沖縄ケブカコフキ探索2014~その5~

12月27日
明るくなってから、うるま市のライトトラップもチェックしてみたが、追加は入っていなかった。
ならばと頂いた情報を頼りに更に南下し、中城方面へ向かう。

車を置いて、お散歩がてら手ぶらで歩いてみると、何ヶ所かリュウキュウチクは見られる。
いるかもしれない。
だが、その規模は伊平屋島と同レベルだ。「この規模で…?」という思いは拭えない。
2時間以上歩き回り、数ヶ所あるリュウキュウチクの中から2ヶ所ほど目星を付ける。

ひとつは林の中のリュウキュウチクの大きめな群落。
もうひとつは群落とクワズイモなどが生えている斜面(※画像は夜だけど)。
南部のケブカ環境
ひとつ目は木が倒れたりしてマァ多少歩きにくい程度だが、ふたつ目は斜面で枯草も折り重なりかなり足元が悪い。
できるなら、ひとつ目の方に発生してて欲しいなぁ…なんて。

下見を終えて一度更に南下し、知念方面に向かう。
知念は以前は知念村であったが、いつの間にか合併して現在は南城市の一部になっている。
ここも過去に記録のある場所で、一応リュウキュウチクも見られるので何処かに生息ポイントがあるハズである。
“ここなら、もしかして…”と思える場所2ヶ所にライトトラップを設置。そこそこ程度のリュウキュウチクの群落だ。
設置を終えたら、暗くならないうちに先程の場所へまた戻る。

夜になり、道沿いの外灯を軽く見ながらポイントへ向かう。…途中の灯火では何も見られず。
シーズン中でも、良くて1日に1~数頭拾える程度らしいので実際見つけられるかは……微妙である。
ただ、灯火にポツポツと飛来するということは近くに発生場所があるハズで、それを見つけられれば複数♂の確保や、♀の採集も可能性がある。
たまに近くを人が通ることもある場所なので、森に入り込むのを見られると不審者かと思われそうで、人がいないのを確認してから森に分け入る。
…冷静に考えれば この行動自体が思いっきり不審 であるが、それはそれ

リュウキュウチクを踏み分け、倒れかけた枯れ木を跨ぎ、くぐり、ヘッドライトで周囲を照らす。
少し進んでは周囲を照らし、羽音に耳を澄ます。
また進んでは周囲を照らし、羽音に耳を澄ます。
蠅がうるさい。
リュウキュウチクがあまり密な場所はケブカも飛びづらいので、林内でも少し開けたような場所を中心に探して行くが、音は無い。
しばらく探索してみるものの羽音も、ケブカの姿もない。

仕方なく一度林から出て休憩していると、情報を教えてくれた方から更に追加情報が入る。
「ほうほう…」
灯火をチェックしながらそちらに向かうと、オレンジの外灯に何かが飛んでいるのが目に入った。
「いたっ!」
光源の周辺、つまりかなり高い場所を飛んでいるが、あの姿と飛び方は蛾ではない。
ケブカコフキコガネ!

だが、喜んだのも束の間、その個体は一瞬目を離した隙に消えてしまった。
「マジかよ!?」
地面に落ちたのかと慌てて周囲を探すが、いない。
路上、草の上、木の葉…ライトで照らしながら探してみるが、見付からない。

…目的の虫の発見第一号がロストした時の、あの心を掻き毟られるような気持ちは何と表現したら良いのだろうか。
信じたくないような、叫びたいような、何かにヤツ当たりしたいような、あの気持ち。

だが、いつまでも悔しがっていても仕方ない。
1頭いたということは、発生場所は近いということだ。
神経を集中しながら付近の他の灯火を見ていくと、今度は足元近くの芝生の上を飛んでいるのが見えた。
「いたっ!!」
認識するや否や走って追いつき、芝生の上に叩き落とす。
南部のケブカ♂
「よっしゃ!」
とうとう南部のケブカコフキを捕えた!
明らかに、やんばるで採れる個体より大型である。
それを左手で遊びながら一応近くの灯火を見てみると、更に2♂が落ちている!
「おるやんけ!Σ(゚Д゚;)」
慌てて拾う。
それを丁寧にケースにしまっていたら、また近くを1♂がフラフラ飛んでいく。

あわわわわ!

あっと言う間に4♂である。
“これは出てる!”と確信する。
…なるほど、辿り着いてみれば情報の場所と言うのは「候補地その2」の近くである。
ならばと候補地の斜面に入ってみる。
ズルズルと滑る斜面をなんとか歩きながら、リュウキュウチクや低灌木を丁寧に照らしていくと、そのリュウキュウチクの葉先にとまる個体が目に入る。
大きな触角は見えない。

キタコレ!(゚∀゚)

だが、足場が悪い。
間違っても滑って葉を揺らして虫を落としたりしないよう、脚をしっかり踏ん張り、そろそろと手を伸ばし……

掴む!
南部ケブカ♀1号
「ぃよっしゃキターッ!!!!」
思わずガッツポーズ。

おそらく、沖縄南部では初記録ではないだろうか。
伊平屋島・伊江島と惨敗を喫したが、こういうことがあるからケブカコフキはやめられない。
南部全体で♀初記録ということは、ただ単に「オイラが一番」というだけでなく、これで標本を調べることが可能になり、本島北部地域や他の島の♀と比較ができるようになるという事でもある。
学術的にも意味があるのである。
大袈裟に言うなら、(ちょっぴりだけど)昆虫や科学の世界に貢献できるワケである。

だがしかし、1♀では変異が分からない。
「1匹採れば十分でしょ」と言われるコトがあるが、昆虫は非常に個体変異の大きい生き物である。
カブトムシひとつとっても、大きな個体から小さな個体まで1頭ずつその姿は千差万別で、「大きいの1頭採ればすべて分かる」と言えないことは誰でも分かる。
その♀を丁寧にケースにしまい、探索を再開する。

…しっかし足場が悪いな。
滑って思わず尻餅をつきそうになるが、なんとか堪えてケブカを探す。
しばしの探索で、再びリュウキュウチクの葉先についた個体を見つける。

ケブカを採集していると、♂も葉先や灌木にとまっていることがあり一瞬ドキッとさせられたりするのだが、そういう場合でも♂はたいていその自慢の触角を大きく広げていることが多い。つまり、見つけた個体が触角が見えない場合、♀の期待が大きく、実際そうであるコトが多い。
掴み採れば、やはり♀。しかもデカイ。
このサイズはやんばるでは絶対に採れないな、という大きさの迫力の♀だ。

…それにしても、2♀とも随分と活発だ。
手を放して撮影しようとすると、途端にハネを開いて飛ぼうとするので慌てて押さえる。
できれば全身を写したかったのだが、それで逃げられては元も子もないので仕方なく手で押さえながら撮影する。

足場の悪さに閉口して一旦道路に戻り、先程の外灯を見に行くと、また♂が落ちている。
南部ケブカと外灯
…気を引き締め直し、今度は別の場所に入ってみると、木の枝先…葉の下側に繋がった2頭の姿。
「!!」
極力慌てないように慎重にデジカメを取り出し、パシャリ。
南部ケブカ交尾
(※画像クリックで大きくなるよ)
フラッシュに驚いて落ちても大丈夫なように真下に網を構えたので余計な物が写り込んでしまっているが、御容赦を。

続いてもう1♀見つけるも、高い場所に付いており枝でつついたらポロッと落ちてしまい、痛恨のロスト。
10分ぐらい探したが、見付からず。
それでも探索を続けて更に1♀を得て、合計4♀(+1♀ロスト)。

森から上がり、時計を見るともう0時近い。
これで本日終了…とも考えたが、これだけ出ているなら、うるま市も出ているかも…と考え、そこから一気にうるま市へ戻る。到着する頃には日付が変わっているだろうな…と。

…が、絶好調の今夜なのに、ここでひとつ嫌なコトが起きてしまう。
うるま市に設置したライトトラップ数基のうちひとつ、とある山の展望台駐車場の前の森に仕掛けたライト。
「あれっ?明かりがついてない?電池切れたかな…」
と違和感を感じながら近付いてみると、あろうことか中味を抜き取られた上に、光源装置がない!
「やられた!!」

他の(マナーの悪い)採集者に盗まれた。

中の虫を全部抜いたあとにわざわざ状態を元に戻し、光源装置だけを持っていくというのは、風などの自然被害や、一般人の撤去によるものではない。非常に残念ではあるがマナーの悪い採集者の仕業だろう。
まして設置場所は駐車場から少し山側によじ登った場所の木の裏側で、一般人ならまず確実に手を出さない場所だ。

使用していた光源装置(※画像)は白色光の市販品を採集用にわざわざ改造している物で手間暇かかっている物だ。
盗まれて「ハイそうですか」とはいかない。
光源装置
…百歩譲って、ケブカコフキコガネがどうしても欲しくて仕掛けてあったライトに来ていた個体を採って(盗って)しまうところまでは、まぁ気持ちは汲める(許す、とは言えないが)。
だが、光源装置まで盗むのは明らかに悪質である。
この件はSNSでも多くの方に拡散してもらったが、結局2/5現在まで返ってきていない。
盗んだ方がもし万一この記事を見ていたら、中に入っていた虫は差し上げるので、光源装置だけでも返して頂きたい。
インセクトフェアの時にでも構わないので、御返却をお願いしたい。

…とまぁ苦情はこのぐらいにして、仕方ないのでもう1ヶ所の方へ向かう。
着いて身支度を整え、ポイント沿いの道を照らしながら歩いてみると、さっそく1♂が飛んでくる。
「出てる!」
ライトに来ていた個体を回収し、森に入る。
先程までの南部ポイントも斜面であったが、ここはそれ以上に急斜面。気を抜けば足を滑らせてしまう。
道路脇から急角度に落ちていく斜面。体感斜度は80°…ほとんど崖に近い(実際の斜度は多分40°ぐらいだと思うが)。
足を踏ん張り、木に掴まりながら斜面を下りていく。
急斜面な上に、ここは不法投棄ゴミも多く、うっかりすると植木鉢や素焼きの筒みたいなのでスッ転びかねない。
ちなみに、一応ここは沖縄本島なので ハブがいる可能性もある のだが、不活発な時期なこともあり、ほとんど考慮していない。…良識ある方々は決して真似してはいけない。
うるま市環境
森に入ると、胸元に下げた蛍光灯に惹かれてケブカの♂があちらこちらから飛んでくる。
シダの向こうから、リュウキュウチクの間から、ブブブブッ!と羽音を響かせながら下手くそな飛び方で近付いてくる。

…それにしても、ケブカコフキは本当に飛び方が下手である。
ライトから1~2mの距離にいるのに、枝にぶつかり、シダにぶつかり、地面に落ち、と全然光に辿り着かない。
すぐ先にいるのに手元に来るまで数分掛かる個体もいる上、中には途中でとまって諦めてしまう個体までいる。
ケブカを採集するたび毎度思うのだが、

そんなに飛ぶの下手なのに、なんで森の中におんねん。

…実際のところ、体が非常に軽いため風に弱く、森の中など風を除けられる場所でないと生きていけないのだが、それならそれでもうちょっと飛ぶの上手くなれよ、と。
ま、それがケブカのチャームポイントのひとつでもあるのだが。

そんなこんなで♂を摘まみながら探していると、
「あっ!
うるまケブカ交尾
見~つけた!」
ペアである。
思い入れのあるうるま市のポイントで、ついに♀を見つけた。
♀を見ながら、急斜面の藪の中で思わず一息ついてしまう。
自分はタバコは吸わないが、もし喫煙者なら一服したくなる所なのだろうな…と思う。

2010年冬から4年越しの達成であり、感慨深い。
やんばるでポイントを当てて♀をたくさん見つけ、その遠征で最後の晩に幸運にもこのうるま市のポイントを見つけてしまった。しかし、その晩は♂はボチボチ採れたものの♀までは辿り着けず、課題を残したまま帰途に就いた。
2年後の2012年は久米島に遠征し、沖縄本島ではほとんどやらなかった。
更に2年…2014年、ようやくこのポイントの♀をこの手で掴む事ができた。

一息ついている間にも、胸元の蛍光灯目掛けて♂はポツポツと藪の中から飛んでくる。
「もう1♀、探すかー!」
自らに気合を入れて、なんとかもう1♀を得て、森から上がったのは夜中の2時近かった。

更にそこから名護まで北上し、本部半島に仕掛けたライトトラップで♂数頭を採集し、トラップは撤収。
全てを終えて寝たのは、既に朝も近い4時頃であった。
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No title

虫けら屋さんの行動力はいつもながらさすがです。
ケブカたくさん取れたようでよかったですね。

虫をロスとしたときの悔しさは、本当に悔しいですよね。
しかもそれが自分のせいだったときには、悔やんでも悔やみきれないですね。

No title

8日の標本教室ではお世話になりました。
名刺を見たときに、’え!?虫けら屋のブログ書いてる方だったんだ!’とびっくりしました。
年賀状のケブカコフキの写真はこのときに撮影したものなのですね。
このケブカコフキは標本にしたのですか?

>モモンガさん
たくさん…もそうですが、何より稀少な南部産地で採れたのが一番です。
場所による違い、共通するもの…色々あってまだまだ分からない、分からないからこそ面白い虫です。

>Taroさん
標本教室ご参加、ありがとうございました。
はい、虫けら屋が講師をしております(笑)

ケブカコフキ、採った個体はしっかり標本にします。
まだタトウに入ってる個体もありますが、順次展足していく予定です。
プロフィール

虫けら屋

Author:虫けら屋
もっぱら採集中心の虫屋さん。当初は東京で発生が確認されたが、後に埼玉県に移入、現在は千葉県での生息が確認されている。
肉眼で見て楽しめるぐらい大きなミーハー虫が好き。

Blog内の写真・文章等については、少しの引用的転用ぐらいならOK…と思っていたのですが、なんか最近フリー素材か何かと勘違いされているフシがあるので、今後は勝手に使わないでね。

※お問い合わせを頂く際はEメールにてお願い致します(採集ポイント等についてはお答えできかねますが…)。なお、採集遠征等により、お返事まで数日以上掛かる場合もございますので予めご了承下さい。
   ↓↓↓
akepon6464@yahoo.co.jp

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