナイロンヘッドは000~6号は約38mmで7号だけ特大級甲虫(ヘラクレスオオカブトだのゾウカブトだの)用に52mmと長くなっています。
価格は号数によって異なりますが、だいたい1包(100本入):300円~700円です。


…さて、ここまでが針のご紹介。
ここからはちょっとお話。

「標本に針を刺す」というのは、初心者の方からすると“壁”のひとつのようで、「針を刺さないで標本にしたい」というのを時々見掛けます。
針を刺すという行為が非常に残酷に思え、どうしても抵抗があるとか。

では、なぜ標本に針を刺すのでしょうか?

この「昆虫針」が発明されるより以前、標本はどうやって保管していたかというと、ガラスシャーレに綿を置いてその上に虫を置き、ガラスの蓋をして1頭ずつ保管していました。
しかし、昆虫の標本は様々な部位を調べる必要があり、その方法だと調べたり観察したりするたびに虫の体に直接触って標本を扱う事になります。
そうなると、掴んだ拍子に脚が折れてしまったり、チョウなど鱗粉はすぐ剥がれてしまいますし、翅も簡単に破れてしまいます。
移動させるだけで、クワガタのフ節だって折れてしまうかもしれません。
…そう、研究などで使う度・動かす度にボロボロになっていってしまうのです。

しかし、標本に針を刺せば、針を摘まむことで虫に直接触れずに標本を扱うことができるようになり、結果、標本を破損させる可能性がグンと下がるのです。
つまり、標本の針を刺すというのは、決して残酷行為などではなく、標本を大切にするために行っているのです。

ミドリヒョウモン(1)
ミドリヒョウモン(2)



「標本に針を刺すのは残酷だから、俺は刺さずに作る」という方、標本を移動したりする際の“破損の可能性”は考えておりますか?

月齢カレンダー

月齢カレンダー2012

外灯回りにしろ自前灯火にしろ、灯火採集を考えるなら絶対に持っていた方が便利です。
カブト・クワガタや蛾など、灯火に来る虫を狙い場合、月齢というの非常に大切になります。
虫は新月に近いほど灯火によく集まり、満月に近いほど集まりは悪くなります

夜間に飛び回る昆虫の多くは、月や星の光を基準に飛行しています。
月や星は距離が非常に遠いため、光はほぼ平行に地上に届きます。そのため、その光を一定方向(たとえば、常に背中側に、など)から受け続けるように飛べばまっすぐに飛行する事ができます。
ところが、外灯などの光は非常に距離が近く、同じように背中側から光を受けるように飛ぼうとすると光源の周りをグルグルと回ってしまいます。

月の光というのは意外と強く、周囲に明かりのない場所だと半月ぐらいでもクッキリと影ができる程です。
そのため昆虫も外灯よりも月の光を基準に飛び、あまり灯火に集まらないのです(※全く来ないワケではないですが)。
しかし、月が新月に近い(三日月なども)と、その光も弱く、虫は外灯の光に寄せられます。
そこで、灯火採集をする場合、事前に採集する日の月齢を確認しておく事が非常に重要になるのです。
写真のカレンダーから来年の4月を例に挙げると、7日が満月で21日が新月になります。
という事は、7日は最も灯火に虫の集まりが悪く、21日は最も虫が良く集まる可能性が高い、という事になります。
この情報に、採りたい虫の発生時期を重ね合わせ、採集の予定を立てるワケです。

今はインターネットでも「月齢」などのキーワードを入れて検索すれば簡単に調べる事ができますので、カレンダーが必ずしも必要というわけではありませんが、カレンダーの良い点として、各月の月齢をまとめて見られ、いちいち検索をする必要がないという事が挙げられます。
パソコンや携帯でネットにつながなくても、ペラペラとカレンダーをめくるだけで調べられるのです。

「夏の旅行でカブトムシを採ろう!」などの場合、灯火を見て回るつもりなら月齢の下調べは必須です。
満月と新月とでは成果に倍以上の差が出る事も珍しくありません。

私の場合は、数字・月齢共に大きく見やすいので写真のタイプを毎年愛用していますが、他にも何種類かありますのでご自身で見やすいものを選ぶと良いでしょう。
月ごと縦一列タイプのもので「月の出・月の入」も記載されたものもあり、字が小さくても構わないのであればそれがお薦めです。
月齢が多少悪くでも、月が出る前であれば当然月光はなく、虫も灯火に集まります。
そこで、月が出るまでの間に勝負をかけるという方法もあるのです。


月齢。
外灯回りや自前灯火など、灯火採集の成果を大きく左右する情報なので、簡単にチェックできるアイテムとしてカレンダーはなかなかオススメです。

酢酸エチル

酢酸エチル

昆虫採集の際、採集した昆虫の殺虫処理に最もよく使われるのがこの「酢酸エチル(さくさんえちる)」です。
虫屋さん(→虫屋とは)は、「酢エチ(さくえち)」などと略して呼ぶ事が多いです。
…しかし、まだ採集を始めたばかりの方は入手方法やその使用方法など、今ひとつ分かりづらいのではないでしょうか?

化学的な話はここではしませんが、酢酸エチルは非常に揮発性の高い薬品で、その気化(蒸発)したガスを虫に吸わせる事で殺虫します
また、ガスが昆虫体内に入ることで防腐効果もあるため、標本乾燥中に虫が腐敗するのを防ぐ効果もあります。
餓死や冷凍、寿命等で死んだ虫の場合、死んだ直後から腐敗が始まり、虫によっては乾燥より腐敗が先に進んでイヤなニオイと共に虫がバラバラになってしまう事もあります。
しかし、酢酸エチルで殺虫処理した虫の場合、乾燥中に腐敗する心配は少なく、より状態の良い標本として残せるのです。

(1)入手方法
(2)使用方法
(3)保管方法
(4)応用

(1)入手方法
酢酸エチルは毒劇物に指定されており、販売には特定の免許が必要です(売る側の話)。
そのため、入手は薬局で頼んで取り寄せてもらう形になります(※常備している薬局はほとんどありません)。
価格は、写真の500mlビンで2,000円以下ですのでさほど高いものではありませんが、購入するには、成人で、かつ身分証明印鑑が必要になります。
取り寄せ後、商品引き渡しの際に「譲渡書」という簡単な書類を書いて、そこに印鑑を押して購入します。
書面内に「使用目的」とありますが、これは「昆虫採集」と書いて問題ありません。

なお、マツ●トキ■シなど大手チェーン店ではこの類は取り扱ってくれない場合が多いので、取り寄せは地元に昔からあるような調剤薬局に頼むという形になりますが、近年はそういった薬局でも取り扱いを嫌がるケースも出てきているようで、入手に少々手間取る可能性もあります。

※酢酸エチルは先述の通り毒劇物に指定されているため、気軽に転売等をお考えになりませんようにお願い致します。


(2)使用方法
先に書いた通り、酢酸エチルは気化させたガスで虫を殺します
そこで、殺虫管(→記事)と呼ばれるビンの底に脱脂綿を入れ、そこに少量の酢酸エチルを注ぎます。
綿がそこそこ湿る程度で十分で、液体が瓶の底に溜まるようでは多過ぎます。
そこに殺虫処理したい虫を入れて蓋をして殺すワケですが、虫によって死ぬまでに掛かる時間がかなり異なります。
弱い虫なら30分もせずに死んでしまいますが、ゾウムシなどでは3時間入れておいても復活する場合があります。
最低半日ぐらいは入れておくようにしましょう。
なお、酢酸エチルは僅かずつですが筋肉を劣化させる働きもありますので、クワガタムシ等を丸一日以上入れておくと、かなり関節が柔らかくなります(※筋肉劣化と言っても本当に僅かずつなので、コガネ・クワガタクラスの虫なら1週間以上入れておいても劣化で脚が取れたりする心配はないです)。
なので、24時間以上入れておいた方が、展足(整形)が楽になりますが、一方で黄色など色の鮮やかな虫の場合、変色してしまう事も多く、その辺りの加減は使いながら覚えていくしかありません。

また、酢酸エチルを含ませた綿に虫が絡むと取り出すのが面倒になりますので、綿と虫の間に仕切りを入れておくと良いです。

少量を嗅ぐ程度なら健康な人体に害はないですが、多量のガスを吸引すれば何らかの害を及ぼす可能性もありますので、ビンの蓋はしっかり閉めておきましょう。
また、揮発性・引火性が高い薬品ですので、取り扱いの際は火気厳禁です。
タバコなどを吸いながら扱うと顔面を焦がす可能性もありますので、絶対にやめましょう。


(3)保管方法
酢酸エチルは化学薬品のため、暗く涼しい場所で保管するようにして下さい。
直射日光が当たって高温になるうな場所は厳禁です。
また、揮発性が非常に高いため、蓋が緩んでいるとどんどん蒸発して量が減っていきますし、部屋の中が酢酸エチルのガスで充満してしまいますので、蓋はキッチリ閉めましょう。

日帰り程度の採集なら途中での補充は必要ありませんが、旅行など長期の採集の場合、途中で殺虫管に入れた酢酸エチルが全部気化してなくなってしまう場合がありますので、予備を持って行くようにしましょう。
なお、プラスチック等を溶かしてしまう性質があるため、プラ系の容器に入れると容器が溶けてベタベタになってしまったり、薬品をこぼすとそこの表面が溶けてしまう場合がありますのでご注意下さい(※テーブルの表面のコーティング等も溶けて光沢が無くなってザラザラになってしまう場合があります)。


(4)応用
酢酸エチルの筋肉を軟化・劣化させる働きを利用して、関節が固くなってしまった虫の軟化に使う事もできます。
乾燥して固くなった昆虫はお湯や蒸気で柔らかくして整形しますが、時に水分で軟化しても筋肉がゴムのように固くなってしまい、関節が動きにくくなってしまう個体がいます。
そういう場合、軟化剤を注射する等の方法もありますが、頑丈な甲虫であれば、虫に水分を含ませた状態で、酢酸エチルをやや多めに入れた殺虫管に入れて数日間置いておくと、関節を柔らかくする事ができます。
1日ごとに取り出して、軟化具合を確認し、柔らかくなったらそのまま整形します。

「お湯に浸けてもクワガタの大アゴが固くて開かない」などの際は、ぜひお試しあれ。


※なお、「酢酸エチル」はどんな少量でも飛行機機内に持ち込む事は許可されていません(預け荷物を含む)
ですので、飛行機で遠征に行くような場合は、大きな荷物と一緒に事前に船便で宿泊先に送付しておくのが良いでしょう。
そうする事で当日現地までの移動が身軽になりますので、一石二鳥とも言えます。


…そうそう、渋谷の宮益坂上にある薬局は、かつて向かいに志賀昆虫普及社があった名残りなのか「酢酸エチル」を常備しています。
なので、印鑑と身分証明書を持っていけば当日購入する事ができますので、お近くの方はオススメ。

青山通り薬局 → クオール薬局
〒150-0002
東京都渋谷区渋谷2-10-16

※2012年1月21日に行ってみたところ、クオール薬局という名前に変わっていました。
酢酸エチル自体は変わらず常備しているようなので、お求めの際はこちらに。

クオール薬局
※坂下側から見て、スターバックス手前と覚えておけば分かるかと思います。



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夏の残照

10/2アブラゼミ死骸(市ヶ谷)

市ヶ谷の外濠公園で見つけたアブラゼミの踏まれ死骸。
見た感じかなり新鮮で、“昨日(10/1)まで頑張って生きてました”という感じ。

夏の残照。

ゲンゴロウ(シマゲン)標本の色残し

シマゲンゴロウの標本

ゲンゴロウの色を残すのって、けっこう大変です。
ゲンゴロウ類は甲虫の中でも変色しやすく、脂が出たり何なりで黄色など明るい色の部分が黒ずんでしまいやすい。
酢酸エチルで〆ただけでもすぐに黄色が消えてしまう。
なので、水昆屋(昆虫の中でも水生昆虫を中心に趣味としている人)は、亜硫酸ガスで〆て、更にアセトンに浸けて脂抜きするのが一般的となっている。
…が、正直ちょっとメンドクサイ。

なので、今回ちょっと実験してみた。

乾燥期間わずか4日だが既に脚も固まっており、ほぼ乾いてそう。
で、現時点で色もこれだけ残っている。

方法としては、
(1)ライターガスで殺虫
(2)高温・急速乾燥

(1)のライターガスはまた今度詳しく書くとして、(2)高温・急速乾燥だが、ある種の禁断技(?)だ。
密閉容器(タッパー)に乾燥剤と共に展足したゲンゴロウを入れて蓋をし、日向(ひなた)に置く。
これによりタッパーの中は40℃やそれ以上の高温になり、昆虫体内の水分が一気に蒸発し、それを乾燥剤が全て吸収する。
セミなんかだと半日ちょっとでカラカラになってしまう。

ただ、直射日光は本来は標本の大敵。色褪せの一番の原因だ。
なので、やり過ぎれば、博物館の展示標本のような白っちゃけた色になってしまう。
ある意味で、諸刃の剣(笑)

…念のため、あとしばらく日陰で乾燥させてから標本箱に入れるつもり。
あとは、脂が出ないかどうか、だな。
プロフィール

虫けら屋

Author:虫けら屋
もっぱら採集中心の虫屋さん。当初は東京で発生が確認されたが、後に埼玉県に移入、現在は千葉県での生息が確認されている。
肉眼で見て楽しめるぐらい大きなミーハー虫が好き。

Blog内の写真・文章等については、少しの引用的転用ぐらいならOK…と思っていたのですが、なんか最近フリー素材か何かと勘違いされているフシがあるので、今後は勝手に使わないでね。

※お問い合わせを頂く際はEメールにてお願い致します(採集ポイント等についてはお答えできかねますが…)。なお、採集遠征等により、お返事まで数日以上掛かる場合もございますので予めご了承下さい。
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