奄美大島採集記2012夏(08)~中日その2~

7月7日(土)

某所の池にゲンゴロウ狙いのトラップを設置する。
今回、ウェイダー(胴長靴)やタモ網は無い…というか、そもそもにウェイダーは持ってない。
んで、今回は特に水生昆虫までは考えていなかったので、それ用の準備は何もしてこなかったのだ。
だが、長い日程の中でやってみたくなった。
そこで、2リットルのペットボトルを漏斗部分で切って逆向きに取り付け、紐を付けた簡単なトラップを作った。

ゲンゴロウトラップ
餌はサンマの切り身が良く使われるが、ここ奄美ではサンマは逆に高いので、スーパーの鮮魚コーナーで安い部位を探して購入。

…どうでも良いが、鮮魚コーナーでBGMで「崖の上のポニョ」を流すのはどうなのよ?
魚系の歌で明るくて有名なモノ、ということでまぁ気持ちは分からなくはないが、それにしたって…

♪真ん丸お腹の元気な子~♪ってのは、
まな板の上に置いた感想ですか??

「おう!よく跳ねて活きがイイじゃねぇかっ!」的な。



さて、昨日仕込んだバナナトラップを早速設置していくが、スジブト集会所のトラップも新しい物に替えてみる。
そこで、古い穴だらけのトラップを外し、分解してみる。
…まぁ、5~6頭はトラップの中に住み着いているだろうとは思っていたのだが、分解してみると次から次へとスジブトが出てくる。

バナナトラップ分解
…小さい個体ばかりではあったが、結局ひとつのバナナトラップの中に、21頭ものスジブトヒラタが住み着いていた。
流石にビックリである。

…夜は今までで一番奮わず。
ノコギリもスジブトも大きいのが入らず。
ゲンゴロウトラップはトビイロゲンが十数頭入ったのみで、黄色い縁取りがあるようなのは1頭も入らず。
場所があまり良くないと判断し、トラップは撤去。

唯一ビックリさせられたのは、巨大なアマミナナフシの♀。
アマミナナフシ♀

う~ん…ここまでデカイと、もはや日本のナナフシに見えませんな。


7月8日(日)

朝から雨。
梅雨明けとは言え、今までがずっと好天続きだった事の方が幸運だったと言える。
…正直、今回は長期なので滞在中に台風の一発ぐらい来るのを覚悟をしていた。

午前中は採集した虫の整理をしながらダラダラと過ごし、休養。
Y氏が宿に遊びに来たので、これまでの成果を見せる。
ついでに冷蔵庫の中も見せる。

冷蔵庫の中身
虫だらけ…っていうか、虫しか入ってません。

夕方になり、友人と別れてトラップ巡回に出掛ける。
途中で本日分のゲンゴロウトラップ用の魚も購入し…

…た辺りで、雨がモノスゴイ事に。

バラバラではなく、バチバチという音を立ててフロントガラスに天井に所構わず叩き付ける雨粒。
もう車の天井が凹むんじゃないかってぐらいの音である。
ワイパーをフルに動かしても、5m前を走る車が霞むレベル。

流石にこの雨ではトラップ巡回をする気にはなれない。
しばらく車を止めて雨脚が弱まるのを待ってみたが、しかしながら雨は一向に弱まらず。

結局、本日は諦めて宿に戻った








…のはいいんだけど、車から宿の玄関までの間さえ歩くのを躊躇われる程の豪雨。
早く宿に入った方が体を休められるのは分かっているのだが、その僅かな距離でパンツまでガッツリ濡れる自信があるようなとてつもない雨なのである。

…諦めて、宿の目の前で、雨が弱まるまで車の中で時間を潰すことに。




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奄美大島採集記2012夏~目次~
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奄美大島採集記2012夏(07)~本来ならハイライトになり得るはずの中日~

7月4日(水)

朝から新たなポイントにトラップを入れに行く。
以前、お盆時に何年も連続で奄美に通っていた頃には毎年トラップを入れて採集の拠点にしていた場所だ。
試しに20個程を設置する。

午後に時間ができたので、またフェリベニの御神木に行ってみると、1♂2♀。
うち1♀は黒紋がやや発達した個体(写真左)。

フェリベニ黒紋&ヒシバッタ
フェリベニは黒紋が比較的安定しているので、この程度の変異でも案外珍しいかもしれない。
そしてもうひとつ、非常に面白い形のヒシバッタ(写真右)。
友人曰くアマミヒラタヒシバッタという種だそうで、胸部背面(上側)が圧して潰したように真っ平らになっている。

…更に一休みしていたら、御神木の陰からフェリベニ1ペアが出てきて合計2♂3♀の大成果

夜はトラップを設置したばかりのポイントを回ってみるが、小さなアマミノコやスジブトがいくつか来ているだけで非常に芳しくない。
悩んだ末、ミカン畑に突入。

昼間は透明で非常に見つけづらいミカンの樹液なのだが、夜間はややアメ色がかって反射するので返って見つけやすかったりする。
しかし、樹液はあってもクワガタが何も付いていない場合が多く、樹液の供給過多になっている。
クワガタの数がかなり少ないらしい。
かと言って自分の他に採集者が入っているふうでもない(真新しいトラップが掛かっていない)ので、どうも発生自体が悪いのだろう。

それでもミカンの樹液は大型個体が採れる確率が高いので、膝上以上の草丈のミカン畑をハブの恐怖に怯えながら頑張って探す。
さほど広大な畑というワケではないのだが、1本ずつ丁寧に見て行くのでかなり時間が掛かる。
そうして2時間程歩いた頃、巨大な個体が目に飛び込んでくる。
今日見た個体の中では飛び抜けて大きい。

アマミノコ76mm
76mm。
数こそ少なかったものの、このサイズが出れば満足だ。
…というか、普通ならこれぐらいが最大で採集記のクライマックスになるような場面のハズで、
「で、でけぇ!うおぉぉぉお!!」とか夜のミカン畑で大絶叫……ってな感じになるハズなんだけど……ねぇ。



7月5日(木)

少し疲れが溜まってきたか?
午前中はダラダラして体を休め、午後からフェリベニの木を見に行くが、本日はゼロ。
しばし待ってみるも飛来せず。
…まぁ、そんな日もあるでしょう。
正直、成果ナシにこの森を戻るのはシンドいのだが、採れなかったモノは仕方がない。

夜は再び昨夜と同じポイントを回るが、これがサッパリ。
どうもこの辺りはポイントとしての寿命が尽きた感がある。
この周辺はポイントとして当たりハズレを10年サイクルぐらいで繰り返しているようで、またしばらく経てばクワガタも増えるのだろうが、少なくとも数年はあまり成果は望めないかもしれないな。

仕方ないので、少々遠いが“いつものポイント”の方へ車を走らせる。
こちらのバナナトラップは既に終わり掛けているが、大型ノコがいくつか入り、スジブト集会所も好調。
更に特大ノコのミカン畑に行くと、数もサイズも奮わない中、1頭だけ76mmの赤い特大個体が入る。

赤ノコ76mm
これがムチャクチャ格好良い個体で、フォルムだけなら今回の採集でピカイチである。
ガッシリとしていながらもスラリと美しい体型、奄美の基亜種らしい長く伸びた大アゴは力強く湾曲し、スイギュウと呼ぶに相応しい。
その上、奄美では少ない“赤ノコ”と呼ばれる赤褐色タイプだ。

か…かっこええ…!!

こいつは夜のミカン畑で一人、思わず惚れ惚れと眺めてしまった。
さてスジブト集会所も好調で、今日も57~58mm級が入る。



7月6日(金)

昼間は名瀬の市街地でバナナを買い込み、それを車に積んだままポイントへ向かい、追加のバナナトラップを仕込む。

バナナトラップ作成中

流石のスジブト集会所も、デカイのを抜き続けてきたせいか、ついにサイズが落ちてきた。
最大で55mm。
…まぁ55mmでも十分に大型(本土ノコギリに換算するなら66mmぐらい?)ではあるのだが、連日のフィーバーを経験してしまうと55mmがあまり大きく見えなくなってしまうから困ったものである。

スジブトは梅雨明けが発生ピークで、この頃が数もサイズも最も良いようだ。
お盆時に採集すると、そこそこ採れはするものの数はずっと少なく、サイズも小さいのばかり。
30~40mm台ばかりで、50mmを超えたら「よっしゃ!」と言ってしまうほど。
その頃だと、55mmなんて「でけぇーッ!」って大喜びしてしまうサイズなのである。
今回の梅雨明け採集で、随分と自分の中の“サイズ感覚”が変わってしまった。




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第63回 インセクトフェア(大手町)

来月 9月23日(日)、大手町サンケイプラザにて毎年恒例のインセクトフェアが開催されます。
毎年この日に、サンケイプラザの3F・4Fの2フロアを貸し切って開催されている、世界トップクラスの規模を誇る有名な昆虫フェア(即売会)です。



埼玉インセクトフェスティバル(→記事)の際にも書いたのですが、知らない方のために再度簡単に説明しますと、
多くの個人や業者などが1~数卓ずつのスペースを借りて出店する昆虫市です。
お客さんは600円(埼玉は500円なので入場料が少し違います)の入場料を支払って中に入り、あーだこーだと言いながら会場を回り、気に行ったモノ(虫や用品)があったらその場で購入。
値段は各出店者が自由に決められるため、市場価格よりかなり安く手に入る事もあります。
散財しやすい人は、最初に予算を決めておいた方が良いかもしれませんね。
その一方で、値段との折り合いで迷いに迷って購入したら別の人の所でもっと安く売っていた、なんて事もあったりします。
でも「もっと安いのがあるかも」と会場を回っているうちに最初のが売り切れてしまう事もありますので、なかなか難しい。
その辺を含めて「市」を楽しみましょう。
フェアはネットオークション等とは異なり実際に虫を見て選べますし、購入したら意外なオマケを付けてくれることもあります(必ずではないので、期待はしないように)。
販売主とも直接話せますので、飼育や標本作製のテクニックなんかを聞いたり、仲良くなれば「まとめて買うから少し値引いて」なんて交渉をしたりもできます(…値引いてくれるかどうかは相手次第ですが(笑))。
また販売者や来客の中には業界で有名な方も結構いますので、そういった方とお近付きになるチャンスでもあります。

ちなみに、この大手町インセクトフェアは毎年9月23日に開催されています。
例年だと秋分の日がこの日付に固定だったので「大手町フェアは9/23の秋分の日ですよ」と紹介できたのですが、今年から秋分の日がズレてしまいました。
ですのでお間違いのないように。
大手町インセクトフェアは9月23日(日) です。


大手町サンケイプラザ(→地図
〒100-0004
東京都千代田区大手町1-7-2



…で。
埼玉の方は知人ブースのスペースを借りて少しだけ出店していましたが、大手町は私はお客としてフラフラしているだけの予定です。
ただ、今回の奄美の成果を知人にジマ…もとい成果報告をするため、いくつかタトウ(→タトウ)のまま持って行くつもり。
当日はブース(主に国産昆虫)を覗いていたり、知人と話していたりと風来の身とは思いますが、タイミングが良ければ知り合いのブースでタトウを拡げて鼻高々になっているかもしれません(爆)

奄美大島採集記2012夏(06)~スジブトの謎の生態~

7月3日(火)

朝起きて、真っ先に昨日の特大アマミノコを計測し直す。

アマミノコ79mm
…やっぱり79mmある。
間違いじゃなかった。

夢だけど、夢じゃなかった!
…いや、そもそもに 夢じゃないですから!!

なんかもう異様なテンションである。
何度もノギスを当ててはニヤニヤニヤニヤ。
Maxで何mm取れる(最大値が何mmと計れるか)かなぁ…とか色々弄くり回す。
…無理やりに計れば80mm近い数値になるが、それは流石に格好悪いので、まぁ普通に計って79mmOVERというところだろう。

………普通に?


さて、いくら異様に嬉しくても、限られた滞在日程を無駄には出来ない。
鼻歌混じりに昼間の巡回。
昨夜のミカン畑にバナナトラップをいくつか設置。
条件の良い樹液があるとバナナトラップは効きにくいというが、本当だろうか。

さていつものポイントのトラップ巡回をしに行くと、いきなり真っ昼間からまた大きなスジブトヒラタが付いている。

スジブト61mm
61mm。

…勘違いしちゃいけません、普通に考えて61mmは相当デカイんです。
普通は61mmがひとつ採れたら「今回の遠征は成功」って言っていいレベルなんです。
先日がオカシイんです。

…と、それにしても、ここまで3つの60mmOVERが採れているワケだが、驚くべき事に全てが昼間である。
この不思議な事実を元に、

スジブトの特大は昼行性である!

…とか珍説を唱えてみる。







……そしたら夜に同じ1号トラップで62mmが採れちゃった

スジブト62mm
しかもアゴの太い、非常に格好良い個体だ。

…いや、ですから、普通に考えて62mmはめっさデカイんです。
62mmなんてのは、スジブトの多いポイントにトラップ大量に投入してやっと採れるかどうかの特大級なんです。
先日がオカシイんです。


さてさて、路上に出てきたニョロリン(本ハブ)の写真なんぞ撮りつつ昨日特大アマミノコを採集したミカン畑に期待度Maxで行ってみる。
路上のハブ

…が、これがちっともいない。
昨日採らなかったチビぐらいしか付いていない。
ついでに、バナナトラップにはチビすら付いていない。

79mmとはいかずとも、76mmぐらいのが新たに来てるんじゃないかと期待していたのだが…

必死に探し回り、畑の一番端にある小さめの木に、複数頭のスジブトヒラタが付いているのを見つけた。
うち1頭が明らかにまたしても特大の気配がするので、まずはコンデジで写真を一枚。

ミカン畑のスジブト

捕まえてみれば、これまた62~63mm


…。

オカシイから。

採れ方オカシイから。

何この『スジブトヒラタの60mmOVERって、普通に採れるよ』みたいな雰囲気 は!?

今回、スジブトヒラタは“60mmOVERが採れたら超嬉しい”ぐらいの目標だったハズだよ!?


…今回の採集、この異様な“ツキ”は何なんだろうか…?




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丹沢日帰り採集

神がかり的な「奄美大島採集記2012夏」を好評(?)連載中ではありますが、長い採集記なのであまりそればかりが続くのも食傷気味になるかな、と思いまして(…むしろ焦らし?(笑))。
あとまぁ、“ネタは鮮度が良いうちに”というコトで、先週金曜日に行ってきた日帰り採集のお話を。
今回の奄美のような採集が虫けら屋の全てではなく、こういう近場の採集もやってるんですよ、という意味でも。



しばし前に中野のむし社で知り合った新人虫屋O君をヒゲコガネ採集に連れて行くことになり、「どうせ行くなら早くから動いて他の虫も採る?」と聞いたら、是非そうしたい、と。
ならばと、今シーズンはもう行けないかと思っていた丹沢まで足を延ばす事にする。
更に、セミ屋の友人を連れて行きたいというので「いいよ」と。
一応、案内が目的ではあるが、自分としても狙いの虫はいくつかあるのでその意味でも楽しみである。


8月10日(金)

朝、自宅を車で出発し、途中で2人を拾いつつ、そのまま一路丹沢へ。

…ちなみに虫けら屋は個人で採集に行く際は基本的に夜出。
夜に自宅を出発し、一気に現地まで行ってそこで夜が明けるまで仮眠、というのが基本パターン。
その方が道も空いているので移動時間も短いし、現地で朝から採集で来て時間を有効に使える。
ただ、今回は学生の案内というコトで、朝出発とした。

まずは材場に行くと、予想通りルリボシカミキリ達がお出迎え。
丹沢ルリボシカミキリ
材にペタペタと付いており、30mmを超える大型個体もいくつか見つかった。

ルリボシカミキリはかつてはとても憧れていた虫で、初めて見つけた時は手が震えた。
……なんとまぁ、それが韮崎駅のホームだったんだけど(笑)
流石に今となっては震えるような事はないが、それでも見つけると嬉しくなる虫のひとつである。
空色の体に軽く筆を置いたような黒い紋はとても日本的で素敵だと思う。

ルリボシがそこそこの数が採れたので、続いてアカアシクワガタの御神木ヤナギへ。
…と、その途中にあったモミ材をチェックしていたら、横にいたセミ屋くんが「あっ!」と声を上げてアオタマムシを採集。

…私、それを探していたんです…

で、彼が「あげます」と言ってくれるので、遠慮なく。
どうもどうも…(^^;

丹沢アオタマムシ

光沢が非常に強く、美しいタマムシだ。
有名なヤマトタマムシより2回りぐらい小ぶりだが、美しさではこちらの方が上だと思う。

さてヤナギに着いて、2人には木の下側で回収係をしてもらって、自分は木を蹴飛ばす係。
沢沿いの斜面に生えたヤナギなので一人ではナカナカ大変だが、回収係がいれば楽に採れる。

ヤナギの木に蹴りを入れ、バラバラバラッ!と落ちてきた中に、ひときわ大きな個体。

丹沢アカアシクワガタ
これが53mmあるかどうかという特大サイズのアカアシクワガタ
関東では50mmを超えるアカアシを採集するのがかなり難しく、53mmは特大級だ。
その他40~47mmぐらいのが6~7頭(…関東以北のアカアシは、45mmあれば十分に大型だ)。
中~小型や♀を合わせると、全部で40頭ぐらい落ちてきただろうか。

丹沢アカアシいっぱい
持ち帰り分を抜き、残りの数十頭は再びヤナギの木の根元に戻す。

更に戻りで再度モミ材を見たら、O君がアオタマムシ1♀を見つける。
悔しがって必死に探したら、自分も1♀見つける。
やった!

ヒゲコガネを探しに行く前に少し寄り道してムネアカセンチを探してみるが、残念ながら今日は見つからず。
暗くなったので急いでヒゲコガネの来るポイントへ行くと、

「灯火が点いてねえ!?」

…まさかの致命傷。
仕方ナシに近くの別の灯火を念入りに探し、完品の死骸1♂と、その後生きた1♂を見つけてなんとか肩の荷を下ろす。

帰りが少々遅くなってしまったのは失敗だったが、採集としては2人ともかなり楽しんでもらえたようで、こちらとしても良かった良かった。
…ただ、2人とも体力があまりに心もとないので、少々鍛える必要がありそう。
このままだとマルバネはおろか南西諸島の採集は難しいし、軽く山登って…の採集も厳しい。
数少ない虫屋の若芽なので、頑張って大きく育って下さい(笑)

…ま、今回は自分的にも、アカアシやらアオタマやら良い虫が採れたんで、その意味でも成功だったかな。

奄美大島採集記2012夏(05)~ミカン畑の奇跡~

7月2日(月)

今日も朝から真夏の日差し。
熱せられて灼熱のサウナとなった車はすぐには乗り込めない。
ドアを開けた瞬間に車内から熱気が噴き出してくるので、エンジンを掛けて冷房全開にして窓も全開。
…ちなみに、ハンドルが熱過ぎて触れない時は、濡れタオルで拭いてやると気化熱で短時間で冷ます事ができるのでオススメ。

さて、ようやく冷めた車に乗り込み、昨日案内してもらったフェリベニのポイントに向かう。

…正直、昨日は完全にグロッキーだったので一人で入って大丈夫か?という心配もあるのだが、今日は午前中からゆっくりと休憩をとりながら進むことにする。
疲れたら十二分に休憩を取れるだけの時間を確保して向かおうというワケだ。
誰かといる時と違い、自分一人では何かあったら助けも呼べない。
全て自己責任なのである。

森に入り、自分のペースで歩く。
40分程で最初の木に辿り着くが、赤い姿はない。
よく見ようと近付こうとした瞬間、木の根元に不自然な“うねり”があるのが目に入った。

瞬間に理解する。

ヒメハブだ。

「おっとォ!」
80cmぐらいはありそうな立派なヒメハブが鎮座していた。
本ハブに比べるとずっと太短く、本土のマムシより更に太短い。ツチノコを彷彿とさせるヘビだ。
本ハブと比べれば毒性も弱く気性も大人しいが、それでも毒ヘビは毒ヘビだ。
ロッドで引っ掛けて追っ払い、改めて木をチェック。

「いない…か。」

更に45分ぐらい森の中を進み、2本目の木へ。
時間はまだ午前11時、フェリベニが飛来するには少々早い。
空を見上げれば、奄美の思わせるヒカゲヘゴが丸く葉を広げる。

奄美の森の天井

…結局、一日粘ってフェリベニ1♀を得て、ついでにアオカナヘビも見つける。

アオカナヘビ

本土で見るニホンカナヘビと比べてスリムで、全身鮮やかな黄緑色の美しいトカゲだ。
持って帰りたい気もするが、飼育はあまり得意ではない(ズボラなので)。そっとリリースする。

帰りも自分のペースでゆっくりゆっくりと登る。
10分歩いては立ち止まり、呼吸を整えてまたゆっくり歩く。30~40分歩いたら座って休憩。
絶対に無理をしない
そうして、時間は掛かったものの無事に森から生還。
…体が慣れたというのもあるとは思うが、どうも昨日のグロッキーはY氏のペースに無理に付いていこうとしていたのが原因のひとつだったらしい。
今回は、そこまで死にそうにはならずに脱出できた。
“自分のペースで歩く”は非常に重要である。


…夜、いつものポイントはボチボチ。
巨大な個体は入らないものの70mmOVERのノコは数頭入り、例のスジブト集会所も相変わらず大盛況。
本日も59mmを筆頭に大型が複数頭入る。
トラップを2巡して一通りクワガタを採集し、さて宿に戻ろうかと走り出したのだが、

ふと、ミカンの樹液に付くアマミノコギリの写真を撮っておこうと思った。

…となると、先日トラップを撤去したポイントのミカン畑が思い浮かんだ。
あそこは樹液はかなり出ていたし、写真を撮るだけなら特大でなくてもいい。
大歯型ぐらいはいるからそれで十分だ、とハンドルを切った。

細い道に車を止めて、畑に入る。
真っ正面の木にいきなりノコが付いていたが、中歯型。
「どうせなら大歯がいいよなぁ…」と呟きながら順番に木を見て行くと、いきなり樹液に付く大型個体が目に飛び込んできた。

ミカンの樹液とアマミノコ

一目見て70mmは確実に超しているのが分かった。
「なんだ、デカイのいるやん!」
ちょっと驚きつつも、コンデジでパシャリと1ショット。
画像を確認して、それからそのノコを掴…んだら、違和感を感じた。

…おかしい。

どうにも
ノコギリの太さじゃない。

ベリベリッとノコギリを木から剥がし、まじまじと良く見る。
…暗いせいで目測が効かなかったが、この太さは75mmを超している可能性がある。
「ヤバイな、これは。ちゃんと計測しないとだな。」
独り言を呟き、一応隣の木を見……たら、なんかまたデカイのがいる。

「え…」

引っ掴むと、最初の個体程ではないが、これまた太い。
おいおいおい…

更に2本隣の木を見たら、ましても70mmは超してそうな大歯型。
別の枝には、こちらは70mmには届かなそうだが立派な大歯型がもうひとつ付いている。

…で、毒ビンが車の中だ。

もともとデカイ個体などいないと思って撮影だけのつもりで畑に入ったのだから仕方ない。
右手の親指と人差し指の間にひとつ、人差し指と中指の間にひとつ、中指と薬指の間にひとつ。
左手は懐中電灯を持ち、更にノコギリをひとつ。
そんな状態で更に見て行くと、またしても70mmOVERのノコギリが…

「ダメだ、一度車に戻ろう。毒ビンないと無理だ…」
と、ようやく車に戻る。
一番大きな個体を残し、他は順番に毒ビンに入れていく。
一番大きな個体は、まずは生きたままノギスを当ててみる……



「やばい…」

まずは、自分の目を疑った。
メモリを読み違えていると思った。
でも、何度見ても間違いない。

「いや、これはちょっと、ちゃんと〆てから計ろう…」
心臓がバクバク高鳴りつつもその個体を毒ビンに入れ、再びミカン畑に戻る。
最後に見つけた70mmOVERも採集し、65mmぐらいの大歯も採集して車に戻る。
だが、気分は既に上の空。
先程の個体のサイズが気になって気になって仕方がない。

車に戻って確認すると、先程の個体は既にかなり弱ってはいるがまだ死んではいない。
その状態でもう一度ノギスを当ててみる。

…やっぱり、間違ってない。


宿に戻り、確実に死んでいるのを確認し、明るい中でノギスを当てる。
普通は、リラックスした状態でノギスがアゴ先に軽く当たる程度にして計るのだが、ギチッと詰めて引っ掛かったまま落ちない状態にしてみる。

アマミノコ79mm

…その状態で、78mmを確実に超している
普通に計れば、79mmを超えている。



ヤヴァイ。


ヤバイを通り越してヤヴァイ
これは相当ヤヴァイものを採ってしまった…。




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奄美大島採集記2012夏(04)~深き森の赤~

7月1日(日)

本日も晴天なり。
ヒカゲヘゴと青空

このヤシの木のようなのは、ヒカゲヘゴという巨大なシダの仲間。
自分の目に入っていないだけかもしれないが、このヒカゲヘゴというヤツは奄美ではよく目にするが不思議と沖縄で見た記憶がない。
そのせいか、ヒカゲヘゴと真っ青な空の取り合わせは自分の中ではいかにも“奄美らしい”風景というイメージが強い。


さて本日はY氏の案内で採集に行く日だ。
狙いは、ちょっと本気でやってる虫屋さんなら誰でも知ってる、かの“赤いカミキリ”

宿までY氏の車で迎えに来てもらい、採集道具を積み替えてそのまま出発。
第一ポイントの入口に車を止め、そこからは徒歩で森の中へと突入する。
クロイワニイニイ・クロイワツクツクの声を浴びながら森の中を上り下りしながら進むことしばし、少し平坦になった辺りで「この木」と示される。

…正直、想像していた木とはだいぶ違っていた。

この虫が集まる木は、じめっとした森の中の苔むした木…というイメージだったのだが、比較的風の抜ける場所で、その木は苔も生えていない。
昨年、彼は日を変えてこの木で2♂を採集したとのことで、しばし周辺を探索してみるが狙いの虫は姿は現さず。

“もうしばらく待つ”という選択もあったのだが、他の獲物がクロイワツクツクぐらいしかいない森の中で待ち続けるのも少々退屈過ぎる…というコトで、ならばと森から出て第二ポイントへ向かう。

…。

こちらは森に入ってからのアップダウンが多く、少々シンドい。
それでも入口から1時間弱ほど歩いた頃、高さ6m程で折れた大木があった。
先を歩いていたY氏が折れた方を見始めたので、自分は残った立ち枯れの方を見…

「いたっ!!!!」

フェリベニ(1)

名を、フェリエベニボシカミキリという。
通称「フェリベニ」と呼ばれるカミキリムシで、本土で見られるルリボシカミキリの仲間だ。
本土のルリボシが青なのに対し、こいつは朱色。
その上、森の中のごく一部の枯木にのみ集まるため、簡単には採集できず珍品と呼ばれる。
近年では集まる木が多少分かってきて、採集できる人もかなり増えたが、それでもカミキリ屋にとって憧れの虫である事に変わりはない。
その上サイズもそこそこ大きく、色も鮮やかで美しいとなればカミキリ屋でなくとも憧れる人は多い。

…実はこの木、2頭のフェリベニがとまっていた。
しかし、採集の前に撮影しようとしたところ、小さい1♂は飛んで逃げてしまったのだ。
そのためもう1頭は撮影を放棄して捕獲し、掴んだ状態での撮影と相成った。

それにしても素晴らしいカミキリムシだ。
薄暗い森の中で見る朱色は、あたかも弱く発光しているかのように際立って見える。

更にいないかと付近を探すが、ハナカミキリが1頭見つかったのみ。
…と思ってたら、木の近くに1♂が飛来する。

さっきのよりデカイ!

…が、とまった位置が高い。
届かない!
…降りてこないかとジリジリ待つが、あろうことかその個体はかすかな羽音を立てながら何処かへと飛び去ってしまった。

なんてこったぁぁぁ…orz

さらにその後、そこから更に1時間弱ばかり森の奥に入った別の木で小さい2♂を見つけ、採集は合計3♂。
十分な成果なのだが、しかし…一番デカイのに逃げられたというのが悔し過ぎる…
アレを目撃していなかったら、意気揚々だったのだが…



…と、ここまでは良かった。



この御神木のルート、上り下りがあるとは言え基本は「下り」。
となると帰りは当然登り返しとなる。
それも、かなり急登。

普段から奄美の山を歩き慣れているY氏のペースに全く付いていけない
疲労が一気に来たのか足が急激に重くなり、見上げる斜面が崖のように見えてくる。
10分も登ると足が動かなくなり、立ったまま息を整え、やっとまた足を前に出す。
「休憩しようか」
の声にその場に崩れ落ち、座るのもままならず倒木に肘をついてほとんど仰向けに倒れるような状態で座り込む。
“肩で息をする”という言葉があるが、そんなモンじゃない。
上半身全部で息をしている感じ。
冗談に笑う余裕すらなく、会話もままならず、体が勝手にひたすら呼吸を整え体力を回復させる事に専念する。
体力にはあまり自信のある方ではないが、それにしてもY氏との差がここまでとは…。

陽が傾き、ややオレンジがかった陽射しが射し込む森の中、本土とは異なるやや金属的な“キンキンキンキン…”という響きのヒグラシの声が全身を包む。



このまま山の中で一泊してしまいたくなる程の疲労だが、そうもいかないので、登っては休み、休んでは登りしながら「命からがら」という感じでなんとか山から脱出し、Y氏の車に乗り込む。
こちらはもう助手席で虚ろな目をしながら息を整えるのが精一杯だというのに、Y氏の方は会話しながら冗談を言う余裕すらあるのだからもう差は歴然である。
それでも、そのHP鍋底状態は10分程でなんとか脱し、軽い会話をしつつ宿まで送ってもらう頃には(足はまだ重いながらも)ある程度普通に歩けるぐらいまでは回復していた。

で、「夜のトラップ回りに行く」と言ったら、「え、行くんだ…」と半ば呆れたような反応が。
…まぁ、トラップ回りは基本的に車だし(^^;


ノコギリは昨日よりは少し増えた感じがしたが、飛び抜けたような個体はナシ。
ただ、昨日スジブトのボロボロ65mmを採った木はかなり条件の良い木のようで、トラップにはベタベタとスジブトヒラタが付いている。
一周目で56~58mmぐらいの大型個体が数頭採れて、2周目に来るとまた54~56mmぐらいのが数頭採れる。
小~中型個体や♀はもちろんそのまま。
設置した木の上を照らすと順番待ちしている中型個体がいて、更に足下を照らすと明らかに“トラップに向かっています”な個体が複数。
なんと言うかもう『スジブトの集会所』である。

スジブト集会所

う~む、どうやらかなり“当たり”の場所に仕掛けたらしい。




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日を追って順に読んで頂く方は、どうぞ。
奄美大島採集記2012夏~目次~
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プロフィール

虫けら屋

Author:虫けら屋
もっぱら採集中心の虫屋さん。当初は東京で発生が確認されたが、後に埼玉県に移入、現在は千葉県での生息が確認されている。
肉眼で見て楽しめるぐらい大きなミーハー虫が好き。

Blog内の写真・文章等については、少しの引用的転用ぐらいならOK…と思っていたのですが、なんか最近フリー素材か何かと勘違いされているフシがあるので、今後は勝手に使わないでね。

※お問い合わせを頂く際はEメールにてお願い致します(採集ポイント等についてはお答えできかねますが…)。なお、採集遠征等により、お返事まで数日以上掛かる場合もございますので予めご了承下さい。
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