喜界島(&他)遠征記2014~05~

2月22日、天気良し。
船旅疲れもあってか、すぐに動き出す気になれずしばし呆けていたら、フワフワと視界の端で動くモノがいる。
喜界島アサギマダラ
アサギマダラ だ。
長旅をするチョウとして知られ、夏には本土の高地でよく見られる。
また体内に毒を持つことでも知られるが、これは食べて死ぬような毒ではなく、「食べると非常に不味い」というもの。
そのため鳥はこのチョウを食べようとしないので俊敏に逃げる必要もなく、非常にゆっくりと優雅に飛ぶ。

が、実はこの「不味い」も100%通用するものでもないようで、以前別の島に行った折、少し先をフラフラと飛んでいたアサギマダラを「あー、アサギが飛んでるなー」なんてのんびり眺めていたら、いきなりヒヨドリぐらいのサイズの鳥が滑空からスパッと空中キャッチ。“えっ!?”と驚いて見ていると、鳥は、捕えたアサギマダラを何度も地面に叩きつけて弱らせ、そのまま呑み込んで何事も無かったかのように飛び去ってしまった事があった。
急いでその場所に行ってみたが、ハネ1枚すら残っていなかった。ハネも胴体も全部呑み込んでしまったらしい。
…咄嗟のコトに証拠写真も撮れず、鳥の種類も分からないしでは記録として出すのも躊躇われたので昆虫雑誌等での公式発表はしていないが、私自身の目で確かに見た事実。
アサギマダラの毒も、100%ではない。

…とまぁ、それはそうと、こいつは広く見られる普通種のチョウだが、半分透けたような白い模様と、前翅の黒と後翅の赤みがかった褐色のコントラストが美しい。
あえてここで採集しようとまでは思わないが、良いチョウではあると思う。

さて、昨夜の流しの最中に迫力のあるガジュマルを見つけたので、改めて見に行ってみる。
ガジュマルの巨木
夜中見た時は、夜中+初見というコトで畏怖さえ感じるような途轍もない迫力で見えたが、昼間でも十二分に迫力がある。
そして周辺にも何本か、同様の凄まじい迫力を放つガジュマルの巨木が立っている。
…なるほど、こんなガジュマルなら上にケンムン(※)が棲んでいたって不思議ではないと思わされる。

…で、セルフ撮影でもしたいなーと思って良さげなカメラ設置場所がないかと見回すと、いかにもな場所のガードレールがそこだけ 上が平らになるように 、叩かれたように凹んでいる。
凹んだガードレール

…………。

…どう見ても…自然になったモノじゃない…よねぇ。
う、うん…まぁ気持ちは分かるし、それ自体で事故を誘発したりするモノではないからな…。
微妙な気分になりつつも、結局自分もその凹みを利用してセルフ撮影。
ガジュマルの巨木-2

…そんなコトをやっていたら、ふと「ああ、そう言えば今日は大宮のインセクトフェスティバルの日か…」と思い出す。
大手町のフェアとどちらも毎年必ず行っていたのだが、今年はこの遠征と重なってしまい、参加できなくなってしまったのが残念でならない。
「大宮が3月だったらなぁ…」なんて思ったりもするが、日程は虫けら屋の都合で決まっているワケではないので仕方ない(笑)


さて明るいうちに昨夜ケブカが見られたポイントの環境を確認しておく。
喜界島ケブカ環境
奥は下り斜面になっていて、昨夜の♂はどうやらそちらから飛んで来ていたようだ。
道沿いの林縁は下草の藪があるが、奥に入れば林床は下草もなく灌木がポツポツとある程度。
となると、今夜はここで♀を狙ってみるのが良い…か。
…とりあえず、ポイントは決まったので一度集落まで出て食料などを調達する。

喜界島は、小さな島と思えないほど商店類が充実しており、生協(Aコープ)、スーパーマーケット、ホームセンター、100円ショップ、コンビニ…と欲しい物は一通り揃ってしまう。
ただし、これだけ集中しているのは港のある「湾」という集落のみで、他はいかにも“小さな離島”という風情漂う穏やかな雰囲気の島だ。


さて再びの夜。
奄美で確認した日没直後の黄昏飛翔は見られず、やがて20時を過ぎて少しした頃、ケブカコフキが飛び始める。
ポツポツと飛来する♂を摘まみながら森の中へと分け入る。
木の根や礫などが転がっていて足場が良いとは言い難いが、奄美大島と違ってハブがいないのでかなり大胆に森に入ることができる(※「奄美のケブカの時も平気で森に入ってたじゃないか」というツッコミは 受け付けません )。

ソテツの葉裏にピカッと光るものが見えたので何かと思って近づいてみると、アサギマダラの蛹。
アサギマダラ蛹-夜
蛍光の黄緑色でライトの光をピカピカと反射する。
よくよく見ると既に翅の模様が透けて見え始めているので、羽化までそう遠くないようだ。

ケブカコフキの♂はポツポツと飛んでいるのだが、いまいち「湧き出す」という雰囲気ではなく、どうもスレた個体が多いように感じる。
喜界島ケブカ-3
…相変わらず、この大きな触角とつぶらなお目々がなんともプリチーである。

縦横に絡み合う枝や幹を、越えつくぐりつしながらケブカを探す。
森の中も平坦ではなく、数mの高さの斜面や、10mぐらいありそうな崖もある。
そういった足場の悪い場所でもなんとか安定する場所を探してはしゃがみ、周囲を舐めるように見回す。
灌木や朽ち木、シダなどを浮かび上がらせながら周囲を睨み、そしてまた移動する。

…と、斜面に生えた低い灌木の膝下ぐらいの葉の裏に、オレンジ色が反射した。
「いたっ!」
見えた場所をよく確認してから、中腰姿勢のまま斜面を横擦りに近付く。
葉をそっとめくりかけた所で……ヒゲが見えた。

あれっ……?

確かに、♂も休憩で静止していることがたまにあるのだが…
ちょっと落胆しかけながらも一応最後まで葉をめくると、重なってるのが見えた。
「違う!交尾だ!」
慌てて引っ掴むと、手の中には確かに2頭の感触。
逃げられないようにそっと指を開いてみると、まずは慌てふためいた様子で♂が飛び出そうとする。
それをしっかり捕まえてケースに入れてから、もう1頭を確認する。

喜界島ケブカ♀-1

丸みのある体型、短い脚…全体的な雰囲気がそれを語る。
ほぼほぼ間違いないが、一番確実な触角を確認しなくては…

喜界島ケブカ♀-2

「Yes!!!」

思わず力を込めて叫ぶ。
間違いなく、ケブカコフキコガネの♀
…まだ探し始めて2晩目である。
こんな簡単に♀が見つかって良いのか…?
正直、ちょっと拍子抜けした感さえある。
…いやまぁ簡単て言うほど簡単ではないのだけど、今までの奄美亜種の♀に比べたら、「あっさり」とさえ形容できるぐらい簡単に見つかってしまった。

…にしても、「Yes!!!」って何だよ、「イエスッ!」って。
思わず口を衝いて出た言葉が「Yes!!!」って、どうなのよ…
いやしかし…ふふ……ふはは……
肩の力が抜けたのが、自分でも分かる。
荷が下りたというか何と言うか…

かなり小さな♀だが、この意味は大きい。
当然ながら喜界島では初記録。

その後、更に数時間…日付が変わるぐらいまで探索を続けたものの、追加の♀は得られず。
あとはモンシデムシが採れたぐらい。
喜界島ネパールモンシデ

それでも、喜界島まで来た意味は…十分にあった。
自分でも気付かぬうちにいつの間にか背負い込んでいた「♀を採らなくては」という荷が、降りた。





※ケンムン
河童と猿のあいのこのような姿とも言われる奄美を代表するUMA(未確認生物)。
山深い森のガジュマルなどの巨木の上に棲んでいると言われている。
ツチノコやヒバゴンの親戚ですな。
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No title

またまたおめでとうございます。この島でもメスをとられたのですね。本当に思い入れが強い虫で結果を出す努力・センスは凄いのひと言につきます。

ところで喜界島には言ったことがないのですが、Googleアースで見る限りさとうきび畑ができない斜面にしかまともな林がない印象だったのですが、写真を見るとそれなりの森はありそうなんですね。確かにガジュマルの大木にはケンムンがいそうな印象がありますよね。イタジイやウラジロガシなどの大木はありましたか?喜界島も例の条例の対象でしたっけ?

Re: No title

>アマミシカマニアさん
ありがとうございます。

喜界島はマルバネに適したような環境は見ませんでした。
…まぁ今回はケブカ目的で、森全てを確認したワケではないので絶対の保障はできませんが…
プロフィール

虫けら屋

Author:虫けら屋
もっぱら採集中心の虫屋さん。当初は東京で発生が確認されたが、後に埼玉県に移入、現在は千葉県での生息が確認されている。
肉眼で見て楽しめるぐらい大きなミーハー虫が好き。

Blog内の写真・文章等については、少しの引用的転用ぐらいならOK…と思っていたのですが、なんか最近フリー素材か何かと勘違いされているフシがあるので、今後は勝手に使わないでね。

※お問い合わせを頂く際はEメールにてお願い致します(採集ポイント等についてはお答えできかねますが…)。なお、採集遠征等により、お返事まで数日以上掛かる場合もございますので予めご了承下さい。
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