喜界島(&他)遠征記2014~04~

2月21日の深夜1時を過ぎ、予定から1時間以上の遅れで喜界島に到着したフェリーから下り、レンタカーで走り出す。
本降りではないもののしっかりと降っている雨の中、自販機で飲み物を買いつつ森を目指す。

初めて上陸する島で、いきなり夜というのは妙な気持ちだ。
地形図などで下調べはしてあるとはいえ、島がどんな風景なのかも分からず、道のすぐ横の景色だけが流れていく。
同じ夜の闇でも、奄美大島なら「勝手知ったる夜の闇」なのだが、喜界島は「見知らぬ夜の闇」。
奄美大島のすぐ隣にある島なので環境的にはさほど変わらないのだろうが、それでもやはり気分が違う。

…ちなみに、喜界島も沖永良部島と同じく土地のほとんどが開墾されてサトウキビ畑になっている島であり、森が残っているのはごく一部。
深夜ということで周囲は真っ暗なのでカーナビと道路地図を見比べて、森のある場所を目指す。
喜界島の夜道
…とは言っても、もうこの時間ではケブカコフキコガネ奄美亜種の活動は完全に終息しているし、環境を下見するのも難しい。
夜中3時前には農道脇に車を停め、雨粒が車の天井を叩く音を聴きながら就寝。


朝、起きてみると風が強く肌寒い。ときおり雨も落ちてくる。
条件が良いとは言えないが、まずはポイント探し。
…と言っても、ケブカの奄美亜種は正直どういう環境を探せば良いというのが分からない。
沖縄のものはリュウキュウチク群落を探せば高確率で虫も見つける事ができるのだが、奄美系はそう簡単にいかない。
奄美大島(2012)と徳之島(2013)で採集したが、それぞれ環境が全く違う。

奄美大島ではこんな環境
 ↓↓↓
奄美ケブカ環境

徳之島ではこんな環境
 ↓↓↓
ハマビワ林

奄美では何処にでもありそうな照葉樹の若い二次林(※過去に伐採されて、それから育った林)、徳之島は海の近くのアダンとハマビワの林。
…共通点を探す方が難しい。
せいぜいススキが生えていた事ぐらいだが、ススキだったら何処にでも生えているし、徳之島でもススキのそばで飛んでいるという感じではなかった。

つまり、幼虫を何を食べているのかも、どういう環境が好みなのかも分からないのである。

ただ、ひとつ言えるのは、コガネムシが飛べるぐらいには林床が空いていていたということ。
ケブカコフキコガネは飛ぶのが非常にヘタクソなため、夜にライトに飛来する際も林を縫うように飛んでくることはまず無く、ぶつかったり落ちたりしながら何とかライトに辿り着く、という感じである。
下草がみっしりと生い茂っているような林の中ではまとも活動できないだろう。
その辺りを考えつつ、森を抜ける道沿いに電池式のライトを設置していく。

ついでに、徳之島のような環境で発生している可能性も考えて、島の北端の辺りまで行ってみる。
アダンはあるものの、ハマビワはあまりなさそう。
トンビ崎
最近重機で作ったばかりという感じの道(?)を少し歩いてみると、道を作る際に切られた木や、掘り起こされた朽木が転がっている。
喜界島-朽ち木
そのひとつがナカナカ良さそうな状態に朽ちているので靴のカカトでガスンと割ってみると、大きめのクワガタ幼虫が出てきた。
状況から考えて、ヒラタクワガタ奄美亜種(アマミヒラタクワガタ)だろう。
アマミヒラタは2012年(&それ以前)に奄美大島でいくつも採っているが、喜界島のものは採ったコトがないので一応キープ。


そうして夜。
仕掛けたライトだけでなく、自身も動いて探す。
ケブカの♂は光に良く飛んでくるので、車のヘッドライトを点けてゆっくりと流していく。
夜のリュウキュウチク
林の縁を流していると、ずいぶんとリュウキュウチクが目に付く。
奄美大島はこれほどリュウキュウチクが多くない。
“これが沖縄なら確実にいるんだけどなぁ…”と思いながら、ゆっくりゆっくりと流していく。
光によく集まるケブカだが、飛ぶのは下手なので光を見つけても、そこに辿り着くまで多少時間が掛かる。
そのため、時速20kmも出ていたら、ケブカがヘッドライトに辿り着く前に通り過ぎてしまう可能性もある。
アクセルを踏むと速度が出過ぎてしまうので、もうほとんどクリープ現象だけで進んでいく。

クリープ現象:オートマチックの自動車は、ギアをD(ドライブ)に入れるとアクセルを踏まなくても勝手にゆっくり動き出してしまいます。これがクリープ現象です。速度は時速5km程度ですが、これが原因と思われる事故も起きており、車から降りる時には必ずギアをP(パーキング)に入れましょう。

20時を過ぎ、そろそろ良い時間に入るハズ…と思いつつ走るが、期待する姿は現れない。
時々ライトの光の中に飛び込んでくる蛾にハッとしつつも、ゆっくりと流しを続ける。
「見つからない」という事が、「いない」のか「まだ発生が始まっていない」のか「発生がもう終わった」のかも分からないので、なんとも難しい。
神経を集中させてヘッドライトの光が照らし出す先を睨みながら進む。

…と、時計が20:40を回った頃、車の左から何かが飛び出し、フロントガラスにコツンッと当たって右方へと跳ねたのが分かった。
慌ててブレーキを踏んづけて車を止めると懐中電灯を引っ掴み車から飛び出す。
今のは「当たり」の可能性が高い!
ソレが落ちたと思しき辺りをライトで照らすが、何も落ちていない。

どこだ!?
絶対どこかにいるハズだ!!

周囲の路上を探すもどこにも見当たらず、ふと思ってフロントガラスの隅…ワイパーの付け根あたりにライトを向けたところ…
「いたッ!!」
慌ててむんずと鷲掴む。


喜界島ケブカ-1

っしゃぁぁぁあッ!!

喜界島のケブカコフキコガネ、ゲットじゃあ!!

…だいぶスレて表面の毛が剥げた個体だが、この季節でこの大きな触角、他に見間違いようがない。
正真正銘、喜界島産のケブカコフキコガネである。
まさかこんなに早く確認できるとは思わなかったが、何はともあれ第一目標達成!
まずは、この喜界島のケブカコフキコガネを確認することが第一目標だった。

落ち着いて周囲を確認してみると、右はリュウキュウチクの群落と照葉樹の森、左は収穫の終わったサトウキビ畑のようだ。
ケブカは左側から飛び込んできたが、だからと言ってサトウキビ畑にいると断定はできない。
右の森から飛び出した個体がたまたま車の左側にいただけという可能性だった考えられる。
1頭だけでは何とも言えないので、少し車を停めて様子を見てみる。
追加個体が飛来すれば、どちらから来るのか分かるかもしれない。

様子を見つつ、Y氏に「採れたよー」と写メールを送る。
すぐに返信があってメールを2~3往復したものの、その間にケブカが飛んでくる様子はない。
…このまま待っているより、他を探してみた方が良いかもしれない。
再び車に乗り込み、ゆっくりと走り出す。

森の方へと入り、道が大きく右へと曲がる辺りで再びライトの前を横切る影。
見慣れると、蛾とは飛び方が異なるので「ソレっぽい!」と分かる。
車を出て確認すれば、やはりケブカコフキの♂。
少し進むと再び1♂。…と、それを拾っていると車のライトに惹かれて更に1♂が飛んでくる。
どうもこの辺りが“濃い”感じがする。

ケブカコフキコガネは、♂は非常によく飛び、ライトにもよく集まるので、数が多い場所では車を停めておくと次から次へと飛んでくることもある。
♀を見つけるには、いかに早くそういう場所を見つけられるかが重要になってくる。

しかし、ここも“次から次へと”という程ではなかったため今しばし島を流してみたものの、♂数頭を拾うにとどまり、1~2時間程で同じ場所へと戻ってくる。
車を停め、ヘッドライトを点けっぱなしにしておくと、ポツリポツリとケブカコフキの♂が飛来する。
それらを拾いつつ環境を探ってみるが、やがて♂の飛来が途切れてしまう。
時計を見ると23時を回っている。
…少し早い気がするが、どうやら飛翔タイムが終わってしまったらしい。

奄美亜種が採集しづらい理由のひとつに、この飛翔タイムがある。
沖縄系の個体群は飛翔タイムがかなり長く、18時過ぎから飛び始めて0時を過ぎても結構飛んでいたりするのだが、奄美亜種は本格的な飛び始めが20時過ぎからで、23時頃から飛翔個体が減り始め、0時頃にはほとんど飛ばなくなってしまう。
沖縄の半分強程度の時間しか活動しないのである。
そのため、ポイント探しも♀探しも時間が限られてしまう。

…しばし待っても飛来が見られないので、今日はもう終了。
喜界島ケブカ-2
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非公開コメント

No title

おめでとうございます。
喜界島での記録は、初めてなのですか?この後の展開が楽しみになって来ました。ケブカコフキ採集の臨場感が非常に出ていて、いい話です。この記事と以前のコメントから今冬は沖縄本島の当たり年のはずですね。とっても行きたくなりました。
本島の知り合いに誘われていますので、クリスマスの連休に予定を立てようかな?

Re: No title

>アマミシカマニアさん
喜界島は、とあるblog(ウチじゃなくて)の記事に1件だけ出ており、生息自体はほぼ確実だったのですが、公式な発表(雑誌短報など)がされていない状態です。
なので、初記録と言えば初記録、ただし「いることは分かっていた」という感じです。

今年のクリスマスは沖縄の発生シーズンなので、やんばるなら比較的見つけやすいと思います。
沖縄も中南部は場所が限られるので探しづらいですが、やんばる地域ならリュウキュウチクの群落を探せば見つけやすいと思います。
♂の触角とフサフサの胸毛はたまらなくカワイイので、ぜひ!
プロフィール

虫けら屋

Author:虫けら屋
もっぱら採集中心の虫屋さん。当初は東京で発生が確認されたが、後に埼玉県に移入、現在は千葉県での生息が確認されている。
肉眼で見て楽しめるぐらい大きなミーハー虫が好き。

Blog内の写真・文章等については、少しの引用的転用ぐらいならOK…と思っていたのですが、なんか最近フリー素材か何かと勘違いされているフシがあるので、今後は勝手に使わないでね。

※お問い合わせを頂く際はEメールにてお願い致します(採集ポイント等についてはお答えできかねますが…)。なお、採集遠征等により、お返事まで数日以上掛かる場合もございますので予めご了承下さい。
   ↓↓↓
akepon6464@yahoo.co.jp

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