春の蛾を訪ねて

3月16日、新調した網のテストも兼ねて、ちょっと自転車を漕いで春の虫を採集に行ってきた。
虫の名前は フチグロトゲエダシャク、春先にのみ現れる小さめの蛾で、とても可愛らしい虫だ。
以前から一度は採ってみたいと憧れていた種のひとつで、実は昨年一度狙ってみたのだが、その時は「春に出る」というだけでベストシーズンもよく分からず、3月下旬に行ってみたら菜の花満開で完全に時期遅過ぎ、もちろんフチグロのフの字も見られなかった。
そこで今年はもっと早めに…と。

朝9時前、緑も伸びつつあるもののまだ枯草の目立つポイントに立つ。
フチグロ環境
日射しは既に暖かいが、まだ空気に朝の冷たさが残っている。
ポイントを軽く歩いてみるが、まだチョウもほとんど飛んでおらず、最初に出迎えてくれたのはベニシジミ
フチグロ-ベニシジミ
春型は翅(ハネ)の紅色が美しく、光の当たる角度によってはキラキラとオレンジが輝く。
ちょっとした空き地や河川敷などで普通に見られる種であるため見過ごされがちだが、日本には他に似たような種はいないし、とても美しいチョウだと思う。

やがて9時を過ぎ、10時近くなる。
ようやく空気も温まり、越冬明けのキタテハも活発に飛び始める。
そろそろかと思っていると、小さめのシジミチョウぐらいの白っぽい虫が飛ぶ。
「いたっ!」
網を構えて駆け寄るも、あと2m…!というところで虫が忽然と消えてしまう。
慌てて周囲を見回すが、しかし見えない。

あれれれれ…?

今のはほぼ間違いなく、フチグロだったと思うのだが…。
ミヤマセセリか小さめの蛾のような(蛾ですけど(笑))ランダムな飛び方で、かなり素早い。
ただ、飛んでいる姿は間違いなく蛾の仲間。
姿や飛び方を見ても、ハチやアブなどではない。
…頭を捻りながらしばらく歩いていると、再びの白い虫。

慌てて走る → あと少し → あと2m…! → 再び消える。

えええええーっ!?

消えるのだ。
明らかに今そこに飛んでいたハズなのに、消える。
瞬間移動でもしてしまったかのように、視界から忽然と消えるのである。

フチグロは 瞬間移動透明化 のスキルでも持っているのか!?

…とまぁ、実際のところは保護色によって枯草の中に溶け込んでしまうのが原因だと思うが、飛んでいる姿さえ見失ってしまうというのは、もしかすると危険を感じると飛ぶのをやめて落下してしまうのかもしれない。
それでも頑張って探し続け、再びの白い虫。

今度は慎重に近付きつつ、視界から消える前に網を振る!
「今のは入っただろ!」
と思わず口に出して網を覗き込むと、見事に中で暴れる小さな蛾の姿。
だがまだフチグロと確信が持てないので、地面に伏せて確認する。

フチグロトゲエダシャク-1
「ッしゃあ!」
クリーム色に焦茶色の縁取り、体に不釣り合いな大きな触角。
間違いなく、フチグロトゲエダシャク だ。
フチグロ初採集!

蛾というと茶色で地味で…という印象があるが、中にはこんな可愛らしい種類もいるのである。
う~ん、このフサフサの触角がたまらん…!

初採集のフチグロを三角紙にしまい終えた辺りで、網を持った方が現れる。
この場所は、蛾屋さんにはそれなりに有名な場所らしい。
挨拶をして、少しお喋りする。
気付けば、遠くの方にも網を持った人が2人ぐらい見える。
…この時期・この場所で他に虫屋さんが狙うような虫はいないと思われ、捕虫網を持っていればまずフチグロ狙いだろう。

そこから、ポツリポツリとフチグロが姿を見せるようになる。
しかし、相変わらずの 瞬間移動 でなかなかネットインができない。
ネットイン出来るのは3~4回に1回、という所だろうか。
姿を見つけても、網を振ることすら出来ずに消えてしまうものも少ないくない。
で、姿を見せるのが「歩いていると、たまに」ぐらいなのでなかなか難しい。
フチグロ-2
本来なら♂をある程度採集して今度は行動を追跡して♀を探したいところなのだが、そこまでの余裕がない。

…そう、♀を探したいと言うからには当然♀が採れていない。

実は、飛んでいるフチグロトゲエダシャクは全て♂。
この蛾は、実は♀には翅がなく、飛ぶコトができないのである。
そのため♀は草や枝などによじ登り、そこでフェロモンを飛ばして♂を呼び寄せて交尾する、という面白い生態をしている。
つまり♀を見つけるにはフェロモンに呼び寄せられる♂の行動を追えば良いのだが、今回はそもそもに♂の数が少な過ぎて追跡をするだけの余裕がない。

…結局、休憩をはさみつつ午後3時近くまで採集し、♂は4~5頭採れたものの♀の発見には至らず。
東京や埼玉など南関東のポイントではフチグロはそろそろ終了が近いので、♀はまた来年の課題になりそうだ。
楽しみに取っておくとしよう。

フチグロ-3
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虫けら屋

Author:虫けら屋
もっぱら採集中心の虫屋さん。当初は東京で発生が確認されたが、後に埼玉県に移入、現在は千葉県での生息が確認されている。
肉眼で見て楽しめるぐらい大きなミーハー虫が好き。

Blog内の写真・文章等については、少しの引用的転用ぐらいならOK…と思っていたのですが、なんか最近フリー素材か何かと勘違いされているフシがあるので、今後は勝手に使わないでね。

※お問い合わせを頂く際はEメールにてお願い致します(採集ポイント等についてはお答えできかねますが…)。なお、採集遠征等により、お返事まで数日以上掛かる場合もございますので予めご了承下さい。
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