いのうえい

当ブログにて何度も紹介しているケブカコフキコガネですが、この度、奄美群島に分布している個体群が亜種として記載されました(→亜種とは)。

ケブカ奄美亜種
で、学名が Tricholontha papagena inouei

亜種小名が「inouei」。
そして虫けら屋は本名名字を「井上」と言います。

…ええ、はい。
献名されちゃいました。

「奄美のケブカコフキは沖縄本島のものと少し違う」とはずっと言われていたのですが、しかし♀が未記録のため♂しか形態を比較検討できず、記載は保留されてきたのですが、2012年に虫けら屋が♀を採集した(→採集記)ことでようやく♀も比較検討ができ、亜種記載と相成りました。
そして、その♀を採集した功績(?)ということで亜種小名に献名して頂いてしまいまして。

…いや、正直「私みたいな無名の人間の名を付けちゃって良いんですか!?」という想いはあります。
学名だけ見た方が、「この井上って誰よ?」となるんじゃないかと。
世界共通名である学名を、何処の馬の骨とも知れんようなのに献名しちゃっていいのかなー…と。

とは言え、10年以上も毎年のように通い続けた思い入れのある奄美大島、その奄美の虫に私の名が付くというのはこの上なく嬉しくもあります。
しかもそれが最近マイブームの虫。
「初めて行った場所で採った虫が…」と献名されるのも良いものではありますが、思い入れのある島で苦労して採った好きな虫に献名されるのは喜びもひとしお。


形態的な差異は記載論文に書かれていますが、生態にも沖縄地域とかなり差があることは当ブログで度々紹介してきました。
「発生時期」「活動時刻」「食草」どれも異なっており、沖縄産と同じつもりで奄美に♀を狙いに行くと、♂すら見ることができません。
生態だけで言ったら「亜種どころか別種にしてまえ」と言いたくなるぐらい違いますが、形態となると意外と差が少なく、やはり亜種レベルが妥当なのかもしれません。


ちなみに、現在のところ奄美群島で本種が確実に記録されているのは奄美大島と徳之島の2島のみ。
喜界島は採れているものの公式報告をされていないため、分布に含まれていません。
…まぁ、島の場所から考えて喜界島産も間違いなく奄美亜種でしょうね。

………と、なると、気になる島がいくつか。
徳之島と沖縄本島の間には、まだ♂も記録されていない島がいくつか存在しています。

この辺りの島にケブカコフキが生息しているのか?

そして、生息しているとしたらどちらの亜種になるのか?

…気になるところです。


なお、本亜種の記載論文はコガネムシ研究会発行の「KOGANE No.14」に掲載されておりますので、ご興味のある方はぜひ。
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カマバエ

この夏に出遭った虫の中でも、かなり印象に残っているモノのひとつ。

以前から写真では見たことがあったのだが、実物にはなかなか巡り合えなかった。
それが夏のトンボ調査仕事中、ふと水田の縁を見たら見慣れぬ灰色のハエがおり、“なんか前脚が太いな…”と思って良く見てみたら、なんと憧れの カマバエ じゃないか!

カマバエ

その名の通り、前脚がカマキリのカマのようになっているハエだ。
画像は、調査だったためカメラを持っておらず、サンプル管に入れて持ち帰り帰宅後にケースに入れてから撮影したもの。

大きさは数mmしかなく、その上背中側から見ただけでは前脚のカマも分からないので、普通はまず気付かない。
よくよく見れば顔つきもカマキリのように眼が尖っていて三角形。
この立派なカマを持つからには彼らも肉食性で、他の小さな昆虫を捕食して体液を吸うらしい。

こういう異なる系統の生き物(※この場合はハエとカマキリ)が似たような目的のために同じような形態を持つようになる事を 収斂(しゅうれん) という。
肉食性でカマキリのようなカマの前脚を持つ虫というのは他にもいて、ミズカマキリ(水生カメムシ)やカマキリモドキ(ウスバカゲロウの仲間)などが比較的有名だ。
いずれそれらの虫もブログで紹介できたらと思うが、まずはカマバエさんから。

…ちなみに、カマバエにも何種類かいるそうで、この写真のカマバエが何という種かまでは分からない。
なので、種類の方は「カマバエの一種」としておきたい。

第65回 インセクトフェア(大手町)

来月 9月23日(月)、大手町サンケイプラザにて毎年恒例のインセクトフェアが開催されます。
毎年この日に、サンケイプラザの3F・4Fの2フロアを貸し切って開催されている、世界トップクラスの規模を誇る有名な昆虫フェア(即売会)です。



ご存知の方には今更かもしれませんが、知らない方のために再度簡単に説明しますと、
多くの個人や業者などが1~数卓ずつのスペースを借りて出店する昆虫市です。
お客さんは600円(埼玉は500円なので入場料が少し違います)の入場料を支払って中に入り、あーだこーだと言いながら会場を回り、気に行ったモノ(虫や用品)があったらその場で購入。
値段は各出店者が自由に決められるため、市場価格よりかなり安く手に入る事もあります。
散財しやすい人は、最初に予算を決めておいた方が良いかもしれませんね。
その一方で、値段との折り合いで迷いに迷って購入したら別の人の所でもっと安く売っていた、なんて事もあったりします。
でも「もっと安いのがあるかも」と会場を回っているうちに最初のが売り切れてしまう事もありますので、なかなか難しい。
その辺を含めて「市」を楽しみましょう。
フェアはネットオークション等とは異なり実際に虫を見て選べますし、購入したら意外なオマケを付けてくれることもあります(必ずではないので、期待はしないように)。
販売主とも直接話せますので、飼育や標本作製のテクニックなんかを聞いたり、仲良くなれば「まとめて買うから少し値引いて」なんて交渉をしたりもできます(…値引いてくれるかどうかは相手次第ですが(笑))。
また販売者や来客の中には業界で有名な方も結構いますので、そういった方とお近付きになるチャンスでもあります。

ちなみに、この大手町インセクトフェアは毎年9月23日に開催されています。

大手町インセクトフェア
9月23日(月) 10:00~16:00


大手町サンケイプラザ(→地図
〒100-0004
東京都千代田区大手町1-7-2



…で。
例年、大手町のフェアはお客として会場をフラフラしているだけだったのですが、標本教室の宣伝を兼ねて今年は出展致します
ブース場所はまだ分かりませんが、多分クワガタの展足作業をしていると思いますので、お時間がございましたらお立ち寄り下さい。
また、例によって当ブログに登場した虫の中で、実物をご覧になりたい標本などございましたら、事前にお知らせ頂ければ可能な限りお持ち致します。

亜種とは

「アマミノコギリクワガタの亜種」とか「ヘラクレスオオカブトの亜種」とか、昆虫趣味の世界で「亜種」という言葉をたびたび目にします。

では、この「亜種」とは何でしょうか?

ごく大雑把に言えば、

別種にする程ではないが、明らかに区別できる地域個体群

…という事になります。
ちょっと難しい言い方になってしまいましたが、コクワガタを例に挙げて説明すると、

コクワガタ亜種比較
・本土産コクワガタ
・八丈島産コクワガタ

…この2つはどちらも「コクワガタ(Dorcus rectus)」という同じ種です。
しかし、この2つは大アゴの形状や体型、脚の長さ、色彩などで区別する事が出来ます。
そこで、「同じコクワガタだけど、八丈島にいるコクワは明らかに区別ができる」という事でコクワガタ八丈島亜種となっています。

某仮○ライダーのせいで「亜種」という言葉がかなり間違って浸透したように思っているのですが、亜種とは、個々の色違いや形違いの事ではありません。あくまで地域個体群として区別できる(その地域で採れる多くの個体が同じような特徴を持っていて、他から区別できる)ものを言います。
そのため、同じ地域で赤いノコギリクワガタと黒っぽいノコギリクワガタが採れたからと言って、亜種にはなりません。

亜種に学名を付ける際は属名・種小名の後に更に亜種小名というものを書きます(→学名)。
先程のコクワガタを例に挙げるなら、

コクワガタ:Dorcus rectus
基亜種:Dorcus rectus rectus
八丈島亜種:Dorcus rectus miekoae

…という具合。
最後のmiekoaeが亜種小名。
また、亜種が見つかった場合、最初に記載された地域のものと同じグループを基亜種(原名亜種)と呼び、新たに違いが見つかった地域のものに新しい亜種名を付けます。

ちなみに亜種というのはあくまで同種内のものですから、基本的には交尾して子供を作ることが可能です。
ですので、本土コクワガタとハチジョウコクワガタを一つの容器に入れておけば簡単に交尾して亜種間交雑が起きてしまいます。


…更にちなみに、種と亜種の明確な基準はなく、研究する人によって違った意見がある事もあります。
例えば同じ八丈島にいるハチジョウノコギリクワガタは、現在は本土のノコギリクワガタとは別種とされていますが、記載された当初はノコギリクワガタの亜種としてでした。
また現在でも、研究する人によっては亜種程度の違いしかないと考えている人もいます。

更に、多少地域差があっても亜種と認める程ではない場合「地域変異」とされますが、これも人によって見解が異なり、「亜種にするべきだ」「いや、そこまでの差は無い」と人によって意見が食い違ったりします。

種とか亜種の考え方って、実は結構難しかったりします。

夏の特別企画展 ロクト大昆虫展2013

今回、ちょっと宣伝。
現在(夏休み期間中)、西東京市にある 多摩六都科学館 というところで
「夏の特別企画展 ロクト大昆虫展2013」 という昆虫展をやっています。

六都昆虫展2013

世界のカブト・クワガタを中心に標本展示と、子供向けのカブクワハウス(触れ合いコーナー)があり、虫好きなら親子で楽しめる内容となっています。
また展示標本のカブト・クワガタがかなり大型個体を揃えており、カブクワ好きにはタマラナイ、見応えのあるモノとなっていたり、某有名な須田孫七先生が昔採集されたアカエリトリバネアゲハなど、ガチ虫屋にもたまらない標本があったりもします。

昆虫展-3
正直、標本の質に関しては相当高いです。
箱数や展示規模だけならもっと多い所もあるかと思いますが、質に関してはトップクラスかと思います。

六都昆虫展2013-2


…で、なんでこんな宣伝をしているかと申しますと、実は私も解説員としてシフトで入っております(※毎日ではありません)。
昆虫展の部屋で白衣にメガネの人がいたら、きっと私です。
「虫けら屋さんですか?」とお声を掛けて頂ければ、びびって逃げ出します 解説なぞさせて頂きますので、ぜひ皆様お越し下さい。

詳細は以下リンクにて(※画像の白衣の方は私ではないです(^^;))。

夏の特別企画展 ロクト大昆虫展2013

また、多摩六都科学館は今回の昆虫展だけでなく常設展も色々と楽しめるものが多いので、お越しの際は是非常設展も回ってみて頂けたらと思います。

多摩六都科学館

クロスジギンヤンマ

日本で見られるギンヤンマの仲間は3~4種類いますが、クロスジギンヤンマ もそのひとつ。
空色の複眼と、腹部に散らした水色はかなり美しく、国産ヤンマ類の中でもかなり美しい(※青いのは♂のみ)。

クロスジギンヤンマ

他のヤンマ類より早く4月頃から姿を見せ、また意外と警戒心の薄いトンボなのでヤンマとしては比較的採集しやすい印象があります。
「ギンヤンマかな?」と思って、腹部が青く見えたら本種、クロスジギンヤンマです。
普通のギンヤンマに比べて薄暗い水域を好むので、林に囲まれた池などでよく飛んでいますが、私がよく採集に行く神奈川県某所ではミカン畑に設置された2m四方程度の貯水マスでよく縄張りを張っており、小さなマスの上で行ったり来たりするのでエライ簡単に採集出来てしまいます(笑)

ところで、以前、当ブログでリュウキュウギンヤンマというヤンマを紹介しました(→記事)。
その際、比較にギンヤンマは載せたのですが、クロスジギンヤンマは手元に画像がなくて載せられませんでしたので、今回改めて比較紹介してみたいと思います。
(もう1種のオオギンヤンマは迷蝶ならぬ迷トンボで海外からたまに飛んでくるのみなので、手元に写真がなく…)

まずは背中から。
(※画像はサムネイルサイズなので、クリックしてご覧下さい)
ギン3種比較(背面)
複眼の青さと、腹部に散らした空色紋が特徴的。

更に顔。
ギン3種比較(顔)
鼻の紋はリュウキュウギンヤンマと同じく「H」型ですが、やはり複眼の色がよく目立ちます。

しかしながら、クロスジギンヤンマの場合は何よりも最初の画像で出ている通り、胸部のクッキリとした黒いスジです。
名の由来にもなっているだけあって、これが一番特徴的。
♀は青みはなく緑色になりますが、胸部のこの黒いスジはありますので、すぐ分かります。

7月以降は数が減ってきますので、今年これから探すのはちょっと厳しいかもしれませんが、もし他の虫の探索中に「森に囲まれたような池」を見つけたら、来年の春~初夏にちょっと注意して見てみてはいかがでしょうか。
プロフィール

虫けら屋

Author:虫けら屋
もっぱら採集中心の虫屋さん。当初は東京で発生が確認されたが、後に埼玉県に移入、現在は千葉県での生息が確認されている。
肉眼で見て楽しめるぐらい大きなミーハー虫が好き。

Blog内の写真・文章等については、少しの引用的転用ぐらいならOK…と思っていたのですが、なんか最近フリー素材か何かと勘違いされているフシがあるので、今後は勝手に使わないでね。

※お問い合わせを頂く際はEメールにてお願い致します(採集ポイント等についてはお答えできかねますが…)。なお、採集遠征等により、お返事まで数日以上掛かる場合もございますので予めご了承下さい。
   ↓↓↓
akepon6464@yahoo.co.jp

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