スジブトヒラタクワガタ

「奄美のクワガタを何かひとつ挙げて」と言われたらコレを思い浮かべる人も多いだろう。
スジブトヒラタ♂
スジブトヒラタクワガタ
ガッチリとした幅広の体格と太い大アゴ、そしてその名の示す通り背中にはハッキリとした太いスジ。
“大型の♂でもこのスジがハッキリと出るヒラタ”というのは世界的にも珍しいのだが、♀の背中は更にすごい。
太いスジの間は細かくザラザラした質感になっており、もやは彫刻、芸術的とさえ言える。
スジブト♀背面
…ちなみに、♂の背面のスジは大型でもちゃんと出ているが、小型個体ほど強く出る傾向がある。
スジブトヒラタ♂背面

さてこのスジブトヒラタクワガタ、成虫の寿命が長い(1~3年)ので5月~10月ぐらいまで普通に見られる(冬でも少ないながら見られる)ようだが、実は トラップで採れる大型個体は梅雨明けが圧倒的に多い
お盆時期に採集すると30~40mm台の小粒な個体ばかりで、50mmを超えたら「デカイ!」と喜んでしまう程。
おそらく梅雨明けに一気に新成虫が活動を始めるために、棲み家となるウロを見つけるまでの間エサを求めつつ歩き回っており、その個体がバナナトラップにも集まるのだろう。しかし、しばらくすると大型個体は安全なウロを見つけ、そこから離れなくなってしまうのでバナナトラップには滅多に来なくなってしまうのだろう。一方、ウロなど条件の良い場所を棲み家に出来ない小さな個体は、シーズンを通してバナナトラップなどにも集まる、と。
2012年の初夏はスジブトヒラタの大当たりではあったものの、それを差し引いても大型個体の率が高かった。
♀はサイズの大小に関わらずお盆時でも採れるので飼育用の種親個体を得るだけなら全く問題ないが、♂の大型個体を狙いたいのであれば間違いなく梅雨明けが良いようだ。


…ちなみにこのスジブトヒラタ、実は奄美大島では“超”の付くド普通種なので「採集する」だけなら容易い。
条件の良い場所にバナナトラップを数日間仕掛けておけばこんな状態になったりすることもある。

…さて、この写真の中に何頭のスジブトが写っているか、分かるだろうか?
(※画像が小さいので、かなり分かりづらい個体もいます)
スジブトatバナトラ

※答えは、下のサムネイル画像をクリック!















スジブトatバナトラ(解答)
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チョウの標本の作り方

久しぶりに原点回帰(?)で、標本の作り方。
きちんと書かなきゃな、と思いつつ保留になっていた「チョウの標本の作り方」です。

標本を作る際、クワガタのように主に脚の形を整えるのを展足(てんそく)」または「展脚(てんきゃく)」と言うのに対し、チョウなどのように主に翅(ハネ)の形を整えるのを 「展翅(てんし)」 と言います。

展翅には、展翅板と展翅テープという道具を使います(※道具詳細はこちら)。
展翅板と展翅テープ

まず展翅作業を始めるための準備として、展翅テープを展翅板の中央溝にピッタリ沿うように上を針で留めます。
展翅-01
紙製のテープなどで弱い場合は、先を数回折り返して補強してあげると破れにくくなります。
これで準備完了。

まずは、チョウに昆虫針を刺します。
展翅ー02
針を刺すのは胸部の真ん中、また前から見ても横から見ても針がチョウの体に直角になるように刺します。
針を刺したチョウを展翅板に留めます(※展翅板の溝の底にはペフやコルクなど針が刺さる部分がありますので、そこに針をしっかり刺します)。
展翅-03
せっかくチョウに昆虫針をまっすぐに刺しましたので、展翅板にも斜めにならないように気を付けて刺します。

この状態からチョウの翅を整えていくワケですが、チョウやガの翅は鱗粉(りんぷん)という粉に覆われており、指で触ったりするとその粉が剥げ落ちてしまいます。
そこで、その損傷を極力少なくするため、展翅の際は細い針を引っ掛けて(刺さずに引っ掛ける)、ハネを押し上げて形を整えます。

昆虫の翅には、木の葉っぱのような脈があります。
虫の種類によってこの脈筋は色々異なるのですが、チョウやガの脈筋は、おおよそこんな感じに走っています。
(※下のサムネイル画像をクリックして頂くと、より大きな画像で見られますので翅脈が分かりやすいかと思います。)
展翅-04
翅脈
そこで、この翅脈に針を引っ掛け、ハネを押し上げます。
特に、前縁の緑色の点線を引いた翅脈は比較的太く強いので、ここに針を引っ掛けます。

展翅ー05
クワガタ等と違い、チョウやガの翅は薄いため、力加減を間違えると簡単に破れてしまいます。
しかし加減を言葉で説明するのも難しく、いくつも標本を作って練習し、自身で加減を掴んでいくしかありません。

また、外側から引っ掛ける以外にも、内側から針を入れて展翅する方法もあります。
内外どちらが正解というものでもなく、個々人でやりやすい方を選択すれば良いかと思います。
展翅-06

…ちなみに、利き手と逆側の翅を展翅する場合は、無理に反対の手でやっても上手くいきませんので、展翅板を逆さまにして行うとやりやすいかと思います。
逆さ展翅

後翅も同じように持ち上げ、バランスを整えます。
後翅のバランスはチョウの種類や個体によっても異なるので一概に言えず、図鑑やネットの画像などを参考にされるのが良いかと思います。
展翅-07
触角も、出来るだけまっすぐになるようにして展翅テープの下に挟み込みます。

あとは、腹部が上がっている場合は針を十字にしてまっすぐになるように押さえ、下がっている場合はティッシュなどを丸めてお腹の下に入れて枕にし、まっすぐにしてやります。
展翅-08

この状態で1~2ヶ月ほど乾燥させれば筋肉が乾いて動かなくなりますので、押さえた針を抜いて展翅板からチョウをはずし、ラベルを付けて標本は完成です。
乾燥の際は、陽の当らない風通しの良い場所に保管しましょう。
展翅-09


乾燥やラベルについては、以下リンクも併せてご参照下さい。

ドライボックス
データラベルの書き方
データラベルの作り方

ええ、毎年の事ですが…

オオスズメバチ雄蜂(おすばち)の季節です(^^;

先日、杉並区某所を歩いていたところ、民家のツバキの花にスズメバチが飛んでくるのが見えた。
ツバキの花の蜜を吸いに来たようで、花に頭を突っ込んでしばしとまって、また飛んでは次の花にとまり…を繰り返している。
少し高い位置だったのだが、サイズ的に明らかにオオスズメバチだったので“もしや”と思ってよくよく見れば、お尻の先が尖っていない。…やはり♂だ。

網かビニール袋でも無いかとザックの中を探るが、あいにく捕獲に使えそうな物が何もない。
ならば…と、ハチが低い位置の花にとまったのを手を伸ばして 鷲掴み
杉並オオスズメバチ♂
頭や肩が黄色い花粉まみれになっているが、間違いなくオオスズメバチの♂だ。
刺す真似はするものの♂は針がないので刺せないのは先刻承知、噛まれてもさして痛くないのも先刻承知。
雄蜂は花にも来ると聞いていたが、実は花で採集したのは今回が初めて。
ついでに、手掴みで捕まえたのも実は初めて。…いつもは飛んでくるのを捕虫網で捕まえてから手で掴んでいたので、いきなり素手で捕まえたのは初めてだったりする。

そして、この個体は現在自宅にて観賞用に飼育中。
オオスズメバチ♂飼育中
クワガタ幼虫飼育に使われるポリ瓶(駄菓子屋の酢イカが入ってるようなヤツ)に、足場のティッシュペーパーと昆虫ゼリーを入れているのだが、10時~14時頃に活発にブンブンいって、その後大人しくなってゼリーを食している。
活発に飛ぼうとする時間帯は野外での観察・採集の時とだいたい同じ。そしてその前後に結構頻繁にゼリーを食べているので、活動にはかなりのエネルギーを消費するらしい。…実際、餌ナシだと1日程度で死んでしまう。

…そう考えると、個体数が多い地域であれば、林の近くにあるツバキなんかで待っていれば日に数頭ぐらいは雄蜂が飛んできそうだ。
そういうチャンスがあるなら、雄蜂の野外生態写真も撮ってみたい。
あとは、良い場所を見つけられるかどうか、だ。


採集や野外観察で分かること・飼育観察で分かること・標本観察で分かること、それぞれ異なる。
どれかひとつやっていれば完璧というものではなく、それぞれに長所も短所もある。
「捕まえなくても野外で観察して写真を撮れば良い」というのは虫の生活の一端しか見られないと思うし、標本だけ見て全て分かった気になるのも違うと思う。
虫のことをより深く知りたいと思うなら、色々な方法で観察してみることが大切。

ヒゲブトハナムグリ

この大きな触角とつぶらなお目々の可愛いコガネムシは、ヒゲブトハナムグリ という。
ヒゲブトハナムグリ-1
名前にハナムグリと付くが、分類的には原始的なコガネムシの一派らしく、ハナムグリとは異なるそうだ。
八重山諸島には、これを赤やら青やら緑やらに美しくしたオオヒゲブトハナムグリという虫がいてとても人気が高いのだが、このヒゲブトハナムグリだって十分に魅力的だ。

春の一時にしか見られないコガネムシで、大きさは1cmほど。
2週間程度と短い期間しか見られない虫で、ハルジオンなどの花粉を食べつつ晴れた日の日中に活発に飛び回って♀を探す。
ヒゲブトハナムグリ-3

何処にでもいるワケでもないのだが、案外身近に居たりすることもある、どうにも生息ポイントを予測しづらい虫だ。
初めてこの虫を見たのは埼玉の武蔵丘陵の辺りで、他に高尾山周辺でもたまに見掛けるので比較的自然の多い場所にある“まばらな草地”に見られる……と思っていたのだが、一昨年、自宅から自転車で30分ぐらいの場所で発生地を見つけてしまい、とても驚いた。
そこは雑木林に面したツツジ植栽畑(?)の脇の荒れ地で、キク科などの雑草が生える場所の片隅だった。

数頭を見つけて、はと気付けば周囲にいくつも飛び回り、歩き回っている。
ざっと見て数十頭、草地全体では100頭以上が飛んでいるだろうか。
ヒゲブトハナムグリ-2
♀は見つけづらい虫なのだが、さすがに100頭以上の♂が飛び回っているような場所ならば見つかる。
土が露出した部分を見ながらゆっくり探してみると、緑がかった前胸背の♀と、交尾しようとする♂の姿。
ヒゲブトハナムグリ交尾

…飛翔撮影もできて♀も複数見つかり、存分に楽しませてもらい、「来年、また撮影しよう」と場を後にしたそのポイントは、半年後に工事現場の白い鉄板壁に覆われてしまった。
プロフィール

虫けら屋

Author:虫けら屋
もっぱら採集中心の虫屋さん。当初は東京で発生が確認されたが、後に埼玉県に移入、現在は千葉県での生息が確認されている。
肉眼で見て楽しめるぐらい大きなミーハー虫が好き。

Blog内の写真・文章等については、少しの引用的転用ぐらいならOK…と思っていたのですが、なんか最近フリー素材か何かと勘違いされているフシがあるので、今後は勝手に使わないでね。

※お問い合わせを頂く際はEメールにてお願い致します(採集ポイント等についてはお答えできかねますが…)。なお、採集遠征等により、お返事まで数日以上掛かる場合もございますので予めご了承下さい。
   ↓↓↓
akepon6464@yahoo.co.jp

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