アシナガバチのcalling

石垣島採集記を期待されていた方はゴメンナサイ。
島に行くより前、ちょっと面白い生態を観察したのでその話をば。

標本教室で使う教材用のトノサマバッタを採集するために、埼玉県にある秋ヶ瀬公園近くの河川敷に行った折、鉄柱に多数のアシナガバチが集まっているのを見掛けた。
その時は集団越冬の場所を探して集まっているのかな?と思ったのだが、その後で近くの林に行ってみたところ、どうやら少し違うようだった。
林の近くの電柱でも数頭のアシナガバチが飛んでいる。
電柱に、逆さにとまっている個体もいる。
どうも♂っぽい気がするのだが、とまっている場所が高く、よく分からない。

ふむ…と少し歩いてみると、道沿いのシュロの木の目線ぐらいの高さに同じように逆さまにとまるハチを見つけた。
アシナガ・コーリング
腹端は尖っておらずオス蜂……模様からすると セグロアシナガバチ らしい。
シュロの枯葉の茎にとまり、逆さまになって腹端を反らせている。
こういう特定の姿勢で静止するのは配偶者を呼ぶためのコーリング行動であることが多い。

コーリング(calling):鳴き声やフェロモン散布等によって異性の配偶者を誘引する行動。

しかし、アシナガバチの生態はよく知らない。
いまいち♂がコーリングするというイメージが無いのだが…

そんなふうに思いながら少し観察していると、♂は時折触角や脚を掃除したり姿勢を変えたりしながらも、やはり逆さまの姿勢に戻る。
やはりどう見てもコーリングである。

…と、急に耳元にブゥン!という羽音がして思わず体が硬直した。

ビクビクしつつも見ていると、1頭のアシナガバチがその♂の近くにやって来た。
すると♂は明らかにその飛来したハチに反応し、やがて近くにとまったハチに飛び掛かると、そのまま交尾に至った。
アシナガ・交尾
十秒かそこらの交尾を終えると飛来した♀は飛び去り、♂は少しウロついた後に再び最初と同じ場所に戻り、逆さま姿勢をとった。
…やはり、どう見てもコーリングだ。

近くの電柱に絡む♀なども見られたが、少しすると再び♂の近くに♀が飛来する。
逆立ちする♂の半径15cm以内ぐらいをユラユラ飛んだと思うと、やがて5cmほどの距離にとまり、歩き回る。
どう見ても、何かに誘引されてきたとしか思えない行動だ。
♀が近くまで飛来すると、♂もそれに近付き、両者が出遭うと♂はそのまま飛び乗り、交尾に至る。
アシナガ・交尾-2
短時間のうちに2頭の♀と交尾した♂は、それが済むと再び逆立ち姿勢になる。
アシナガ・コーリング

今までアシナガバチの配偶行動をきちんと観察したことがなかったが、こんなコトをしていたとは…。
詳しい図鑑や文献などを見ればこういう行動も詳細に記載されているのかもしれないが、ちょっとした発見をした気分だった。

身近なところにも面白いコトは転がっているものだ、と改めて感じた日であった。
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昆虫の交尾って、たまたま出くわすとラッキーって思います。
貴重なシーンを見てしまった…という感じで。
最近標本を作っていて思うのですが、標本は標本でかっこいいけど、生きてる虫の生きてる様子ってやっぱりいいなぁと。
飼育ケースの中で、ただエサを食べているだけでも、おお~って思います。
そんな中でも、交尾って最大級におお~って思わせられる大イベントなんですよね。

今回のアシナガバチの記事は、なんかテレビのドキュメンタリーで取り上げられてもいいんじゃないかって思いました。
それくらいドラマチックでワクワクします。

Re: タイトルなし

>Taku34歳さん

> 標本は標本でかっこいいけど、生きてる虫の生きてる様子ってやっぱりいいなぁと。

…まったくもって同意です。
今回のアシナガバチの交尾や、クワガタ同士のケンカ、カマキリの狩りなど生きた姿というのは、採集の最中であっても思わず見とれてしまいます。
ブログでも過去に触れたりしていますが、昆虫を知りたいなら、標本にするだけではダメなんですよね。
「標本を作る」「野外で観察する」「飼育する」…どれも、そこから得られるものは違っていて、それぞれに利点がある。
『セミやコオロギの鳴き声は標本からでは分からない(でもその形態をじっくり観察するのは標本でなければできない)』と自身ではよく例えますが、生きている姿って、やっぱり魅力的です。
私の大好きなミヤマクワガタも、標本は標本で格好良いけど、生きている時の魅力は倍以上です。

標本を主にやっている虫けら屋ではありますが、野外も含め、色々な姿を見たいなぁ…と思う今日この頃です。

No title

久しぶりに見たら面白いのが…って、どれだけ見てないかバレバレだ(苦笑

♂がコーリングする虫、アレがいますよ。
オオチャイロハナモゲラ。

Re: No title

>spaticaさん
たまには見に来て下さい(笑)

…そう言えば、オオチャイロも♂がコーリングする虫でしたね!

うーむ、そういう虫もいるコトはいるのか…。
知れば知るほど奥が深い世界ですね…
プロフィール

虫けら屋

Author:虫けら屋
もっぱら採集中心の虫屋さん。当初は東京で発生が確認されたが、後に埼玉県に移入、現在は千葉県での生息が確認されている。
肉眼で見て楽しめるぐらい大きなミーハー虫が好き。

Blog内の写真・文章等については、少しの引用的転用ぐらいならOK…と思っていたのですが、なんか最近フリー素材か何かと勘違いされているフシがあるので、今後は勝手に使わないでね。

※お問い合わせを頂く際はEメールにてお願い致します(採集ポイント等についてはお答えできかねますが…)。なお、採集遠征等により、お返事まで数日以上掛かる場合もございますので予めご了承下さい。
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