沖縄ケブカコフキ探索2014~その3~

伊江島は近い。
フェリーが出向して客室に入り、ちょっと携帯でSNSでも覗いていたらもう到着である。

さっそく走り出すと、(分かってはいたが)どこまでも平坦な島である。
広がるのは、畑、畑、畑。
突然目の前から何かが跳ねたかと思うと大量のタイワンツチイナゴ。
タイワンツチイナゴ多数
舞っているゴミのようなものが全てタイワンツチイナゴである。
空だけでなく草の中に紛れているものもいるので、この画像の中だけでも数十頭が写っている。
「すげぇな…」
と思わず呟く。

ちなみに、大量発生して入るが、これはいわゆる「バッタの大群」とは違う。
「バッタの大群」というのは、ある種のバッタが幼虫時代に過密条件で育つことで、普通(孤独相)とは少し異なるタイプ(群生相)になり、群れで大移動をしながら植物という植物を食い荒らしていくようになることを言う。
これはトノサマバッタやサバクトビバッタなどバッタの仲間の一部で起こる現象で、イナゴの仲間では起こらない。
画像のタイワンツチイナゴも大量にいることはいるが、姿は通常のままであり、また群れで大移動をしたりはしない。

さて肝心のリュウキュウチクはと言うと、「一応、あることはある」というレベル。
走っているとわずかに確認できるが、伊平屋島以上に確認できないし群落がない。
アダンの中に混じり込んだ多少の群落を見つけ、とりあえず今夜はここで見てみようか…と決める。
沖縄本島でのポイントとはかなり環境が異なるが、徳之島とは多少似てなくもない。
…にしても、ここもタイワンツチイナゴが多い。
タイワンツチイナゴ群れ
そこら中にベタベタとついており、アダンの固い葉ですら食べてしまうらしい。

…う~ん、徳之島のケブカポイントとはちょっと雰囲気が違うかな…。

しかし他に良さそうな場所もないし、仕方ないので夜を待つ。

…結構な風。
徳之島の時ほどではないが、常に風の音が聞こえているような状況で、肌寒い。
近くに強烈な灯火があるので一応見に行ってみるも、タイワンツチイナゴしか来ていない。
コガネはおろか、甲虫のコの字もない。
懐中電灯を持って少し歩いてみたりもしたが、羽音は無い。
今からでも…と、風除けになっている場所を狙ってライトトラップも設置して見るが、どうにも望みは薄そうに思える。

このまま一晩見てみるか…と迷ったものの、少しでも範囲を広げて探索してみようと思い、走り出す。
畑だらけの島なのでケブカが飛び回れるような環境というのがそもそもに少ないのだが、その中でも少しは可能性のありそうな場所を思い浮かべ、“あの辺に多少は林があったよな…”とハンドルを切る。
畑と畑の間、帯のように斜面部に残った林のそばに車を停め、ヘッドライトをハイビームにする。
ケブカコフキがたくさんいる場所なら、こうしておけば5分と経たずに飛んでくるので、初めての場所でポイントを探す時には有効な方法である。

…そう、“いれば”である。

つまり、“いない場所”では何十分待とうが飛んで来ない。
ただただ夜風に揺れる草木がひたすらライトの中に浮かび上がるだけである。

時々車を降りてライト前の路面を確認するが、やはりいない。
携帯を見たり、暇潰し用の漫画を読んだりしながら待ってみるが、やはり飛んでくる気配はない。
そうして1~2時間は待っただろうか。
「…ダメだな。」
ため息混じりに呟き、エンジンを切ってシートを倒した。


12月25日
…どれぐらい時間が経っただろうか。
沖縄とはいえ冬の夜はそれなりに気温が下がる。
車の中が冷えてきて、目が覚めた。
少し暖房をつけて車内を暖めようと思い、エンジンをかけようと体を起して違和感を覚えた。
「………?」
一瞬、その違和感の正体が分からなかったのだが、はと気付く。

車の前がボンヤリと明るい…
「あっ!」
ヘッドライトを消して、慌ててキーを捻る。

キュウンウンウン…ガリガリガリ!

力無く回る音で、完全に現状を理解した。
が、念のためもう一度!

キュウンウンウン…ガリガリガリ!

本来ならば「キュルルル…ブゥン!」と勢いの良い音がしてエンジンが掛かるハズが、力無い音がするだけでエンジンは一向にかかる気配はない。
「あっちゃー…」

バッテリーが上がっちゃった。

ヘッドライトが点いたままでエンジンを切ってしまい、そのまま何時間も寝てしまったため、その間にバッテリーが上がってしまったのだ。
「まいったなー」
時計を見ると午前4時前。
夜が明けるまでは今しばらくの時間がある。

『やっちまったなー…』と思う一方で、さほど慌てていない自分がいる。
なんて言うか、迷って森から出られない とか 異音がして車が止まった とかそんなトラブルを何度も経験していたら、この程度では大して動じなくなってしまった。
バッテリー上がり自体は自分ではどうしようもないが、ここは畑のすぐ近く。町まではしばらくあるとはいえ、明るくなれば誰かしら通るだろうから、その人に助けてもらおう、と。最悪誰も来なかったとしても、小さな島なので町まで歩けない距離ではない。
ガソリンスタンドか車の修理工場にお願いしてバッテリーを繋いでもらえば、それで解決する。
とりあえず夜の寒ささえ凌げば、あとは解決できる。
本土で着ていた真冬用の上着を体に掛けて今一度眠る。
…トラブルにパニクらないのは良いことだと思うが、旅先でのトラブル慣れってどうなんだろう…と思わなくもない。

朝、すっかり明るくなってしばらくすると、農作業のオジサンが軽トラでやってきた。
根は人見知り なので話し掛けるのに少し躊躇するが、迷ったところで事態は好転しないと覚悟を決めて話し掛ける。
「あの…すみません。実はカクカクシカジカで…」と事情を説明すると、オジサンは今しがた乗ってきた軽トラで、自分を農協経営のガソリンスタンドまで送ってくれるという。
丁寧にお礼を言って、助手席に乗り込む。
「この島の車はボロばっかりだからねー」
…なるほど、こういうトラブルは慣れっこというワケか。
JAスタンドまで行くと、お兄さんに事情を説明。
農家のオジサンに再度丁寧にお礼を伝え、今度はJAの車で現場へ向かう。

お兄さんは手早くバッテリーに電源を繋ぐと、「じゃあ、エンジンかけてみて下さい」と。
言われるままにキーを捻る。

キュウンウンウン…ガリガリガリ!

…ありゃ、ダメか。
少し間を置いてから再度キーを捻る。

キュルルル…ブゥン!

かかった!
…なんともアッサリ解決である。
掛かった費用は出張(?)サービス代の1,000円のみ。
あとは1時間もエンジンをかけたままにしていればバッテリーも充電されて完全に解決である。

…それはそうと、JAの車で現場に向かう際、道端で気になる物が目に入ったのだが……まぁ、また近くを通ることもあるだろうし、その時に確認すればいいか。
とりあえずポイントを探して車を走らせる。
島唯一の高い場所と言えるのが城山(ぐすくやま)だが、遠目に見た限りでは岩の塊で、わずかに緑も生えてはいるようだがケブカが生息しているようにはとても見えない……と思いつつ、一応見に行ってみることにする。
伊江島-城山
すると、山の上はともかく麓は多少の森があるようだ。
信仰される山のようなのであまりガチの採集をするのは躊躇われるが、とりあえず環境を見るぐらいは…と軽く入ってみると、思ったよりはリュウキュウチクも見られ、悪くない環境。
もう夕方なので一応ポケットに懐中電灯を入れておいたが、まぁ夜まで使わずに済みそうかな…
…と思っていたら、気付いたら懐中電灯が無い。
「ウソ!?」
慌てて歩いたルートを辿り直すが、折り重なった枯草の中に落ちてしまったらしく、見つけられず。
次第に暗くなり始め、“とりあえず採集自体はヘッドランプでも出来る…けど…”と思いながら、その場を後にした。

さてこの伊江島であるが、伊平屋島と変わらない小さな島であるにも関わらず、沖縄本島からフェリーで30分という近距離であるせいか便利さでは遥かに上回り、コンビニも数軒あるので夜中でも食料の入手に困らない。
適当に食料を買い込んで夜を待ち、城山に向かう。
山の駐車場に着いてみると、なんかえらいチカチカピカピカしている。

えーと…ここって、信仰の対象がどうとかって…
何スかね、このイルミネーションは。


昼間に下見に来た時に、確かに電飾があったのでだいたい予想はしていたとは言え、何と言うか…
まぁ、ある意味で採集への抵抗は薄らいだけど。
ぼんやりと、イルミネーションを見るとはなしに眺めていると、入れ替わり立ち替わり車がやってくる。
多分みんな、夜景とイルミネーションを見に来たカップルさん達だろう。
1台が立ち去るより前に次の車が来て、それが行ったと思ったらまた次が来て…と、車が途切れない。

逆に山に入りづらいな、これは。

それでも、しばらく待ってからヘッドランプを持って軽く城山に入ってみる。
…一応、山の入口で軽く礼をしてから入山。

少し行くと電飾も見えなくなり、辺りは真っ暗になる。木々の葉の間から町の明かりがチラチラ覗く。
リュウキュウチクの群落は、この伊江島の中では一番良さそうに見える。
少しの間周囲の音に耳を澄ましてみたが、羽音は何もない。
斜面がキツく道から外れての探索は出来ないので、群落の辺りを往復してみる。
しかし、やはり何の羽音もしない。

小一時間ほど探索してみたものの気配はないので諦めて山から出て、昨日のリュウキュウチク・ポイントへ向かう。
途中、夜景なんか撮影しちゃったりして。
伊江島からの夜景
手前側の大きめの明かりは伊江島、奥手に見える小さな明かりの連なりは沖縄本島の本部半島の明かりである。

今度はここで群落に向かってライトを照らして車を停める。
いません。

…が、虫の来ない暇潰しに見ていたSNSで思わぬ重要な情報を得る。
こりゃあ望みの薄い伊江島で続けるより本島に戻って狙ってみた方が良さそうだな、とまたしても方針転換。
伊平屋島→伊江島→沖縄本島と、今回の遠征は転戦しまくりである。

とりあえず、昨夜群落の中に仕掛けたライトにはケブカのケの字もないことを確認して、寝る。
…ヘッドライトが消えているのをしっかり確認して、エンジンを切った。
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プロフィール

虫けら屋

Author:虫けら屋
もっぱら採集中心の虫屋さん。当初は東京で発生が確認されたが、後に埼玉県に移入、現在は千葉県での生息が確認されている。
肉眼で見て楽しめるぐらい大きなミーハー虫が好き。

Blog内の写真・文章等については、少しの引用的転用ぐらいならOK…と思っていたのですが、なんか最近フリー素材か何かと勘違いされているフシがあるので、今後は勝手に使わないでね。

※お問い合わせを頂く際はEメールにてお願い致します(採集ポイント等についてはお答えできかねますが…)。なお、採集遠征等により、お返事まで数日以上掛かる場合もございますので予めご了承下さい。
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akepon6464@yahoo.co.jp

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