虫目

鳥目というのは夜目が利かないことを言うが、虫目というのは別につい光に引き寄せられるとか、そういう意味ではない。
虫屋さん(→虫屋とは)がよく使う言葉のひとつで、昆虫を目ざとく見つける目(能力?)のことを言う。

本当のところは目というより観察力・注意力的なモノなのだが、「虫を見つける特殊な目を持っている」という意味を込めて 「虫目(むしめ) と呼ぶ。
これを持っているか否かで採集の成果が大きく変わることもある、虫屋にとっては重大なモノだ。
タテジマ1号

虫好きな人が、そうでない方から「なんでそんなに虫を見つけられるの?」とか「なんで気付くの?」と言われるのは、この能力が理由の一つである。
人によってこの虫目は少しずつ性能が違うようで、チョウばかり見つける人もいれば、カブト・クワガタばかり見つける人もいるし、昆虫全般に目ざとい人もいる。
…ちなみに自分も比較的良い虫目を持っていると思っている。

どういうモノなのか人によって違っているようで一概には言えないのだが、自分に関して言えば、「違和感」「虫の姿記憶」というのが一番イメージに近い。
視界の中に少しでも違和感を感じると、つい目がそれを追ってしまう。
更に、意識しているか否かに関わらず頭の片隅に常に虫のことがあるので、「虫っぽいモノ」が目に入ると瞬時にセンサーが働く。
「白い壁にあった黒い点」「蛾っぽい形のシルエット」「クワガタの大アゴっぽい形の何か」そういうモノに、自動センサーが働いてしまうのである。
お喋りしながら歩いていても、「何かいた気がする」と思って視線を戻してみると、そこに虫がいたりする。
無論、よく見たらただのゴミだったりとかハズレも多いのだが、一方でその虫目のおかげで良い虫を見つけて大喜びしたコトもある。

ただ、「どうやったら虫目になれるの?」と聞かれると困ってしまう。
多分、虫目というのはなろうと思ってなれるモノではなく、好きで好きでたまらなくて探したりし続けるうちに、結果として“なってしまう”モノなんじゃないかと思っている。

それが『虫目』である。
…さて、じゃあその虫目を活かすべく、ちょっと虫採りでも行ってこようか。







…ちなみに、虫目にオン・オフ機能はないので四六時中センサーが働き、「絶対にいるハズのない状況で、一瞬虫の姿が見えてしまう」こともある。
街中で、ビルの壁に特大クラスのミヤマクワガタが付いているのが見えて、ビックリして確認しに行ったら枯葉とその影だった…とかね(汗)
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命がけのお見合い

カマキリの交尾は、♂にとっては命懸けだ。
♀に気付かれないように忍び寄り、ヒョイと飛び乗って交尾をする。
安易に前から近付こうものなら獲物と認識されて、捕まって食べられてしまう。

だが、ここに、その♀に見つかってしまった♂のコカマキリがいた。

上にいるのが♀、下にいるのが♂だ。
コカマキリお見合い-1
両者、見つめあったまま動かず。
上にいる♀は明らかに♂に気付いており、じっと睨みつけている。
カマキリは動くものしか認識しないため、獲物がじっとしていると見つけられないのだ。
♀は、獲物が動くのをじっと待っている。

一方のオスは、不用意に近付けば獲物と認識されて食べられてしまう。しかし、交尾のチャンスは逃せない。
♀が諦めて気を逸らすのをじっと待つしかない。
まさに 命懸けのお見合い である。


…♂の方が、ちょっと堪え性が無いみたいではあったが。
コカマキリお見合い-2







<オマケ>
同日見つけたコカマキリ♀(上の画像とは別個体)。
コカマキリは通常、薄茶~焦げ茶色とほとんどが褐色系の色をしているのだが、稀に緑色型がいる。
だが、どうやらこんなツートンカラーになる個体も出るらしい。
ツートンコカマキリ♀
頭や首(前胸背)は緑色で、ハネは薄い茶色。
…でも正直言って、「どうせなら全身緑になってくれよ」と思った。

アオドウガネ

夏になると、町中の明かりに飛んでくる緑色のコガネムシ。
アオドウガネ。
アオドウガネ
背中側は緑一色・お腹側は赤茶色という比較的単調な色合いと、普通種を通り越してそこら中にいるせいであまり顧みられることは少ない。
しかし、よく見てみると背面の緑色には深い輝きがあり意外と美しい。
…古いコンデジでは、その美しさを上手く写せないのだけど。
アオドウガネ-2

今でこそ関東辺りではすっかり普通種になってしまったアオドウガネであるが、元々はもっと西の方にしかいなかったコガネムシだった。
自分が初めてこの虫を見たのは、多分小学生の頃。
パチンコ屋の下から照らす強力な照明に、前日夜あたりに飛び込んで熱で焼かれて死んでしまっていた個体だったと思う。
夕方でまだ照明が点く前で、ライトのガラス(?)板の上に転がった緑色のコガネムシを見て、
「なんだこのコガネ!初めて見た!すげーキレイ!」
…とちょっと興奮したのを憶えている。

ちなみにこのアオドウガネ、背面の緑色にはやや変異があって、個体によって美しい緑から少し赤みがかってくすんだ緑色まで色々ある。
そんな中で、先日こんな個体を見つけてしまった。

アカドウガネ
真っ赤なアオドウガネ。
今まで、目撃だけのモノも含めるなら1,000頭以上のアオドウガネを見てきていると思うが、こんな色の個体を見たのは生まれて初めてだった。
もはやアオドウガネではなくアカドウガネだ。
ごく稀に出る色彩変異のようだが、ド普通種でもこういう事があったりするから昆虫は侮れない。


追記:
こういった思わぬ色彩変異は他の虫でも起こるようで、過去に「カナブン」「黒カナブン」という記事も書いているので、よろしければそちらもドゾー。
 ↓↓↓
カナブン(2012年4月3日)
黒カナブン(2013年12月8日)

弱肉強食の世界

先日都内某所の森を歩いていた時、ふと足元を見ると地面にスズメバチの姿。
一瞬慌てそうになったが、どうも様子がおかしい。
歩くばかりで飛ぶ様子もなく、「?」と思ってしゃがんで見てみれば、コガタスズメバチのオス蜂だった。
コガタスズメバチ♂-1
「おっ!オス蜂!」とよくよく見れば、右のハネが根元近くから千切れてしまっている。
鳥にやられたのか、虫にやられたのか、はたまた別の原因なのか分からないが、こうなってしまってはもはや飛ぶことも適わない。
新女王蜂と出遭うこともなく、歩き回るだけで死んでしまう運命だ。

昆虫の世界は弱肉強食。
スズメバチと言えど、こうなっては生きる術(すべ)は無い。
しばらく眺めていると、獲物の匂いを嗅ぎつけたのか、1頭のクロヤマアリ クロオオアリ(※誤同定を訂正しました)がオス蜂に食い付いた。
コガタスズメバチ♂-2
コガタスズメバチに比べれば遥かに小さなアリ、普段なら羽ばたきのひとつで吹き飛ばして空に逃げられるのだろうが、右のハネを失い歩き疲れた蜂にはどうすることもできない。
ひたすら歩いて逃げようとするが、アリも食い下がる。

…と、この時は、自分が観察していることに勘付いたのか、しばらくしてアリが諦めて離れていってしまったが、このオス蜂は遠からず同じように襲われてしまうのだろう。
せめて踏まれないようにと藪の方へ移しておいたが……今日現在、もう生き延びてはいないだろうなと思う。

東北プチ遠征~クワガタ編~

※いくつか記事を挟んで少し間が開いてしまいましたが、東北プチ遠征の続きです。




朝起きると、昨日以上に空気はヒンヤリとしている。
まずは手近なヤナギを見るが、流石にいない。
車中泊でガチガチに固まった体をしっかり伸ばしてから再び車に乗り込み、ゆっくりと走り出す。

ヤナギを中心に枝先まで睨みながらゆっくりと車を流す。
10分程走ったところでヤナギが固まって生えているので、一度車を下りてじっくり探す。
…すると、
「いたっ!」
ヤナギをよく見る
…って、どこにいるか分かるだろうか?

実は、写真のほぼ真ん中、枝に付いている黒いコブのようなのが“ソレ”
※良く分からない方は、下のサムネイル画像をクリック!
ヤナギをよく見ると…

…が、これは♀単体なので採集せずに撮影だけしてスルーする。
だが、探索開始早々に見つかるとは「幸先良し」である。
気を良くして道を進む。
前回と状況が変わっていなければ、今回も結構な数が見つかる期待は高い。
轍にタイヤを取られないように気を付けながら、ヤナギやカンバ類を睨みながらゆっくりと走る。
林道
…が、いない。
最初の1♀以降、続く個体が見つからない。
デコボコのダート道を数十分走り、ようやく2頭目の♀を見つける。
今度の個体は目線の高さ。
だが♀単体のものを採るつもりはないので、♂がいないかと目を凝らして枝を睨んでいくと、♀から30~40cmほど下にもう1頭付いているのが見えた。
ヒメオオ♂
…分かりづらい、という方のために拡大写真を。
ヒメオオ♂拡大
大アゴがはっきりと確認できる。
♂だ!
低い位置なので落とさないように気を付けながら素手で掴む。
小ぶりだが、ようやく1♂である。

それにしても、やはり前回より個体数が少ない気がする。
悩みながら進んでいくと、明らかに目立つ場所に立派な個体が付いているのが見えて慌てて急ブレーキを踏む(…と言っても、時速5kmぐらいしか出してないけど)。

…が、何か様子がおかしい。
ヒメオオ…?
大アゴで枝に噛みついたまま、脚が宙に浮いている。

?????

頭に疑問符を5つぐらい浮かべながらも、とりあえず長竿を伸ばす。
そしてクワガタの下側から小突いてみる……
…と、大アゴを支点にクリンと体が跳ね上がる。
「ええっ!?」
ガリガリやって何とか網の中に落とし、手元に戻してみたら…

死んでる…

え…?

枝に噛みついたまま死んでるとか、何…?

だがしかし、その不可思議な死に方も理解不能だが、手に持って見たサイズがまた理解不能。
ヒメオオ特大死骸
55mm…?

えっ?
55mmって何?
ウチにある標本て、確かMAX53mmだったハズよ?
55mmってドウイウコト…?
えっ…?

触角も前脚フ節も両方欠けてしまっているが、……捨てられない。
未練がましく毒ビンに入れておく。

それから葉を齧るコブヤハズカミキリなんかを見つけつつ…
コブヤハズの後食
しばらく行くと、明らかにヒメオオクワガタの齧り痕が多数ある一角を見つけた。
だが、痕跡ばかりで肝心の個体がいない。

どうにも、少し前に他に採集者が入ったような気がする。
今日先に入っている、という程ではないのだが…どうも「先行者の採りこぼしを摘まんでる」感が否めない。
齧り痕の多い辺りをウロウロしながら近い木・遠い木と様々に目を凝らす。

…と、7~8m奥手の木の高所にヒメオオクワガタの姿。
道から10mの長竿を伸ばしても届きそうにないし、下は斜面で灌木が生い茂っている。
一瞬迷ったが、行くか!と覚悟を決めて、突入。
斜面で灌木が多いので少々歩きにくいが、下草は無い。
上が見づらくヒメオオの位置を確認できないが、なんとか“その木”に辿り着き、葉の隙間から上を覗くと、なんとか姿を確認できた。
長竿をスルスルと伸ばし、下から小突く。
…と、♂が逃げる。
「あっ!このっ!」
枝の上側に回り込み、採りづらいコトこの上ない。
網枠で枝を擦ったりしながら何とか網に落とそうと悪戦苦闘していると、ポロッと落ち……♀だけが網の中に入る。
♂はというと、少し下の小枝に引っ掛かっている。
…ならばと網枠でそのまま小突き、♂を落とすと足元から1mほど離れた場所に落下。
拾い上げてみると、思った以上に大きい。
「おっと、コレは50は超えたな…!」
ヒメオオ54mm
…なんて喜んでいたのが思った以上に大きく、これが今回、生きた個体では最大となる、53~54mmの♂だった。
面倒でも藪漕ぎして正解だった。

クリープ現象と変わらない速度でゆっくりゆっくりと走りながら、ヤナギやカンバに付いたヒメオオクワガタの姿を探す。
見つけづらい位置にいるものが多いが、それでもポツリポツリとは見つかる。
ヒメ色々
十数頭を見つけて林道の突き当たりまで行き、ふと時計を見るともう良い時間。
今日は(珍しく)宿を取ってあるので、切り返して宿へと向かう。


珍しく旅館でゆっくりと車中泊の疲れを癒し、採集なのに珍しく温かいご飯を食べ、翌日朝9時前にはチェックアウト。

新しいポイントを探すものの、どうも杉植林だったり、伐採された後の若い林だったりと環境が今ひとつ。
ヒメオオクワガタはブナなどの大木が枯れた朽ち木を幼虫が食べるので、ブナ・ミズナラなどの大木とその立ち枯れがあるような環境で、成虫はヤナギやカンバなどの若木の枝を齧っている。
なので、伐採されて大木がなく、若い木ばかりの林だとあまり姿を見られないように思う。

ならばと環境が残っている舗装道路沿いを少し探してみたところ、数頭を確認。
橋沿いのヤナギの木に付いていたりと、ここ周辺の個体数の多さを改めて確認。
今日は家まで帰らねばならず、あまり遅い時間まで探索しているワケにもいかないため、最後に大型個体以外をリリースしてポイントを後にした…













………………ハズが、ポイントを後にしてしばらく走ってもうヒメオオが明らかに居ないような場所まで来てから、はと思い出す。

「一部リリースし忘れてた!Σ(゚Д゚;)」

…それが、先日のインセクトフェアで「御希望の方に…」とお渡しした個体。
プロフィール

虫けら屋

Author:虫けら屋
もっぱら採集中心の虫屋さん。当初は東京で発生が確認されたが、後に埼玉県に移入、現在は千葉県での生息が確認されている。
肉眼で見て楽しめるぐらい大きなミーハー虫が好き。

Blog内の写真・文章等については、少しの引用的転用ぐらいならOK…と思っていたのですが、なんか最近フリー素材か何かと勘違いされているフシがあるので、今後は勝手に使わないでね。

※お問い合わせを頂く際はEメールにてお願い致します(採集ポイント等についてはお答えできかねますが…)。なお、採集遠征等により、お返事まで数日以上掛かる場合もございますので予めご了承下さい。
   ↓↓↓
akepon6464@yahoo.co.jp

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