奄美大島採集記(8)

<2月25日>
昨夜、ケブカの後に水生昆虫用のトラップを回収に行ってみたが、残念ながらスカ。
一応、餌を変えてもう一晩やってみる事にする。


さて今日は土曜日で、現地在住の友人Y氏も再び自由に動ける日。
相方含めて3人で一緒に島を回る。
ジャコウアゲハはポツポツ飛んでいるが、それ以外のアゲハはいない。
ジャコウアゲハ(ボロ)
ジャコウは新鮮~ボロまで様々な個体が飛んでいる。
他に見掛けるのはウスキシロチョウぐらいか。

続いて、今年の標本教室用にリュウキュウアサギマダラを探すが、何せここ2年続けての寒波のせいでリュウキュウアサギが本当に少ない。
今回の滞在中でも、見掛けたのは3~4頭程度ではないだろうか。
…それでも目星を付けた場所に行き、なんとかかんとか標本教室に使えそうな頭数を確保する。

琉球浅葱斑

個人的には、リュウキュウアサギマダラは標本教室に一番向いているチョウだと思う。
 ・丈夫さ……マダラチョウなのでチョウとしてはかなり丈夫
 ・美しさ……水色でわりと美しい
 ・大きさ……大き過ぎず、小さ過ぎず
 ・レア度……本土では見られない
 ・入手………比較的良い状態で、まとめて採れる
…とまぁ、標本教室と言う意味では5つ星なチョウではなかろうか、と。
ガチの蝶屋さんからしたら南西諸島では駄物中の駄物かもしれないが、虫屋が初めて沖縄に昆虫採集に行ったら必ず追い掛けてしまうであろう蝶でもあるし。


さて、今日はいよいよ今回の遠征では最後の晩だ。
どうにも昨夜までの様子だと完全にピークを過ぎてしまったようだが、だからと言って『やらない』という選択肢はない。
一縷の望みを賭けて、最後の晩に挑む。


18:30 飛ばない

21:00 飛ばない


21:30 飛ばない



22:00 飛ばない




23:00 飛ばない






.....................orz




…どうにもこうにも、羽音さえ聴こえない。
試しに森の中にも入ってみるが、やはりいない。

結局、♀の追加どころか♂の姿さえ見られないまま時間だけが過ぎていき、終了となった。

ここまで手強いとは…

…明日明るくなってからトラップ類を回収している時間はないので、暗い夜中のうちにトラップを撤去する。
ポイント内に仕掛けたトラップにケブカ2♂が来ていたが、数日間仕掛けっぱなしにしていたので、何日に入ったものかは不明…。


その後、若干の睡魔に襲われつつも水昆トラップを回収に行くが、シリケンイモリが2頭入っていただけ。
ゲンゴロウトラップは難しいなぁ…
成果が出たことがほとんど無いため、何が悪いのか推察すらできないのがツライ…。
明日の手間を減らすため、こちらも夜のうちにトラップは引き揚げて回収。

…おかげで、寝たのは4時近くなってからだった。


<2月26日>
明けて26日(日)はもう帰る日だ。
以前は「奄美→羽田」便は夕方だったのだが、いつの間にか昼過ぎに変わっていたため、最終日は採集をしている時間はない。
さっさと荷物をまとめて支度をする。

さんざん汚しまくったレンタカーは、せめて洗車して汚れを落としておく。
『平田町のエブリワン』の斜向かいにあるガソリンスタンドで洗車したのだが、790円かそこらでメッチャクチャ丁寧に洗車してくれて、なんかもうこっちが申し訳ないぐらい。
ただの水洗車でワックスすらやらなかったというのに、洗車機から出てきてから細かい所を丁寧に手で拭いてくれるし、もう東京近郊のチャラい兄ちゃんがバイトしてるようなスタンドとは大違いである。

さて、少しだけ時間に余裕があったので空港の先まで行き、そこで最後のご飯を食べて、空港へ。
レンタカーを返す前に空港窓口から荷物の郵送手続きをして、それからガソリンを満タンにしてレンタカー屋へ。

空港の保安検査場の前で、今回の採集にみっちりと付き合ってくれた友人に礼を言い、自分と相方は飛行機へと向かった。



  ~終~


…今回、1頭だけではあるが、奄美初のケブカコフキコガネ♀を採集する事ができた。
沖縄本島以外では♀は初記録になる。これは非常に大きな意味があるだろう。
また♂はある程度の数を採集でき、沖縄やんばる産とは随分と生態が異なる事も体感。
しかし、採集は1ヶ所だけであり、また♀が1頭ではあまりにデータが少な過ぎるのも確かであり、まだまだ課題は多い。
誰か、追加挑戦してくれる馬鹿(良い意味で)はいないものだろうか(笑)

ケブカコフキコガネは、まだまだ謎だらけの虫である。



























<オマケ>

レンタカーの車内に貼ってあったステッカー

林道禁止

……………………。

(^^;












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奄美大島採集記2012初春~目次~
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奄美大島採集記(7)

<2月24日>
本日は早めに動きだして、まずは宇検方面で見つけたリュウキュウイノシシの頭骨を回収に行く。
元から桝(マス)に沈んでいたのだが、鼻先にまだ少量の肉が付着しており、少しでも剥がれるようにと再度沈めておいたものだ。
生き物好きのK先輩に写メを送ったら相当欲しがっていたので、貸しを作っておこうと 色々恩もあるので、メンドクサイが せっかくだし回収して送ってさしあげようと。

…骨というのもナカナカ面白い世界だとは思うのだが、こんな物まで集め始めたら本当に収納場所がなくなってしまうので、自身では手を出していない。

イノシシ頭骨

本土のイノシシより小型とは言え、成体の頭骨なので30cm近くはある。
上顎・下顎両方の牙も残っており、なかなか立派なものである。

写真の通り、ほぼ白骨化しているが、鼻先にプツプツした腐肉が残っている。
水の中に沈んでいたので腐臭はさほど酷くないが、それでも車の中で腐臭が充満しては困るので、ジップロックに入れてそれを更にビニール袋に入れて、箱に入れる。

さて戻りの道すがら何ヶ所かリュウキュウチクのある場所に仕掛けたトラップを回収してみるが、やはりケブカコフキは入っていない。
…やはり、奄美のケブカはホストがリュウキュウチクではないという事か。

途中、町の小さな郵便局から回収したイノシシ頭骨を先輩宛に発送する。
品名欄に何と書こうか迷ったのだが、やはりイノシシということで…


品名:乙事主


…街の郵便局とかだと品名をキチンと書けとか言われることがあるのだが、奄美の郵便局は普通にスルー。
こちらとしては楽しいけど、イイのかそれで(笑)


その後は島北部まで車を走らせ、某方がコガタノやヒメフチトリを採ったという池まで行き、水昆トラップを仕掛ける。
…何やら周囲は随分とリュウキュウチクも生えており、万一の可能性も考えてケブカ狙いのトラップも仕掛けておく。


そうして夜。
友人&Nさんと合流して採集を開始。
気温は高いが、天候は今までになかった『霧』。
時間になった頃、1♂が林から飛び出してくる………が、後が続かない。
奄美ケブカ飛翔後

昨夜にもまして羽音がしない。

…やはり心配していた通りだったか。

どうやら、ケブカコフキの発生ピークを過ぎてしまったらしい。
沖縄でもそうだったのだが、ケブカコフキという虫は、ある日の発生ピークを過ぎた途端に活動個体数が激減するらしい。
こんなに一度に死ぬとも考えにくいので、何らかの要因で♂が活動をやめてしまうのだろう。

いくら探しても羽音はほとんどなく、ようやく2♂を追加できただけ。
これでは埒が明かない。
森から出てくるとNさんがいたので、森の入口でしゃがんでお喋りを始めてしまう。
お互いに虫屋なので、情報交換が非常に面白い。
沖縄でのケブカの生態や、奄美の記録の話、その他の虫の話などなど…。

その間も森から♂が飛んで来ないかとライトで照らしているのだが、何の羽音もしない。


……と。
自分から3~5mぐらい先の森の中、地面から20cmぐらいの高さにあるうねった横枝が目にとまった。
ただの折れた枝と思えば枝なのだが、なんとなく気になる。

じーっと見てみると、どうも枝に模様があるような…?

そう思い始めると、もう“そう”としか見えなくなる。
っていうか、そうなんじゃないのか…?


「Nさん…あれ、ハブじゃないッスか?」


「えっ?どれどれ?」
「ホラ、あのうねった横枝なんですけど…」
懐中電灯で照らしながら説明する。
「んー…」
Nさんがノソノソと中腰で近付いていく。
そして1mぐらいの距離で確認し、

「おお、ハブだ」

…とサラリと言う。


…っていうか、ちょっと前に私そのすぐ横を中腰で歩いてたんですが。


やべえ!
森の中にハブいちゃったよ!
俺さっきまで普通に森の中歩き回ってたよ!?
やべぇぇぇぇえッ!!


Nさんがトングでハブを捕まえ、森から出てくる。
…っていうか、本ハブ捕るのにトングって…(--;
ご本人曰く、「色々試したけど、トングが一番だった」らしい。

何の変哲もない、ゴミ拾いなんかに使われる大きめのトングだ。
それでハブの首を掴み、開けた道の上まで持ってきて、網袋に入れる。
まだ70cm程度の子ハブだが、ハブはハブである。
既に毒を持っているし、凶暴な性質は変わらない。
こんなモノをトングで捕まえるとは、なんという恐ろしいコトを…

…あ、もちろん「枝で捕ったヤツが何を言ってる」というツッコミは受け付けません(爆)

それにしても、一度森の中でハブを見てしまうと、もううねった枝が全部ハブに見えてきて一気にビビリ入ってしまった。
先程まではズカズカと森に踏み込んでいたのに、今度は一歩入るだけでもビクビク&オドオド。

…まぁ、今回の奄美は悪い意味で夜の森に慣れ過ぎていたので、良い薬になったかもしれない。
ハブは本気で危険な生き物だし、決して侮って良いものではない。
こちらが先に見つけなければ、いつ咬まれるか分からないのである。
咬まれる前に恐怖を思い出せたのだから、良かったと言えば良かったのだろう。

…で、その後もしばらくケブカを探してみたものの、追加はなし。
完全に発生ピークを過ぎてしまったらしい。


…まぁ、今夜は“トングでハブを捕る”という珍百景を見られたので良しとしよう(笑)









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奄美大島採集記2012初春~目次~
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標本教室のお知らせ

めっさ急な話なんですが、4月1日に中野のむし社さんで標本教室をやらせて頂くことになりました。

開催日がエイプリルフールですが嘘じゃありません。

内容は、「チョウ・甲虫の標本作製」「クワガタムシの標本作製~基礎編~」の2本。
「チョウ&甲虫」は、昆虫標本作製の基礎中の基礎である「展翅」と「針展足」をやります。
また「クワガタ~基礎編~」は、大型種と小型種の標本の作り方。

…ちなみに、「チョウ・甲虫」編の“甲虫”と「クワガタ基礎編」の“クワガタ大型種”は内容はほぼ同じです。
「展足」という甲虫標本の一番基礎の部分ですね。

なお今回も、僭越ながら私が講師を務めさせて頂きます。


<むし社開催>
〒164-0001 東京都中野区中野2-23-1
むし社 第2営業部(509号室)

4月1日(日)
前半の部(13:00~15:30) チョウ・甲虫の標本作製:5,000円
後半の部(16:30~19:00) クワガタムシの標本作製~基礎編~:4,000円


◎チョウと甲虫の標本作製
展翅と展足という、昆虫標本作製の基礎2つです。
展翅板代分だけ価格が上がっていますが、ご自身で展翅板をお持ち頂ける方は、他の教室と同じく参加費4,000円になります。

◎クワガタムシの標本作製~基礎編~
クワガタの大型種と小型種の標本作製方法です。
標本作製というのは最初敷居が高く感じられるかもしれませんが、基本を覚えておけば実際にはそう難しくありません。


※お申込は、むし社店頭のFAX申込用紙か、日本昆虫協会のホームページからお願い致します。

日本昆虫協会 標本教室ページ



…にしても、開催まで10日も無いという事で、奄美~大宮フェアなどでバタバタしていたとはいえ、告知も何もかもギリギリ過ぎますね。
正直、反省することしきりです。
次はGWにはまた開催したいと考えていますので、今度はきちんと告知できるようにします。


さて、なんだか今回は採集記連載(?)中に色々と挟まりますが、奄美大島採集記も残すところあと2回分です。
せっかくなので、最後までマッタリとお付き合い頂ければと思います。

奄美大島採集記(6)

<2月23日>
昼間、他の候補地に仕掛けたトラップを見回ってみるが、やはりケブカは来ていない。
少し水生昆虫でも狙おうかと池や水田を回り、網を入れてみるのだが、ヒメゲンゴロウ級の小さなのは入るのだが、コガタノやヒメフチトリ等の大型種は全く網に入らない。
知人から教わった水田ポイントも行ってみたのだが、採れたという場所が半分以上土砂に埋もれてしまっていた…。
水生昆虫はどうも勘が掴めない…。

一応、別の友人に頼まれたシリケンイモリを数頭捕獲しておく。
奄美産シリケンイモリ
奄美のシリケンイモリは色彩変異が大きく、稀に黒地の方が少なくなったような赤い個体も出るらしい。
…尤も、そこまでの個体というのは何万頭に1頭のレベルだろうが。
(ちなみに、本当は両生類は素手で触るのは良くない。イモリは体表に毒があるし、両生類の方も人間の体温でもヤケドしてしまうのだそうだ)


今日から相方が合流するので一度笠利の空港まで行き、相方を拾う。
そのまま「ひさ倉」へ行き、ようやくお決まりの『ひさ倉の鶏飯』を食べる。
鶏飯
※右上に見切れているのは「鳥刺」こと鶏のお刺身。これがまた美味いのである。


…そうして夜、今夜こそ♀の追加を狙う。


……が、羽音が少ない。
妙に少ない。
昨夜までと比べ、明らかに数が激減している。

まさか発生ピークを過ぎてしまったか!?

ようやく林から飛び出してきた1♂が、近くのシダにとまって静止する。
せっかくなのでコンデジで撮影する。
奄美ケブカ♂

今回奄美で見ているケブカは活発に活動している個体ばかりで、なかなかじっとしていない。
沖縄で採集した時には、林内で静止した個体もポツポツ見られたのだが、今回は本当に飛んでいるのばかり。
なので、せっかくすぐそばで静止してくれたので、ここぞとばかりに撮影する。
コンデジのマクロ撮影(まして夜間)はなかなかピントが合わないが、それでも数枚はそこそこピントの合った写真が撮れた。

…それにしても、何度見てもこのヒゲはたまらない。

正直、自分は珍品云々よりも好みの方が最優先されるので、形態的には♂の方が好きなのである。
そもそもケブカを採ろうと思ったのも、♀が珍品だからではなく、♂が格好良かったからに他ならない。
♂が格好良いから採りたい!→♀が珍品?じゃあ頑張って一緒に狙っとこう…ぐらいの流れだった。
もしケブカの♂が普通のコガネムシみたいな形をしていたら、多分わざわざ冬に沖縄やら奄美やらまで採集に行こうとは思わなかっただろう。

…しかしまぁ♂の羽音が少ないな。
森に入ってみても、たまに飛んでくる程度。
これでは♀を探すどころではない。

2時間ぐらい掛けてようやく10♂ぐらい見つけることができたが、どうにもこの様子は発生ピークを過ぎてしまった可能性が高い…












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奄美大島採集記2012初春~目次~
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奄美大島採集記(5)

<2月22日>
とりあえず、昨日ザルを埋めた場所に行き、ほっくり返す。
出てきたのは………………オオシマセンチが1頭だけかぁ。
どうも自分の***はあんまり人気が無いらしい。
う~ん…簡単にはいかないなぁ。


さて、では本命のケブカだ。
明るいうちに、昨夜採集した場所の環境をざっと確認しておく。

奄美ケブカ環境
奄美で普通に見られる若い二次林で、これといった特徴のない林だ。
手前の道沿いにはススキが生え、林の中は小指~手首ぐらいの太さのスダジイなどの木が生えている。

こんな林なら、島中にあるはずである。
友人も日没前には合流するのでそれまで少し頭を捻ってみるが、分からない。
なぜこんな環境で発生出来る虫が、記録地点がこんなにも少ないのか。
単に奄美でケブカを採集する人が限られているから、その人がよく行く場所だけが知られているのか…?

やがて陽の高さが低くなり、薄暮の頃に友人が仕事を終えて合流。
奄美在住の虫屋Nさんも19時頃には合流するらしい。
ポイントに入ってケブカを見せつつ昨夜の状況などを話していると、友人の携帯が鳴る。
Nさんが近くまで到着したらしい。
…ちなみに、Nさんにはまだケブカが採れた事自体伝えていない。
昨夜はハブがやたら多く、その事のみ友人から伝わっており、ハブを捕る気満々で来るらしい(笑)

友人がNさんをピックアップしに車で去ったので、少し周囲を散策してみる。
すると、またしてもブブブッという“あの羽音”。
「もう飛び始めるのか!?」
まだ残照が残っているというのに。

慌てて音の方向を探ると、上からだ。
ライトを当てると、葉の隙間にオレンジの小さな反射がせわしなく動いているのが見えた。
沖縄でもそうだったが、ライトを当てると複眼がオレンジ色に反射する。

角度を変えながらライトを当てていると、やがて虫はそれに惹き付けられて降りてきた。
本日第一号のケブカコフキだ。
奄美ケブカ活動♂
生かしたままサンプル管に入れて更に探索を続けると、1~2頭の羽音が聴こえる。
上から聴こえてくるのだが、イマイチ場所が特定できない。
そうこうしているうちに辺りは暗くなり、やがてエンジン音とヘッドライトの光が近付いてきた。

「お疲れ様で~す」と挨拶を済ませ、さっそく友人に「もう飛んでる」と見せると、すかさずNさんも食い付いてくる。
「まさか!?」
「ええ、ケブカです。」
サンプル管に入れた生きた個体を見せると、Nさんも目の色が変わる。

3人がかりで必死に探すが、どうした事かパッタリと羽音が止んでしまった。
1時間ほど探しても全く気配もしないため、「とりあえず、ハブでも探しましょうか」という事で3人で道を歩き始める。
虫話をしながら歩くと、枝に付いたナナフシの姿。
“こんな時期でも成虫がいるんだなぁ~”と思ったが、なんか変だ。
よくよく見ると、交尾しているではないか。

アマミナナフシの交尾

太い方が♀、細い方が♂だ。
ナナフシの仲間は北に行くほど♂が少なくなり、単為生殖(♀だけで繁殖する)の率が高くなり、逆に奄美や沖縄など南方ではそれなりに♂の数も多くなる。
だが、野外での交尾シーンと言うのはナカナカお目に掛かれるものではない。
3人でしばし撮影会。

…それにしても、いざ探そうと思うと見つからないのはハブも同じらしい。
昨夜は延べ4頭ものハブが見つかったというのに、今夜はゼロ。
「Nさんの殺気に気付いて逃げたんですよ」なんて笑い話をしながら歩くが、本当に出て来ない。
結局一番奥まで行ったもののハブは現れず、また同じ道を歩いて戻る。

と、やがてケブカのポイント近くまで戻ってきた時、友人が「羽音!」と声を上げる。
間を置かず、そのライトの中にケブカコフキコガネの♂が躍り出る。
「いたっ!」

虫屋3人、これで目の色が変わる

周囲に散ると、森の中から複数の羽音がする。
ライトで照らしていると、すぐに数頭が森から飛び出してきた。

いる!

友人とNさんは、少し離れた場所の森の縁で探しているらしい。
ならばと昨日♀を採ったピンポイントに向かってみると、不思議なことに羽音がほとんどしない。
昨夜と発生ポイントがズレているらしい。
一体どういう事だろう?
だが、♀は♂が多い場所に見られる可能性が高いので、とりあえず♂の羽音を追って森に突入する。
ここは昨日と異なり下り傾斜だ。
飛んでいる♂を摘まみながら羽音のする方へ、する方へと森の中を進んでいくが、しかし♀の姿は見当たらない。
沖縄と異なり、四方からブンブン飛んでくるような状態ではなく、あちらこちらでポツポツと羽音が聴こえ、やがてそれが光に誘引されて近付いてくる、という感じなのである。
♂はポツポツと採れ続けるのだが、♀が見つからない。

「そっちどう~?」
気が付くと、友人が斜面の上から呼んでいる。
とりあえず一息つこうと斜面を上がり、道まで戻る。

「こっちも結構いて、Nさんと2人で(♂)○頭ぐらいだけど、そっちどう?」
「もっといっぱいいるよ。でも♀がいない…」

そう、♀がいない。
沖縄なら、これぐらい♂がいれば1~2頭ぐらい♀がいても良さそうなものだが…
無論、見落としもあるとは思うが、それでも多少は見つかっても良さそうなものなのだが…
…見つからない。

…その後も数時間ほど頑張って採集を続け、♂は昨日より多くの個体を採集できたものの、結局♀は見つからず。


…う~ん、奄美産…やはり容易ではない。












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奄美大島採集記(4)

<2月21日>
金~月まで4日間みっちり付き合ってくれた友人は有給を使い果たし、今日からは普通に仕事(…と言っても、夜にはまた合流するのだが)。

さて今日はどうしようかと思案し、とりあえず仕掛けたトラップを見て回るが、ケブカは入っていない。
今までリュウキュウチクのある場所を重点的に見て回ってきたが、全くカスりもしない。
となれば、今日は過去に記録のある場所を叩いてみよう。
…の前に、少しぐらい他の虫も狙おうかとホームセンターでシャベルとザルを買い、某峠へと車を走らせる。

道の脇に車を停めて、ちょいと森に入る。
…外から見えないぐらいの距離でいいかな?
シャベルでザルが埋まるぐらいの穴を掘り、そこにザルを埋める。

うむ、準備完了!
あとはザルを埋めた上に***して…と。

さて、これでOK。
再び車に乗り込み、本命狙いの準備に向かう。
過去にケブカが多数が採れているポイントに狙いを絞り、レンタカーで突っ込んでみる。

…正直言って、人に勧められるような道ではない。
未舗装なのは当然ながら、ガッタガタで場所によっては雨によって深く抉れ、いつスタックしてもおかしくないような道だ。
二輪駆動のレンタカーで入るなど、普通に考えたら正気の沙汰ではない。

でも入るんだけど。

一通り走り、やはりリュウキュウチクなど全く見られない事を確認する。
さてどうしたものかと思案するが、詳しいピンポイントまでは分からないので、とりあえず夜に入ってみるしかない。
友人Y氏は夜から合流するので、その前に作戦を練っておく。

この道は、この季節なら夜は絶対に人は入ってこない。
ならば、ライトトラップ&ルッキング。
車のエンジンをかけたままヘッドライト全開で車を置いて、自分たちは林道を歩いて探してみるという方法でいこう。

明るいうちに場所の目星を付け、夜を待つ。
友人と合流し、友人の車は入り口に駐め、こちらの車一台で林道奥へと入る。

“ざりざり”“キーキー”と枝葉が車の側面を擦る音が聴こえるが、キニシナイ。
たまに車の下でガツンッ!とかヤヴァイ音がするが、キニシナイ。
『まぁ自走出来れば2万円だ』と(悪い方向に)開き直って車を進める。

やがて狙い定めた場所まで辿り着き、そこで車を停めて身支度を整える。
人も来ないから当然車上荒らしも来ないだろうという事で、エンジンを掛けたままライトをハイビームにして車を置き、更に先へと向かって歩き出す。

今日は昨夜までに比べたらずいぶん暖かい。
この気温なら、沖縄なら確実に飛んでいるはずだ。

奥まで行って引き返し、戻りもゆっくりと歩いていると、左足元の藪に何やらニョロリとしたものが覗いている。

「ハブだ!」
…それも本ハブである。
暖かくなった途端に活動し始めたか。

捕まえてやろうとしたのだが、藪の中ではナカナカ手が出せず、結局逃げられてしまう。
「この時期でもガチで動いてるんだなぁ…」
なんて言いながらしばらく歩いていたら、またニョロリ。

ハブ率高ぇな、オイ。

だが、これも藪から体の一部が覗いている状態で、上手く引きずり出せず逃げられてしまう。

…と、友人が急に立ち止まる。
どうしたのかと聞いてみると、足元の藪で「今、羽音が聴こえた」と。
一瞬だったらしいのだが、かなりコガネっぽい羽音だった、と。

ケブカならば飛翔性も高く走光性も高いので、ライトを当てていればまた飛ぶ可能性が高い。
2人がかりで藪にライトを当ててみるが、しかし何の音もしない。
藪は藪のまま、静まっている。

ならばと2人がかりで草をかき分けて探すが、しかし姿はない。
5~10分程探したもののやはり見つからないので、「聴き間違いか…?」という事で先へと進む。

やがて入口近くまで戻ってくるが、結局ケブカは現れず。
友人は明日も仕事があるので、ここで別れて帰宅へ。
自分は、奥の車に向かって再び来た道を戻る。

夜の林道を一人で歩く、という時点で普通の人から考えたら狂気の沙汰だろうな…と思う。
だが、良くも悪くもこのぐらいでは動じなくなってしまった。

と、戻り道を歩きだしてややもしないうちに、道の上でビロ~ンと…
「またいたッ!」
3頭目である。
なんというハブ遭遇率の高さだろう。
夏に何度となく奄美に来たが、こんな遭遇率の高さは初めてだ

…と思ったら、後に聞いた話で、奄美在住でハブ見つけると喜んで捕まえるようなNさんが「2月に一晩3頭なんて聞いた事ない」と。
どうやら本気で異様な遭遇率らしい。

ハブはちょうど道を横断中で、今度は藪などの遮蔽物もない。

よし、捕るっ!


…はい、普通に考えたら思考回路オカシイですね。
でもキニシナイ。

すぐに手近な枝を拾い上げ、こちらの殺気にに気付いて背をS字に曲げて警戒するハブの頭をガッシと押さえ付け、後ろから首根っこを掴む。
間違っても頭を振って手に咬み付かれたりしないよう、頭のすぐ後ろで首をガッチリと押さえる。
だが、それでも口を開け、恐ろしく長いその毒牙を見せつけてくる。

ハブの顔

薄い肉鞘に包まれているが、緩く弧を描いているのがハブの牙。
相手に刺さる時にはこの鞘が剥けて牙だけが刺さるようになっている。

首を持って持ち上げてみると、だいたい体長は自分の胸高ぐらい…という事は、およそ1.2~1.3m程か。
ハブとしてはごく普通に見られるレギュラーサイズだが、そのサイズで既に牙が2cmはあり、この長さなら長靴など簡単に貫通してしまうだろう。
相変わらずシャレにならない生き物である。
だが、だからこそ奄美の森の守り神たり得るのであり、彼らがいなければ奄美の森はあっと言う間に開発されてしまっただろう。

とりあえず写真を撮りたいが、カメラは車に置いたままだ。
左手にハブ、右手に懐中電灯を持って再びテクテクと歩きだす。

普通、アオダイショウなんかを捕まえると腹筋の力であっと言う間に腕に巻き付いて締めつけてくるのだが、ハブは腹筋が弱く、頭を持って持ち上げると胴体はダラ~ンと垂れ下がったままになってしまう。
これは、無毒のヘビは獲物を仕留めるのに締め殺す必要があるので筋肉が発達するのに対し、毒ヘビは毒で獲物を仕留めるため体の筋肉があまり発達していないのだとか。
なので、毒ヘビは尾の先を持って持ち上げられてしまうと、腹筋で反り返って咬み付いたりは出来ないらしい。
…さすがに怖いからやらないけど。


ハブを持ったまま10分程歩いただろうか。
唐突に、ブブブブブッという明らかな羽音が、右側の森から聴こえた。

えっ!?

慌ててそちらにライトを向けると、オレンジ色に光る眼が林床スレスレを飛んでおり、それがあっと言う間に自分の胸元の蛍光灯に突撃してきた。
確信を持って慌てて捕まえると、案の定、間違いようのない立派な触角。

ケブカだ!
奄美ケブカ顔

慌てていると、間を置かず2頭目、3頭目が飛来する。

うわわわわっ!
こ、これはイカン!早く採集装備を整えて来ないとっ!
とりあえずその3♂は右手で何とか押さえ込み、「右手にケブカ3♂と懐中電灯・左手に本ハブ」という状態で車へ急ぐ。
車まで戻り、急ぎながらもハブの記念撮影はしっかりとして(爆)、
ハブ持ち
急いで車に乗り込み、先程の場所まで戻ると、車を停めた途端にそのヘッドライトにもケブカ♂が飛来する。

急げ急げっ!

装備を整えて、改めてポイントの前に立つ。
すると、途端に数頭の♂が蛍光灯に飛来する。
この個体数……明らかに、この森の中が発生源だ。

ポイントを観察すると、目の前は1m程の低い崖で、その上はワリと急な登り斜面。
そのうえ細い灌木が生い茂り、林内に入ったら立って歩く事は出来そうにない。
つまり、ポイントに入るということはすなわち、

一晩(というか正味2時間ぐらい)で本ハブ3頭に出遭うような場所のに、1人で、ハブに遭遇しても緊急対処しづらい中腰姿勢で突入

…とかいうキチ○イじみた行為をするという事になる。
流石に…ちょっと怖い…
だが、そうしている間にも林内からケブカ♂たちが次々と飛来してくる。
既に10頭ぐらいは採れているだろう。

ケブカと恐怖を天秤に掛け…
「そんなコトしてる暇があったらさっさと入らんかいっ」っていう声がした。



で、入った。



灌木を掴んで体を引き上げ、よっこいしょと森に入る。
途端にあちこちから聴こえてくる羽音。
しゃがんだ姿勢のままそれらを摘まみながら、周囲に目を凝らす。
…そう、これだけ♂がいるなら、“彼女”も必ず近くにいるはずなのだ。

そうして探すこと20分程。
枯れた、細い灌木の先端に止まる個体に気付いた。
「もしや!?」
灌木を回り込み、じっくりとその個体を見る。
既に予感はあったが、休んでいる♂という可能性もある。
止まって休んでいる♂の場合、触角を畳んでいることもあるので、じっくりと見る。
眼を凝らしてみる。
…だが、腹面と灌木の隙間にも、巨大な触角は見えない。

ほぼ確実に、だ。
と同時に『カメラ!』と思い浮かんだのだが、生憎デジカメは車の中だ。
オキマルのような路上ならいざ知らず、また昼間の森ならいざ知らず、夜のこの森の中では、一度この場を離れてしまったら再び見つけるのは至難の業。

撮影は諦めて捕まえる。
捕まえて、頭部をよく見る。

奄美ケブカ♀
♀だ。

「よっしゃ!」
小さくガッツポーズ。

その個体をケースに入れ、再び追加個体を探す。
活発に活動している♂を摘まみながら♀を探すが、見つからない。

と、先程まで一緒だった友人Y氏からメールが入る。
『戻る最中にまたハブ1匹見たから無茶しないよーにw』

えーと…

もう無茶しちゃってますが、何か。

とりあえず、友人にはすぐにメールでハブを採ったこととケブカが採れた事を伝える。
最初のメールを送って……ふと思った。

…あれ?
ここって、さっき友人が一瞬羽音聴いた場所のすぐ近くじゃね?


思い当たってみれば間違いない。
先程、友人と2人で歩いた際に、友人が羽音を聴いたのはこの10m先ぐらいだ。

…となると、あの羽音というのは本当にケブカの羽音だった可能性が非常に高い。
友人は、今期の♂の第一発見者になる寸前だったのである。
そんなメールのやりとりをして、再び探索開始。

♂はポツポツと飛んでいるものの、沖縄に比べるとやはり個体数も少ない。
♀もそれに比して少ないとなると、探すのはかなり大変だ。
…そうこうするうち、次第に♂の羽音が減ってくる。
どうにも活動時間のピークを過ぎてしまったらしい。
それでもしばらく探してみたが、やがて林内で羽音がちっとも聴こえなくなってしまったため、斜面を降りて1mの崖を飛び降りて、道に戻る。
少し周囲を歩いてみたが、1~2頭の♂が蛍光灯に飛来したぐらいで、その後は見られなくなってしまったので、車に戻った。


…さて、この大発見をどうしたものだろう。
いきなり報告に上げても良いのだが、それでもし他の採集者も来てしまったりするとポイントがカチ合ってしまう。
それは嬉しくない。
ならば、今少し発表は考えておこう。

今夜の車中泊場所まで車を走らせながら、そんな事を考えていた。










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日を追って順に読んで頂く方は、どうぞ。
奄美大島採集記2012初春~目次~
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埼玉インセクトフェスティバルに行ってきました

タイトル長いですがその名の通り、3月10日&11日の2日間、埼玉インセクトフェスティバルに行ってきました。
10日(土)は出展、11日(日)はお客として。


10日(土)は生き虫中心の日だったのですが、出店者の約半分は標本。
しかもチョウなどの標本も多く、これでは生き虫目当てに来たお客さんは「あれれれれ?」でしょうし、標本を出品している側は卓代回収も難しかったのでは…などと余計な心配までしてしまったり。
ちなみに虫けら屋は宣言通り(?)ホノホシ氏(→国産クワガタの(ほの暗い)穴+)のスペースを半卓貸してもらい、展足実演をしておりました。
当ブログをご覧頂いている方も何人かお立ち寄り頂き、直接お話しする事が出来て楽しかったです。
この場を借りてお礼申し上げます。

また、来場者の方でも標本作製に興味を示して下さる方や、以前に開催した標本教室に来て頂いた方などもチラホラ。
こういった所から少しでも虫屋の裾野が少しでも広がればいいな、と。

夜はtwitterの虫クラスタのオフ会(と言う名の飲み会)に参加させて頂き(自身はtwitterやっていないのですが(^^;))、濃い方々とお話。
セミ屋、カメムシ屋、マメゾウムシ研究者、蛾屋、カミキリ屋、昆虫料理研究家、ゴキブリ屋…等々、様々なジャンルの虫屋さんや研究者が集まり、ワイワイガヤガヤとカオスな集まりでした(笑)
お店にこっそりと昆虫料理の差し入れが回ってきたりして、
お決まりのイナゴ
昆虫料理イナゴ

…とか、セミの幼虫の素揚げ
昆虫料理セミの幼虫

…とか出てきたりしました。
普通の人なら卒倒しそうな料理ですが、そこは虫屋。
「イナゴにトノサマバッタが混じってる!」だの「この幼虫は何ゼミの幼虫だ?」だの、虫ワールド全開で試食していました。



明けて11日(日)は標本中心の日。
以前勤めていた「昆虫文献 六本脚」という会社の上司であったKさんが古書で出店するという事で、そのお手伝いを少ししつつ、自由に会場を回っていました。
ちなみにKさんは昆虫の文献を中心に古書店を独立開業された方で、今回もその古書の出店でした((→やままゆ書房)。

…まぁ、会場を回ると言っても自分は基本的に標本を買わないので、標本展示会を見て回っているようなモノですが。
会場を回っては友人出展スペースの前でお喋りして、しばらくまた回っては友人スペースで…という繰り返し。

朝9時(お手伝いで先行入場)から買う気もナシにずっと会場フラフラしていると、さすがに午後3時頃には飽きてきますね…(^^;

夜は知人のMさん、Tさんと3人で飲み。
虫話をしつつ夜9時過ぎまで飲んで、のんびりと帰ってきました。



…今回は、そんな埼玉インセクトフェスティバル。

奄美大島採集記(3)

<2月20日>
奄美に入って既に4日目になるが、ケブカの♀どころか、♂の姿さえ見られていない。
今日も中部方面を案内してもらう。

移動で湯湾岳周辺を走っていたところ、運転していた友人Y氏が「ウサギ見つけちった…」と憂鬱そうな声を漏らす。
見ると、前方の路上に赤黒い物が落ちている。

(※グロ注意)



…。




…………。






クロウサギの最期

脚だけ体毛が残っているので一瞬コミカルにも見えてしまうが、事実は『野良ネコに喰われたアマミノクロウサギ』だ。
近くに猫と思われる糞も落ちていたため、マングースではなく猫だろう、との事。

問題なのは、これが天然記念物かどうかではなく、飼えなくなって捨てられた猫が野生動物を餌にしてしまうという事だろう。
猫だって生きるために必死で、餌になる動物がいれば襲って食べる。
それは自然の摂理。
鳥獣にとって、相手が天然記念物かどうかなど全く関係ない。
悪いのは猫ではなく、最後まで飼えもしないのに猫を飼い、無責任に捨てた人間。
そして、捨てた当人は、その猫がこういう事をしているとは知らずにいるのだろう。

…書いてて、自分で“なに偉そうに語ってんだ”って気にもなるんだが、現状は現状として書いておく。


…ため息を残してその場を後にし、マテリヤの滝で一休み。
マテリヤの滝

夏には水辺でリュウキュウハグロトンボがキラキラと舞い、ツマベニチョウなどがフワリと飛んでいく場所なのだが、冬である今の時期は虫の影もない。
撮影だけして再び移動する。

…って、道がなくなっとるがな。

土砂崩れ(2)

崩れ落ちたその向こうに、本来続いていた道の先が見えている。

これが現状なのだ。
2年前の、人命が多く失われた集中豪雨だけが有名だが、実はその後も同等クラスの豪雨が2回起きており、「100年に一度の豪雨」が2年のうちに3回も起きてしまっているのである。
その爪跡は大きく、未だに各所で崩落したまま復旧されていない林道が見られる。


迂回しながら島の北側に出て県道79号線を走るうち、やがて海際ではあるものの今までで一番良さそうな場所に辿り着く。
リュウキュウチクがモサモサと生い茂り、“沖縄なら100%ケブカがいる”と断言しても良さそうな場所だ。

ツツジ山

先の開けた場所まで行くとタイワンヤマツツジなるツツジが生えており、案内看板まで立っている。
…が、その案内看板に書かれた文章に少々違和感アリ。

『タイワンヤマツツジは学術的にもたいへんねうちのあるもので~(以下略)』

…値打ち!?
いや、学術的な話で金銭価値を持ち出さないでよ…
そりゃ値打ちはあるかもしれないけど、学術は金銭じゃないでしょうよ。

…とまぁ、それはともかく。
リュウキュウチクという条件ではこれ以上ない場所なので、“もうこれは今夜はここでやるしかないでしょ!”とワクワクしながら夜を待つ。

日も没し、辺りがすっかり闇に包まれた頃、探索を開始する。
…ツツジのある方はリュウキュウチクも低く、ツツジのない林内の方がリュウキュウチクの生育も良いのでそちらに入る。

耳を澄まし、コガネムシの羽音がしないか注意しながらゆっくりと進んでいく。
時折立ち止まっては、周囲に耳を澄ます。

だが、聴こえるのは風の音と葉擦れの音、たまに通る車の音ぐらい。
枝に緑色の長いものが付いていたのでよく見ると、久しぶりのキノボリトカゲ。

就寝キノボリ

キノボリトカゲは、昼間は活発に木の幹を走り回っているが、夜は細枝などにピッタリと体をくっ付けて寝る。
枝先などで寝るのは、外敵が木を登ってきた時に振動ですぐに気付いて逃げられるから、らしいが…

…寝てる個体って、つっついても反応鈍いんだよね。

あれじゃ仮に外敵に気付いてもそのまま喰われちゃうんじゃなかろうか。
少しの間遊び相手になってもらい、「起こしちゃってスマンね」とまた木に付けておく。

深夜にも再度回ってみたものの、やはりケブカは羽音さえ聴こえず。
沖縄と違い、奄美のケブカは一筋縄ではいかないようだ…。













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奄美大島採集記(2)

雑誌での採集記は、それはそれで執筆するとして、やはりブログはブログで書き進めていきましょう。
…というワケで、奄美採集記再開です。


<2月18日・19日>
とりあえず、寒い。
奄美大島という亜熱帯の島に来ているハズなのに、夜は車の暖房をつけないと寒い。
…とは言え、沖縄北部で採集した際は、これぐらいの気温ならケブカは普通に飛んでいたので、発生さえしていれば採れない事はないハズだ。

車中泊というのは、初日が一番体にクる感じがする。
3日目以降になると体が慣れてくるのか、わりと平気になるのだが…。
メリメリと体を伸ばしてから再び車に乗り込み、待ち合わせ場所である「平田町のエブリワン」に向かう。

平田町エブリワン

奄美大島は各所にコンビニがあり、かなり便利な島だ。
大きな町には必ずあるし、集落でも見掛けたりする。
友人Y氏と合流して買い出しを済ませ、2日目は中部方面を案内してもらう。

…それにしても、ここ2年の集中豪雨の爪後は大きく、各所で生々しい崩落の跡が見られる。
土砂崩れ

龍郷の役場裏も派手に崩れており、一時は完全に龍郷が孤立していたという。
また、主線となる道はほとんど復旧されているが、山中の林道などは人員的にも予算的にもまだまだ手が回らない場所が多く、かつての有名採集地である本茶~長雲線なども支線は壊滅状態らしい。

さてケブカ探索だが、藪を入ったかなり奥にリュウキュウチクの小群落。
そこそこまとまった量のリュウキュウチクが生えているので、“いない”とは言い切れないが、やはりどうにも雰囲気が違う。
そして、夏ならこうして歩くだけでかなりの虫がいるのだが、季節がら虫の姿がほとんどない。
奄美に来てからチョウを見たのは2~3回…?

途中、林道脇のマスにリュウキュウイノシシ成体の頭骨を発見。
知人に最近骨にハマっている先輩がいるので、とりあえず写メしておく。
イノシシ頭骨

夜は住用の山中で、過去にケブカが飛来した事があるという場所で車のヘッドライトでライトトラップをしてみるが……やはりケブカは現れず。


翌日は笠利方面。
3日目にしてようやくの晴れ。

う~ん…海がキレイだなぁ…
笠利の海

…って違う!!!!

俺は虫採りに来てるんだっ!

少し入ると道脇にリュウキュウチクが結構見られ、雰囲気は悪くない。
沖縄なら、いておかしくない雰囲気。
…だが、かなり海が近い。
標高も低いかと思ったが、地形図で見ると標高的には問題なさそうだ。
しかし、沖縄で採集したのは山中で、海からはかなり遠い内陸部。
しかしここはちょっと走れば海まで出てしまう。

夜は、過去に記録のある某峠をライトをつけてゆっくりと流す作戦をしてみたものの、やはりケブカは現れず。
…というか、明るいうちに一度走ってみたが、この峠にリュウキュウチクなんて無いんだが…。
どういうコトだろう…

そしてこれだけ虫の写真が無い採集記もナカナカないだろうな…
いや、それだけ虫がいないんです。
ハナアブなんかは多少飛んでいるものの、ロクなサイズの虫を見ないのですよ…(汗)
車でライトトラップをしていても、「おっ!蛾が来た!」とか声を出してしまうレベルなんです…。










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アゴ太エゾミヤマ

アゴ太エゾミヤマ

奄美大島採集記を書き始めたばかりなんですが、ちょっと閑話休題。
今回の奄美大島産ケブカ♀を採集したことで、「月刊むし」「鰓角通信」の2誌から報文の執筆依頼が…(^^;
「月刊むし」は昆虫雑誌の中では最も名前の知られている雑誌ですし、「鰓角通信(さいかくつうしん)」はコガネムシ研究会というコガネ屋でこの名前を知らなかったら“モグリ”と言われるぐらいのガチの専門研究会の和文誌です。

正直…嬉しさ半分・慄き半分。

まだ短報すら書いた事がない(ネタはいくつか抱えてるんですが)のに、いきなり報文とな…。

で、そうなってくると“ブログの採集記どうしよう…”とかいう話になってくるワケです。
一応、主眼を置く場所を変えてブログの方も採集記をちゃんと続けたいな、と考えてはいますが、まだ少々悩み中。


そんなこんなで勝手ながらちょっと閑話休題して、息抜きに今回は過去に採ったエゾミヤマのお話。
写真で見て分かる通り、ミヤマクワガタとしては大アゴがごんぶと
エゾ型は概して大アゴが太い個体が出やすいが、それにしたってこの個体は強烈だ。
採集した時に、思わず「なんじゃこりゃ!?」と唸ってしまったほど。

ミヤマクワガタは大アゴが太めの方が格好良いのだが、ここまでくると格好良いを通り越して“違和感”である。
サイズ的には60mm強と大したことないサイズなのだが、大アゴのインパクトは相当なもので、今でも標本箱の中で“ちょっと特殊な個体”として鎮座している。
プロフィール

虫けら屋

Author:虫けら屋
もっぱら採集中心の虫屋さん。当初は東京で発生が確認されたが、後に埼玉県に移入、現在は千葉県での生息が確認されている。
肉眼で見て楽しめるぐらい大きなミーハー虫が好き。

Blog内の写真・文章等については、少しの引用的転用ぐらいならOK…と思っていたのですが、なんか最近フリー素材か何かと勘違いされているフシがあるので、今後は勝手に使わないでね。

※お問い合わせを頂く際はEメールにてお願い致します(採集ポイント等についてはお答えできかねますが…)。なお、採集遠征等により、お返事まで数日以上掛かる場合もございますので予めご了承下さい。
   ↓↓↓
akepon6464@yahoo.co.jp

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