はじめてのコンデジ昆虫撮影(01)ピント

…先にお伝えしておきますが、私自身は採集がメインであり、昆虫撮影は片手間と言う程度にしかやっていません。
言うなれば“記録写真”という程度。腕が良いとはとても言えません。
そんな私が偉そうに撮影テクニックみたいな話を書くのは正直恥ずかしいのですが、しかしながら色々見渡しても“本当の初心者向けにコンデジ(コンパクトデジカメ)の昆虫撮影について書かれた記事”というのはあまり見掛けません。
また、コンデジはオートフォーカス(シャッター半押しで自動でピントを合わせる)など色々な機能が付いてはいますが、いざそれらの機能をマクロ撮影で使おうとしても、なかなか上手くいかない場合も多いです。

そこで、“コンパクトデジカメで昆虫写真を撮りたいんだけど、どうも上手くいかない…”という方のため、自分が色々な方から教わった『ちょっとしたテクニック』を勿体ぶりながら 少しずつ紹介していこう、という記事になります。

…ですので、この記事を見ても「プロのような素晴らしい写真」は撮れません。
あくまで“もうちょっとちゃんとした写真を撮りたいなぁ…”というレベルでのお話ですので、その点はご了承下さいませ。
また、写真の上手い方から見たら、「まだピントが甘い」「俺の方がもっと上手く撮れる」等々あるかと思いますが、そこも御了承下さいませませ。



さて、まず昆虫に限らず写真で大切なのはピントが合っていること。

マクロ撮影(昆虫や小さな花など小さい物を接写して大きく撮影することを、マクロ撮影と言います)の場合、ピントの合う範囲が非常に狭くなり、例えば昆虫などでも斜めから撮ろうとすると頭とお尻に同時にピントは合いません。
そこで、どこにピントを合わせるか。

昆虫撮影の場合、基本的には複眼にピントを合わせます
下の2枚の写真は、1枚目は複眼にピントが合ったもの、2枚目は背中辺りにピントが合っているものです。
(ライティングの加減などの差もありますが)見比べてみると2枚目はピンボケ感があります。
これは、複眼にピントが来ていないためです。

写真1.
ピント(1)

写真2.
ピント(2)

無論、「大アゴの形をクローズアップしたい」とか「前脚の形が変わっているので、そこを写したい」という場合にはそれらの部位にピントを合わせます。
複眼にピントを合わせるのはあくまで基本というだけです。


さて、ピントを合わせる場所はこれで分かりました。
…ところが、マクロ撮影ではもうひとつ問題が。

コンパクトデジカメのオートフォーカスでは、なかなか小さな被写体にはピントを合わせてくれないのです。
特にマクロ撮影の場合、シャッター半押しによるオートフォーカスだと、複眼のような小さな部位にはピントを合わせづらく、どうしても背景や虫の背中など大きな部分にピントを合わせてしまいがちです。
そこで、簡単なのは、

何度かオートフォーカスでピント合わせをして、複眼に一番近い場所にピントが合ったら、カメラの方を少し前後させる

…という方法。
シャッター半押しのままにしておけばカメラのピントはそのまま固定されていますので、例えば「複眼より少し奥(前から見た際の虫の背中など)にピントが合った」なら、『カメラをほんの少し引く』と、固定されたピントは複眼に合います。
逆に、「複眼より手前(上から見た際の虫の背中など)にピントが合った」場合は『カメラをほんの少し前に』出します。
そうやって“固定されたピントにこちらから合わせる”ことで、小さな複眼にピントを合わせる事ができるようになります。

花にとまった昆虫なんかを撮影する場合にも、どうしても花にピントが合ってしまう場合は、そのままシャッター半押しでピントをキープしたまま少しだけカメラを引いてやると、上にいる昆虫にピントが合います。

コンパクトデジカメで昆虫撮影をする場合、機能にそのまま頼り切りになるのではなく、その機能を活かして少し工夫してやると良い写真が撮れるようになります。

ぜひ、お試しあれ。
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インセクトフェアに行ってきました

先日紹介した大手町でのインセクトフェアに行ってきました。
(※ちなみに、場内撮影禁止のため、写真は一切ございません)

基本的に標本の売買は興味がないため、今回も標本の購入は一切ナシ。
…収集家の方からしたら「何しに行ってんの?」てな感じかもしれませんが、自分の場合は標本ラベルを見る(自己採集のための大きなヒントになる)のと、普段ナカナカ会えない友人・知人に会うのが主目的なのです。

本日は雨天のためか開場直後は空いていたものの、1時間もすると混雑状態に。
知り合いに挨拶なぞしながら会場を回り、出展標本を見て回る。
…が、今現在これと言って「どうしても採りたいー!」という虫がいないせいか、ラベルを見たいと思う虫はあまりおらず。
そうなると、知人とのお喋りが主になってくる。
バカボンことT中さんに奄美の成果を見せていると、「この方が、あの79採った方ですか?」とかT中さんに尋ねる方が数名…

ををを…
本人の預かり知らぬ所で話が広まっている…(汗)


…いやまぁブログにも採集記をバリバリ書いているし、不特定多数の方に知られていて不思議はないのですけどね(笑)

更にホノホシさんから徳之島土産のトクノシマコクワとマルダイコクなんぞを頂いてしまい、お礼に奄美大島産のスジブトを献上して。
58mmぐらいのあげようとしたら、「こっちの方が欲しいです」と55mmぐらいの方を御所望。
何やらそちらの個体の方が大アゴの形がホノホシさんの好みで、格好良いらしい。

…私には違いがサッパリですが。

更にspaticaさんにもお会いして、スジブトを献上したり、スカシバガの標本を見せて頂いたり。
フェア主催のF岡さんにもお会いして、お預けしてある奄美大島産ケブカコフキコガネについて、その後の進展状況なんぞを聞いてみたり。
また今シーズンのケブカ計画のためにも、また遠くないうちにお宅を訪問させて頂く約束も。

更に、以前勤めていた六本脚の上司であったKさんが開業された昆虫系書籍の古書店「やままゆ書房」さんで一休みしつつお話させて頂いたり。

奄美の自慢をして、向こうの採集の話を聞いて、虫話をして。
いつもこういう「人と会う」がフェアの主目的ではあるものの、今回のフェアは特にそれが顕著であった。


その後、ありがたい飲みのお誘いなんかも頂いたのですが、「この後採集に行きたいので…」という事で、終了の16時と共に会場を後にした。



…そんなフェア報告。

奄美大島採集記2012夏(12)~旅の終わり~

7月13日(金)

長かった奄美遠征も今日でおしまい。
昨夜のうちにトラップ類は全て撤去してあるので、今日は荷物整理をして帰るだけ……のつもりだったんだけど、流石に時間が余り過ぎるため、空港近くで少しばかり網を振る。
狙いはクロイワニイニイ
クロイワニイニイ
単体で見るとニイニイゼミとそっくりだが、やや小ぶりで前胸背の形や翅の模様などが微妙に異なり、また鳴き声も少し違う。
南西諸島にしかいないニイニイゼミの仲間だ。
…ただ、奄美大島には普通のニイニイゼミもいるので要注意。
捕まえてきちんと確認しないと、どちらだかハッキリ断言は出来ない。

中型のハンミョウが飛んでいる…と追いかけていくと、植えつけ前の畑に出て、そこで沢山飛んでいるのを見つけた。
捕まえてみればコハンミョウだ。
コハンミョウ
10頭ばかり摘まむ。

また、ここにきてメスアカオオムシヒキの♀を見つける。
メスアカオオムシヒキ♀
♂は今回の滞在中に何度か見ていたのだが、♀は初。
日本最大のムシヒキアブで、正直キモチワルイ。…が、“日本最大”とかいうとつい採りたくなってしまうのは虫屋の性(さが)。
画像は帰宅後に撮影したものだが、一緒に撮ったオオセンチコガネと比べると、その大きさが分かる。
2♀を採集し、じゃあ♂も採ろうかな…と探すが、いざ探すとなると♂がいない。

虫屋あるある:どうでもいい時には見掛けるクセに、いざ採集しようと思うと見つからない。

…結局、♂は見つからないまま終了。
とは言えまだ時間は十分にあるので、友人宛のシリケンイモリと自分の荷物をそれぞれ空港から郵送で送る。
それから空港の土産物屋をゆっくりと見て回り、十分な余裕を持って鹿児島空港行きの飛行機に乗り込む。

…行きは6月だったため55日前の超割があり1万円台で直行便が取れたが、帰りは既に7月の繁忙期に入っているため超割がない。
そのため、「奄美→羽田」直行便よりも、鹿児島空港を経由して超割を取る方が安い(それでも3万円台だが)という逆転現象が起こる。
その上、鹿児島経由なら本数があるので夕方の便を選べば島での滞在時間も長くなるしで「奄美~羽田までの所要時間が長くなる」という以外は全てにおいて経由便の方が勝ってしまう。
そんなワケで、今回も経由便。

まだ明るい奄美空港を、飛行機は一路鹿児島空港へと飛び立った。

プロペラ

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<あとがき>

さて、長々と続いてきた「奄美大島採集記2012夏」も、この第12話でとうとう(やっと?)終了です。
ここまでお付き合い頂いた皆様、ありがとうございました。
せっかくなので、賛否どちらでも採集記の感想コメントなど頂けると虫けら屋は喜びます。

また、現地で案内をしてくれた友人Y氏をはじめ、お世話になった方々にもお改めてお礼を申し上げます。

今回の奄美遠征は、神風(突風)が吹いたかと思う程の“出来過ぎ”なミラクルな成果でした。
初っ端に轢かれていた特大アマミヒラタ、バナナトラップに来た巨大なスジブトヒラタ、野外ギネス僅差のアマミノコギリクワガタ…どれかひとつでも採れたら遠征大成功と言えるようなサイズのクワガタです。
えー、採集記を読んで下さった皆様はもうお分かりかとは思いますが、(自分が言うのもなんですが)これは異常とも言える程の大成果です。
普通なら、

アマミノコギリは73mmから上は相当キツイです。
スジブトヒラタは55mmもあれば十分大型です。
アマミヒラタは野外で60mmを採るのは楽ではありません。

これらのサイズを「大したコトないじゃん」とは絶対に思わないで頂きたく…(汗)。
どうか、野外サイズのアベレージを誤解されませぬよう。

奄美クワガタ大集合

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~えぴろーぐ~

帰宅した翌日の7月14日(土)、それらの成果を持って、今回色々とお世話になったむし社に成果報告へ。
顔を出した途端、いきなり「君は奄美には行かなかった!」と言われ、何の事やら分からず頭上に「?」マークを5つぐらい浮かべていたら、

「いや、奄美に行った夢を見たんだという催眠術をかけて、成果をこっちの物にしようかと」

…と。


ナッ!? Σ(゚Д゚;)







そしてその翌日…7月15日、朝。
私はひんやりとした空気に包まれた新千歳空港に立っていた。
灰色に曇った空は太陽の暖かさを完全に遮り、半袖で空港の建物を出た途端に肌寒さを感じる程だった。
「さっむ…!」
つい一昨日までいた奄美大島と同じ日本だとは思えない。
ていうか、今は本当に7月の中旬か!?


南の島に続いて北の大地へ。

この上ない贅沢である一方で、奄美であれだけの成果を出してしまうと、その反動で目も当てられないような貧果になるんじゃないかという不安も…
やがてやってきた送迎ワゴンに乗り込むと、私一人だけを乗せ、車はゆっくりと空港を後にした…




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日を追って順に読んで頂く方は、どうぞ。
奄美大島採集記2012夏~目次~
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p.s.
さて、いよいよ今度の日曜日が待ちに待ったインセクトフェアですね。
年に一度の大イベント、私もとても楽しみです。
…と言っても、私の場合、標本の購入はほとんどしないので、なかなか会えない仲間に会うのが何よりの楽しみなんですけどね(笑)

第63回 インセクトフェア

奄美大島採集記2012夏(11)~最後の奇跡~

7月11日(水)

今回の遠征は13日(金)まで。…気付けば、残るはあと2晩である。
長い長いと思っていても、いざ終わりが近付くと短く感じてしまう。

さて、今日も天気は良くない。
実のところ7月8日以降はずっと天気が悪く、毎日降ったりやんだりのグズついた天気。

数日前にトラップを撤去した某所(朝土砂降りのポイントとは別)に、思う所あって再度トラップを設置する。
ついでにゲンゴロウトラップをチェックしに行くと、周辺は多くのトンボが飛び回っている。種数は5~6種程度だが、面白そうなので少し相手になってもらう。

奄美のトンボ2種
オキナワチョウトンボは別名ベッコウチョウトンボとも言い、南西諸島では普通に見掛けるトンボのひとつ。
翅が黒とベッコウ色の斑模様で体はメタリック。
他に類を見ない、なかなか素敵なトンボである。
タイワンウチワヤンマは、ヤンマと付くがサナエトンボの仲間。
本土に居るウチワヤンマと似ているが、腹端の扇状の突起は小さい。

その他、タイリクショウジョウトンボやリュウキュウギンヤンマ、オオシオカラトンボなどが飛んでいる。
ついでに、友人に頼まれていたシリケンイモリを狙ってみる。
奄美のシリケンイモリは赤色部が発達するものがおり、ごく稀に『赤地に黒い斑点』みたいな状態になったものもいるらしい。
そういう個体は両爬屋さんに人気が高く、かなりのお値段で取引されるとか…。
イモリの個体数は多く、“多少赤い部分が多い”ぐらいの個体は普通に見られるが、流石に赤の発達した個体というのは簡単には見つからない。
たまに呼吸に上がってくるのがかなり赤く見えたりするが、呼吸した瞬間に再び池の底に潜ってしまうので簡単には捕まえられない。

トンボと戯れつつも1~2時間程その池でイモリを狙い、ようやく“これはナカナカ赤いんじゃないかい?”という個体をゲットする。
…無論、ソレ系の書籍に出てくるような赤化個体と比べたらまだまだではあるが、片手間で狙って採るのなら、これでもかなりの個体だと思う。
赤いシリケン
シリケンを頼んできた友人に「これ以上赤いの採れとか言ったら許さん」とメッセージを付けて写メールを送る。


さて、午後は某大学院生でアマミノコとナナフシの遺伝子解析をするためのサンプル採集で来ているという人と、2月にお世話になったNさんが会うというので自分も一緒に顔を出す。
なんと、夜に77mmという特大級のアマミノコを採集したものの、宿まで戻る間にザックから脱獄されたとか。
本来ならそのサイズを採ったという話だけでヨダレを垂らして羨ましがる(もしくはギリギリと奥歯を噛み締めて悔しがる)ところだが、先日のオバケ個体(→採集記(05))のおかげでなんとか平常心を保…平常心……平じょ……ぐぎぎぎぎ。

夜は、昨日に引き続きイマイチ。
ただ、今朝トラップを再設置し直した場所でアマミノコ76mmが入り色めき立つ……が、その1頭だけ。
あとは小さいのがほとんど。
まぁ趣味的にはこのサイズが採れれば成果が1頭だけも大喜びなのだが、実は今回の採集は夏以降の標本教室に使用するクワガタの確保という目的もあり、そこそこサイズのノコの大歯型を多数採りたかったのである(※既に8月開催の標本教室で、この遠征で採集したアマミノコを何度か使用しています)。
その意味では、数が採れないのは少しイタい。



7月12日(木)

いよいよ奄美遠征も残すところあと2日。丸一日自由に使える日は今日が最後である。

…で、その最後に来てここしばらくの悪天候による鬱憤を吹き飛ばすかのような晴れ
もうここでこの好天ときたら、フェリベニの木に行くしかないでしょう!
しばらく続いた雨でフェリベニも活動できずにいたハズなので、今日の晴れで一気に集まってくるんじゃないかとワクワクテカテカ。
…そして、ここまで採れているフェリベニは全部で9頭。
となったら、2桁の大台に乗せたいと思ってしまうのは虫屋の欲か。

支度を整え、ポイントへ向かう。
森の入口に生えたアカメガシワには、鬼スレのアカギカメムシが子守をしていた。

アカギカメムシ子守

…ちなみに、鮮度の良い本種はこんな色(※写真下にいるのは終齢幼虫)。
アカギカメムシ
…子守個体のスレっぷりがよく分かる。

さて、森を進むことしばし、1本目の木はやはり赤いのは付いておらず、またしても立派なヒメハブがいる。
この木はどうもコイツのお気に入りらしい。困ったモンだ。

2本目の木に行くと…





フェリベニいっぱい

うおおおおッ!
あちこちに付いとるぅぅぅうッ!


御神木に着くなり一気に5頭。しかもうち1頭は33mmぐらいありそうな大型個体。
特大とまではいかないが、かなり嬉しい個体だ。標本箱に入れた時にもかなり格好が付く。
カミキリムシも、クワガタと同じく大型になるほど体格もガッチリして迫力が増す。
若干のスレがあるが、欠損は無いし十分である。

で、まだ時間も比較的早いので追加飛来を待とうかと。
木のそばで待っているとフェリベニは降りて来ないという話を少し前に聞いたのを思い出し、10m以上離れた場所で腹ごしらえをしながら待つ事にする。

…オニギリをパクついていると、ふと視界の端に赤いものが映る。
こういう場合、大抵は枯れ葉なのだが、なんとなく気になったので腰を上げて確認に行…

フェリベニやんけ!

小さな個体ではあるが、御神木から10m以上も離れた場所の岩にフェリベニの♀がとまっていたのである。
それにしてもまさか自分が腰を落ち着けた場所のすぐ近くにとまっていようとは、なんという幸運だろうか。
しばらくして再び御神木を見に行くと、2頭を追加。
これで、今日だけで8頭である。
更にしばらく粘ってみたところ、更に1頭赤いのが飛来する……が、降りて来ない。
そのまま飛び去ってしまった。

「アレが採れてれば、昨日までの成果の倍になったのに…!」とか恐ろしく贅沢なセリフを吐きながら悔しがる。
そこから更にしばらく待ってみたものの追加個体は現れず、夕方近くなり日が傾き始めたので暗くならないうちに撤収する。
本土とは少し異なる金属的なヒグラシの声を聴きながら斜面を登っていく。
少しでも疲れたなと思ったら足を止め、回復させてから再び進む。
今日もひとりなので、無理は禁物。

…やがて、出口まであと5~10分という辺りまで来た時、

目の前をオレンジ色の虫が横切った。

最初の印象は、アカハネムシ
でも、この季節にアカハネムシは多分いない。
じゃあ何…?

「フェリベニか!!」

言うが早いか叩き落としてみれば、案の定フェリベニである。
これで本日9頭目。
まさかもう出口近くというところで採れるとは思わなかった。
御神木からはゆうに1時間以上歩いてきており、あの木に来ていた個体とは考えられない。
恐らく、この近くにも良い木があるのだろう。

…って言うか、これもまたタイミングが一歩違えば出遭えなかった。
休憩が30秒も長ければ視界に入る前に飛び去っていただろうし、10秒も短かったら自分が通った後にフェリベニが飛んできた事だろう。

こういう奇跡的なタイミングで良い虫が採れることが、たまにある。


…意気揚々と森から上がる。
本日だけでフェリベニ9頭という大成果。
更に昨日までで9頭採っているので、合計18頭!
いくら滞在期間が長い長期遠征とは言え、18頭というのは奇跡的だ。
素晴らし過ぎる。
案内をしてくれた現地友人のY氏には大感謝である。

夕方、仕事を終えたその友人Y氏と合流し、「ひさくら」で鶏飯を食べる。
明日は平日で友人は普通に仕事なので、今日でお別れ。最後の晩餐。
鶏飯


夜はトラップを撤去しながらの回収を行ったが、特筆するような個体は現れず。
また、超特大ノコが採れたミカン畑に掛けたトラップは、終始チビノコ1頭すら来なかった。
やはり良い樹液が十分に出ているとバナナトラップは効果が薄いというのは本当らしい。

…ちなみに、ミカン畑は他人の敷地であり、本来なら立ち入るべき場所ではない。
少なくとも、“失礼ながら入らせて頂きます”という心づもりだけは忘れてはいけない。
もし人がいたなら断りを入れるべきだし、そこでダメと言われたら諦めるしかない。
また、畑周辺にバナナトラップを入れる場合も周辺の木の目立たぬ場所に仕掛け、間違ってもミカンの木に仕掛けたりしてはいけない。
既に畑という他人の土地に入らせてもらっている以上、それ以上のマナー違反は絶対に避けるべきだ。
“後でちゃんと撤去すればいいじゃん”と思う人は、他人が勝手に自分の家の庭に入ってきて勝手に洗濯物を干して行ったら、どう思うかを考えてみるといい。
「後で回収するんだから良いでしょ?」で納得できるだろうか?


…さて採集の方はというと、結局、夜中3時頃までかかってバナナトラップとゲンゴロウトラップを全撤去し、宿に戻った。
これで明日は荷物整理だけで済む。




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奄美大島採集記2012夏~目次~
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ショウリョウバッタモドキ

自宅玄関前の廊下の手すりに、緑色の姿があった。
ここは年に1~数回程度、近くの河原から間違って灯火に来てしまうトノサマバッタがいるが、今回はそれより小さそうなので、正体を確めんと近付いてみると…




ショウリョウバッタモドキ(2)

おや、ショウリョウバッタモドキさんじゃないですか。
その名の通り、ちょっとショウリョウバッタに似ているけど違う、別の種類のバッタ。
ショウリョウバッタよりはだいぶ数が少なく、チガヤなど草丈のある原っぱに生息するバッタだ。
サイズも2~3回りは小さく、モドキ♀が本家ショウリョウバッタの♂と同じぐらい。

それにしても、ここでショウリョウバッタモドキを見たのは実は初めて。
まだいるんだなぁ…。

奄美大島採集記2012夏(10)~トゲさん、いらっしゃい~

7月10日(火)

昨夜から日付変わってそのまま次のポイントへ向かう。
到着する頃には既に午前3時近くなっていた。
ここまでぶっ通しで動き続けているので流石に睡魔が襲ってくるが、もう夜明けも近く、仮眠をとっている暇はない…
…ので、このポイントのMyテーマソングになっている、森山直太朗「生きとし生けるものへ」のCDをかけてみたら、眠気が一発で吹き飛んだ。

…実は、以前にアマミミヤマクワガタを狙って毎年のようにお盆時期に奄美に渡っていた事があり、その頃はこの場所を採集の拠点にしており、毎晩毎晩エンドレスで車内で流し続け、歌い続けていたのがこのCDなのだ。
「生きとし生けるものへ」「旅立ちの朝」「季節の窓で」の3曲がエンドレスで流れ続け、それを歌い続けながらハンドルを握り、電柱やバナナトラップがある度に車を止めて確認する。
他のCDを全くかけず、このCDのみでエンドレスリピート(曲が気に入ったのと、採集中にCD入れ替えるのが面倒だったので)し、おまけにこの曲自体それまではあまり馴染みがなかったため、おかげで『この曲が掛かっているのは奄美のこのポイントにいる時』と脳と体にすっかり擦り込まれてしまったらしかった。

ある、東京の自宅で何気なくこのCDをかけたら、前奏が流れた瞬間に

“今俺は奄美で採集している!”

と脳と体が全力で主張して全身が総毛立ち、「うわっ!」と思わず声を上げて飛び起きた事があったほど。
その一瞬、自分は間違いなく夏の奄美にいた。
全身にまとう空気が、完全に奄美の空気になっていた。
…その後、友人と行ったカラオケでも何度か歌ったのだが、歌い出した瞬間に左手がハンドルを握ろうとする。右手が懐中電灯を持とうとする。
完全に、脳と体が「夏の奄美の林道を夜に走っている」と思いこんでいるのだ。
目を瞑れば、眼前にトラップを掛けた木が、アマミミヤマがいた電柱がありありと浮かぶ。
パブロフの犬よろしく、もはや『「生きとし生けるものへ」が流れる=奄美の林道にいる』と反射神経にまで擦り込まれてしまっていたらしい。
…まぁ流石に今は既に擦り込みも薄れ、そのような事態は起きなくはなったが、それでもまだ体の芯は何かを覚えていたらしい。
そして脳と体の擦り込みと、実際の風景とが合致したので力を発揮したのだろう。

だがしかし、そんな思いとは裏腹にトラップはイマイチ冴えない。
一応ノコギリの大歯がいるだけ先日よりは良いものの、それでも1トラップに1♂付いているかどうか、という感じでいつものポイントのように“トラップにノコがベタベタ”という感じになっていない。
どうにもクワガタの個体数自体が少ないとしか思えない。

アマミノコ小歯型

これでは埒が明かないので、再びミカン畑に突入する…が、いくつかの木を見たところで、ミカンの枝に絡む白い長いモノを見つけてしまう。
“えっ…”と思ってよく見れば、木に登った1.5m程の立派な本ハブである。
目線より上にいたため、腹側が白く反射して見えたのだった。

「マジかよ…」

一気に足が竦む。
それでも何とか勇気(蛮勇)を奮い起して畑を歩き、なんとか数頭の大歯型を追加。
車に戻って就寝と相成った。

アマミハンミョウ就寝
…林道の葉上では、アマミハンミョウも就寝。


夜中~早朝は雨もやみ、緩やかな風が抜けて比較的快適な車中泊だったのだが、朝起きて“軽くトラップでも見回ろうかな”と思った矢先に“待ってました!”とばかりにドッザーーーーッ!!と土砂降り。
奄美、雨の朝
…もうこのポイントはダメだな、と見切りを付けて雨の中トラップを全て撤去する。

それから昨日スジブトの62mmが採れたポイントへ向かい、ミカン畑がダメならトラップでどうだとバナナトラップを5~6個設置する。



夜は各所のトラップを順に巡っていくが、どれもイマイチ。
初日から掛けているポイントはもうトラップの寿命が尽きたようで、大型個体はちっとも付いていない。
ヤレヤレと車に戻ってきて、ふとダッシュボードの上に何か虫がいるのに気付く。
“んっ?”と思って良く見たら、



トゲウスバカミキリ
「トゲウスバじゃねーか!」
慌てて引っ掴む。
…これはラッキーなお客さんである。

トゲウスバカミキリは奄美や沖縄で見られるウスバカミキリの仲間で、やや珍品扱いの虫。
本土のウスバより色が淡く、前胸背の角が尖ってトゲになっている。
カミキリ屋(カミキリ中心の虫屋)さんが採れたら「ヨシヨシ」と喜ぶぐらいの虫で、夜は本種を狙ってライトトラップをする人も多い。
そんな虫がわざわざ向こうから車に飛び込んできてくれるとは、嬉しい限り。
クワガタがダメな日でも他の虫が採れる、というワケだ。

こういう虫も、「クワガタ以外興味なし」とか言っていると駄虫として見過ごしてしまう。
クワガタonlyが悪いワケではないが、やはり他の虫にも色々と興味を広げておいた方が楽しいと思う。
…尤も、広げ過ぎると収拾がつかなくなってしまう危険もあるのだけど(笑)


さてその後もバナナトラップ見回りを続けるもののやはり冴えず、昼間に新しく掛けた場所も小型個体が数頭だけ。
ゲンゴロウトラップを見に行ってみるが、ヒメフチもコガタノも入っておらず、そのトラップのすぐ近くで交尾していたヒメフチ1ペアを網で採る。
…ゲンゴロウは餌の匂いに敏感なので、トラップの匂いが効く範囲の個体はほとんど最初の晩に入ってしまうという事なのかもしれない。
となると、トラップで2日目以降も大きな成果を挙げたい場合は、トラップの場所を大きく移動するか、場合によっては全く別の池や水場に付け変える必要があるのかも?
クワガタと違って餌も毎日交換だし、面倒なトラップだねぇ…。




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奄美大島採集記2012夏~目次~
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奄美大島採集記2012夏(09)~ゲンゴロウ~

7月9日(月)

天気はイマイチだが、行動できないような状況ではないので新ポイント探索に出掛ける。
本日目星を付けているのは島の中部。
ある程度まとまったミカン畑があるのは分かっていたので、夜にそこを狙ってみようと思い、その下見に。

…と、走っていると抉れたアカメガシワに何やら不自然な影があるのに気付いた。
ゆっくりと車をバックさせて、凝視するがよく分からない。
だが、どうもクワガタのような気がするので、車を降りて直接確認に行く。

「あ、やっぱりクワガタ…って、デカイ!
手前に藪があって微妙に手が届く距離ではないので、慌てて車に網を取りに行く。
捕虫網をあてがってそっとクワガタをつつくと、そのまま上手いことポロッと網の中に落ちてくれた。

取り出してみれば、またも62mm級のスジブトヒラタである。

昼間のスジブト62mm

…しつこいようですが、普通に考えて62mmは特大なんです。
こんなにホイホイ採れて良いモノじゃないハズなんです。
滅多に流通には乗らず、基本的に採集者本人が自分の標本箱に入れてしまうサイズ、それがスジブトの60mmOVERです。
そう、62mmなんてのは、スジブトの多いポイントにトラップ大量に…(以下略)


しかも、この特大が見つかったのが、またしても昼間。

やっぱり特大は昼行性

…と言うよりは、まぁ真面目に考察するなら、スジブトヒラタクワガタは昼夜をあまり問わずに活動しているのではないだろうか。
大型Dorcus属というとヒメオオを除き夜行性が強いイメージがあるが、本種は(どちらかと言えば夜行性寄りの性質ではあるものの)直射日光が当たるような場所でなければ昼間でも普通に活動するのだろう。
そのため、付近で最も大きな個体が好きな時間に(腹が減ったら(?))餌場を独占し、その空いた時間にやや小ぶりな個体が採餌に現れているのではないだろうか。
それであれば特大が昼間にいた理由も説明が付くし、夜間にも採れた理由にもなるように思う。

…しかしそうなると、スジブトを狙うのであれば昼間にもトラップ巡回を行う必要があるという事だ。
「バナナトラップ巡回=夜」という固定観念を捨てなくてはいけない。
もしかすると、今回のように特大個体が昼間に活動して夜には一回り小さな個体がトラップに来ているという可能性もあるのだから。


まぁしかし、このサイズのスジブトが採れるなら他のクワガタも期待して良さそうかな?
夜に期待しつつトラップをひとつだけ設置してポイントを後にし、ついでにゲンゴロウトラップを仕掛けられそうな池を探す。
昨日のポイントはトビイロばかりだったので、コガタノゲンゴロウが採りたい。
…欲を言えば、ヒメフチトリゲンゴロウも。




…と。
とある池を見つける。
オキナワチョウトンボが飛び交い、タイワンウチワヤンマがテリトリーを張っている。
一部に抽水植物もあって深さもかなりありそう。
シリケンイモリが時々上がってきては水面で空気を吸い込んで再び潜っていく。
まぁ特段に好条件の池とは思わないが、条件的に悪くはないと思う。
う~ん…こんな池でゲンゴロウはおらんもんだろうか……と様子を見ていたところ、池の縁を 何か楕円形のデカイのが泳いでいる


「いるじゃん!Σ(゚Д゚;)」


タモ網がないので仕方無しに捕虫網を水に突っ込んで一気に掬い上げる。

ヒメフチトリゲンゴロウ
ヒメフチトリゲンゴロウ。

うおおおお!
いきなりヒメフチじゃあ!


ってコトはつまり、この池は“いる”ってコトだ。
急いでトラップを放り込む。
夜が楽しみになってきた…!

ヒメフチはクロゲンゴロウとナミゲンゴロウの中間ぐらいのサイズのゲンゴロウで、減少しているとは言え南西諸島では比較的見られる種。
大型種で鞘翅の外縁に黄色い縁取りが入るので彩りもあって楽しい種だ。
これは是非追加を狙いたい。


やがて夜。
最初のバナナトラップポイントはイマイチだったものの、期待していたゲンゴロウトラップが当たった。

トラップ内の空気が少なかったせいか半数が酸欠仮死状態になっていたが、待望のゲンゴロウ類が入ってる入ってる。
2ヶ所のトラップを回収して、

ヒメフチトリゲンゴロウ 4♂3♀
コガタノゲンゴロウ   2♂1♀

ヒメフチ&コガタノ

よっしゃあ!
すげぇぇぇぇえっ!


…とか成果を上げていると、それなりに水生昆虫もやっているように見えてしまうが、実は虫けら屋は水モノはあまりやっていない。ゲンゴロウについても採集経験は非常に少なかったりする。
実際、ヒメフチどころかコガタノも今回が初採集で、今年2月に奄美大島に来た(→奄美大島採集記2月編(6))際には本土の水生昆虫好きな友人に
「コガタノってどうやったら採れるのー?」
と聞いていたぐらい。

途中、コンビニや自販機の灯火でオキナワシロスジコガネを拾いつつ、昼間にバナナトラップを設置したポイントへ向かうが、これが全然ダメ。
トラップがダメなら、と意を決してミカン畑に入ってみるが、やはりいない。
樹液は多少はあるのだが、不思議な程にクワガタの姿がない。
それどころか1.5mぐらいのハブまで見てしまい、退散退散。

続いて更に1時間弱ほど走った道沿いのミカン畑も覗いてみるが、先程より更に条件が良さそうに見えるワリにクワガタは少なく、小さなノコギリやスジブトが数頭見つかったのみ。
怖い思いしてこれではワリに合わん!

…さて、ここで宿に帰ろうかどうしようかと考えたのだが、もうここまで来たら最後のポイントまで行っちまえ!と、日付変わりつつそのまま車を走らせた。




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※長いので、以下リンクに目次ページがあります。
日を追って順に読んで頂く方は、どうぞ。
奄美大島採集記2012夏~目次~
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夏のイベント終了

標本教室

とうとう8月が終わり、9月に入ってしまいました。
暦の上だけでなく、世間一般的にももう“秋”と呼ばれるシーズンに入ります。

その8月の終わり頃の29日(水)、中野のむし社さんで昆虫標本作製教室を開催してきました。
そして、この夏の昆虫関係イベントはこれにて全て終了。

7月下旬から8月いっぱい、水曜&週末はほとんどイベントを行ってきました。
市ヶ谷での標本教室、むし社での標本教室、長坂オオムラサキセンターでの昆虫マスターイベントのガイド、など。
ついでに平日は昆虫関係のバイトを入れていたので8月は思うように採集に行けず、だいぶ欲求不満が溜まったりもしておりますが、こういう昆虫普及&教育イベントは自分の夢でもあり、非常にやりがいはありました。
(6末~7中まで長期遠征で力一杯虫採りしてましたしね(笑))
御参加頂いた方々には、改めてお礼申し上げます。

ちなみに、標本教室イベントは夏限定ではなく10月以降も月1回ぐらいのペースで開催していきたいと思っていますので、ご興味がある方は日本昆虫協会ホームページを時々チェックして頂けますと幸いです。
だいたい1ヶ月前ぐらいから開催情報を掲載しています。

リンク:日本昆虫協会


…さてさて、連載中の「奄美大島採集記2012夏」ですが、まだ今少し続きます。
そろそろ飽きてダレてきているかもしれませんが、頑張って最後まで付いて来て下さい(笑)

…ちなみに、この先は次第にクワガタ以外の虫達がメインになってきます。
プロフィール

虫けら屋

Author:虫けら屋
もっぱら採集中心の虫屋さん。当初は東京で発生が確認されたが、後に埼玉県に移入、現在は千葉県での生息が確認されている。
肉眼で見て楽しめるぐらい大きなミーハー虫が好き。

Blog内の写真・文章等については、少しの引用的転用ぐらいならOK…と思っていたのですが、なんか最近フリー素材か何かと勘違いされているフシがあるので、今後は勝手に使わないでね。

※お問い合わせを頂く際はEメールにてお願い致します(採集ポイント等についてはお答えできかねますが…)。なお、採集遠征等により、お返事まで数日以上掛かる場合もございますので予めご了承下さい。
   ↓↓↓
akepon6464@yahoo.co.jp

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