栃木タガメ探訪

正直、出発の直前まで悩んだ。
奥多摩に行くか、栃木に行くか。幻のキンカメを探すか、タガメの卵を探すか。

…が、結局天気予報があまり良くない(奥多摩:ドン曇り/栃木:曇時々小雨)ことからキンカメはかなり活性が落ちて、ただでさえ幻なのに尚更探しづらいと判断し、6月18日の深夜1時頃に家を出発した。

~今回、1回でまとめたらかなり長くなってしまったので、お時間のある時にのんびり読んで頂けたらと思います。~

東北自動車道を快調に飛ばし、途中の上河内SAでETC専用ICに灯火が点いていたのでちょっと見ていたらガムシ(ナミガムシ)が落ちており、せっかくなので拾う。で、他にも何か落ちていないかと見回っていたら、ICのゲートの所で
『すみまーせん、お客さん』
いきなりスピーカーから飛び止められる。何かと思ったら、
『センサーがあるので、歩く時は気を付けて下さい』
と。
…ありゃ、失礼しました。
スピーカーに向かって謝ってから、再びポイントへ向かった。

現地に着いて橋の灯火を見に行ってみると、コガネムシ(ナミコガネムシ)がポロポロ落ちている。
橋の灯火の昆虫たち
いつもは秋にしか来ていなかったので、こんなにコガネムシが来るとは知らなかった。
…と、車に轢かれた1頭に違和感を感じて見てみれば、

コガネムシ赤
赤ぁぁぁあッ!
…コガネムシは通常、緑の美しい金属光沢をもっているが、ごく稀に赤くなる個体がいる。
実は自分も赤色個体を見るのはこれが初めてで……なんでレアなのに限って轢かれてんだよ!!

翌朝、まずは個体確認をと思い、一番確率の高そうな水路をガサガサ(水の中に網を入れて水草などをガサガサやって水生昆虫などを狙う)する。
タガメ水路
秋だと水田の水が抜かれた後なので大きな水路の残り水などに入っていることが多いが、田植え時期の今は大きな水路はドウドウと水が流れており、とてもタガメが生活できる状態ではない。
なので、草が生えて淀んだ小さな水路を狙う。
オタマジャクシやコオイムシがいくつも網に入る中、虎島模様の小さな虫が入る。
タガメ幼虫
一緒に写っているオタマジャクシとの比較でもかなり小さい事が分かるが、実際の大きさは1cmぐらい。

…実はこれ、タガメの若齢幼虫。

同じ幼虫でも成長するとこの模様は消えてしまうのだが、初期の幼虫にはこんな模様があるのだ。
良く似たコオイムシの幼虫(写真右下)にはこの模様はないので、小さい幼虫でも見分けは簡単。
更にガサガサを続けると、水路の一番端の辺りで大きなのがゴロンと網に転がり込む。

タガメ成虫
タガメの成虫だ。
サイズからすると♂のようだが、後で要確認。

さて、とりあえず成虫を確認することが出来たので、次の段階へ。
タガメとは「田亀」であり、せっかくなら水田にいる個体を探したい。“水路ガメ”ではなく“田ガメ”を。
…だが、水路と違って水田は周囲一帯に広がっており、何処をどう探せば良いやらサッパリである。
特に水田の中の方は探しようがないので畦を壊さぬように慎重に歩きながら怪しい場所に網を入れてみるが、やはり簡単には見つからない。
空梅雨のせいか中には水のない水田もあるので、ある程度の水深がある水田を狙って1枚ずつ丁寧に周囲を回りながら探していく。

そうして2時間ぐらい探したところで、水に沈んだヨモギの株をそっとどかしたところ、ようやくその下に隠れたタガメを発見!

タガメ田ガメ
これぞ正真正銘の“田ガメ”だ。
ちょっと遊んで水中写真なんかも撮ってみたが、コンデジな上にやり方がチャチなのと水の透明度が低いのとで、これが精一杯。
タガメ水中写真

さて、それでは今回の最大の目的であるタガメの卵探しに入る。
まだイネは小さく、タガメが産卵できる程の強度はない。だが、既に幼虫がいるという事は何処かに産卵しているという事だ。
一体何処に…?
多少とも育っているイネの株や用途不明の細い杭などを丹念に見ていくが、卵はおろか成虫・幼虫の姿もない。
コオイムシ・マルガタゲンゴロウ・コシマゲンゴロウなどは見られるが、肝心のタガメの姿はない。

昼を挟んで探索を続けること数時間、草が生えて水が淀んだ水路の中に立ち枯れた草に………それを見つけた。

「あった!!」
タガメ卵塊
一瞬スルーしそうになったものの、よくよく見れば小さな粒には独特の縞模様。
間違いない、タガメの卵だ!
よくよく見れば、下の水面下にガードの♂の姿もある。

これは、夜になれば卵塊ガードをする♂を野外で見られる…!

しばし探索を続け、やがて辺りが薄暗くなってきた頃に一度様子を見ようと卵塊を見つけた近くまで行ってみると、……ポイントのまさにその場所でワゴンが停まり、2人組が水路で何かしている。

「え…」
物凄く嫌な予感。

…だが、とりあえずは晩飯を買いに行く事にする。
そうして不安を抱えつつ晩飯を済ませ、やがて日も落ちて辺りもすっかり暗くなった頃に再びその場所に行ってみると、ワゴンはいなくなっていた。
嫌な予感を抱きつつも期待を込めてその場所に行ってみると…


卵塊が枯れ茎ごとぶっこ抜かれてる…!

無残に引き抜かれ、水に浸かったまま水路の中に浮かぶ卵塊。
そして、その近くにでまるで呆然と佇んでいるかのようなタガメの成虫。
タガメの心情など分かるハズもないのだが、その姿はまるで
「俺は…この卵を守っていたハズだったのに…」
とでも言っているかのようで…。

最初、卵塊が見つからなかったため採集業者でも来て持って行ってしまったのかとも思ったが、そうではなく、どうやら耕作のための水路整備らしかった。
草が生えて流れが淀んでしまった水路を、草を抜いてキチンと流れるようにする。
そう思って見てみれば、辺りにあった他の水路内の草も引き抜かれている。
耕作用の水路整備となれば、草を抜かれても仕方がない。

しかし…それにしたって…何て最悪なタイミングだ…

ガックリとうなだれるしかなかった。

現在住んでいる埼玉からこのポイントまでは、極端に遠いとまでは言わないものの気軽に来られる距離でもない。
今回の様子からするに産卵シーズンはまだしばらく続きそうではあるが、今シーズン中にもう一度来ようという気にはなれない。
来年以降に改めて挑戦するしかない。
…幸か不幸か、産卵時期はだいたい分かったし、もう少し遅めに来れば卵塊ももう少し見つけられそうな気もする。
今一度チャレンジして、今度こそ卵塊をガードする♂の写真を狙ってみよう。


ちなみに今回見つけたタガメ成虫は全部で7頭。
数よりも条件(水田の中とか卵とか)で探していたので、成虫の個体数目的で探せばもう少し見つけられたとは思うが、まぁ十分な数である。
自分用と知人へのお土産用で2ペアをお持ち帰りし、他3頭はリリースもしくは採集せずにスルーしてきた。



~オマケ~
雨乞いアマガエル
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タガメ

目的の虫が入らなくてもがさがさは楽しいですよね?
卵を守る親タガメを見たかったですが、農家の人がやったのであれば、
しょうがないですね。
我々、虫屋にとっては、農家の人は、虫の採れる場所を提供してくれる大切な方々ですからね。
タガメの親ともども卵が持っていかれなくてよかったです。

Re: タガメ

>モモンガさん
水生昆虫、オタマジャクシ、イモリ…ガサガサは何が入るかワクワクしますね。

タガメの卵は、数時間は水に浸かってしまったので死んでしまっている可能性もありますが、一応持って帰ってきました。
あのままにしておいても水路で流されるだけなので。
孵化したら…………どうしよう…(焦)

No title

孵化したら送ってください(爆)

こちら長野では絶滅したという、まだ不確かな情報が最有力の難関種です。
最近の飯山のオオルリシジミのように再発見を狙って探し続けていますが、約10年前に立科町で一個体、偶然見かけたのみで以後の自己記録はありません・・・。
いわゆる珍種(おもにかつての普通種)って、周辺の都道府県には結構産地があるのに、長野は難しい場合が多い地域な気がしています。
もともと生物層が違うのが一番の由来ですがw

一度、産卵している光景を見てみたい種類ですね!

Re: No title

>ふうけぃ☆風敬さん
宛名は「長野県 ふうけぃ☆風敬 様」で届きますか?(笑)

ナミゲンゴロウが生き残っている長野県ですから、タガメも何処かで生き残っていて欲しいですよね。
今までタガメを見た経験からするとタガメは明らかに夜の方が活発なので、怪しい場所は夜に探してみた方が確率が上がるかもしれません。
昼は泥の中や水路の草の中などに隠れているタガメが、夜になると水面近くに上がってきており懐中電灯を持って探すと姿を見つける事が出来ます。
個体数が少ないような場所では、昼間にガサガサするより夜に目視で探す方が見つけやすいかもです。

取材依頼

いつも楽しく拝見させております。
私ですが、BS放送で釣り番組を制作しております釣りビジョンの
武笠と申します。
この度ですが、突然のメールで誠に申し訳ございませんが、
取材のお願いをしたくご連絡させて頂きました。
詳しいお話を聞かせていただきたいのですが、
可能でしたらご返信ください。
何卒、宜しくお願いいたします。

Re: 取材依頼

>武笠様

この度は丁寧なご連絡を頂き、ありがとうございます。
当方outlookを設定していないため、入力頂いたメールアドレスから立ち上げられず、メールではなくコメント欄からお返事させて頂きます事を何卒御了承下さい。

取材との事ですが、もう少し詳しくお話をお聞かせ頂けますでしょうか。
本記事から御連絡頂いたということでタガメ関係のお話しかと存じますが、タガメは採集圧の掛かりやすい昆虫のため情報等デリケートな部分もありますため、まず御依頼の取材内容につきましてお話をさせて頂けたらと存じます。
E-Mailでしたら、以下アドレスにお送り頂けましたらメールにてご連絡させて頂きますので、よろしくお願い致します。
 ↓↓↓
E-mail:akepon6464@yahoo.co.jp

御連絡をお待ちしております。

はじめまして。いきなりのコメント失礼します。当方中学三年の男子です。学校の研究論文で、タガメ等の水生昆虫について調べています。いろいろとお聞きしたいことがあります。もしよろしければご返信下さい。

Re: タイトルなし

>松本様
ちょっとバタバタしてお返事が遅れました。すみません。

はじめまして。
水生昆虫に…ですが。私もそこまで詳しいワケではありませんが、どういったご質問でしょう?
コメント欄でのやりとりが大変でしたら以下のメールアドレスに送って頂いても構いません。
お待ちしております。

akepon6464@yahoo.co.jp

ありがとうございます。
メール送らせていただきました。
プロフィール

虫けら屋

Author:虫けら屋
もっぱら採集中心の虫屋さん。当初は東京で発生が確認されたが、後に埼玉県に移入、現在は千葉県での生息が確認されている。
肉眼で見て楽しめるぐらい大きなミーハー虫が好き。

Blog内の写真・文章等については、少しの引用的転用ぐらいならOK…と思っていたのですが、なんか最近フリー素材か何かと勘違いされているフシがあるので、今後は勝手に使わないでね。

※お問い合わせを頂く際はEメールにてお願い致します(採集ポイント等についてはお答えできかねますが…)。なお、採集遠征等により、お返事まで数日以上掛かる場合もございますので予めご了承下さい。
   ↓↓↓
akepon6464@yahoo.co.jp

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