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沖縄ケブカコフキ探索2014~その6~

12月28日
明日には帰途に就くので、ケブカを狙えるのは今夜が最後である。

何処で狙おうか…と考える。
うるま市のポイントも発生しているのは昨夜確認できたので狙おうと思えば狙えるが、昨夜採集した感じでは全体の平均サイズは北部よりやや大きいものの、その前に採った中城方面の産地ほど巨大ではなかった。
ならば、知念に仕掛けたライトをチェックして、もしそこに入っていれば知念、入っていなければ昨夜と同じ場所で狙おうと決める。
本部半島とうるま市のトラップは完全に撤収。
帰る前にまたこっちまで回収に来るのは大変なので、もう最後の晩は南部のポイントだけに集中する。

『南部のケブカコフキは大きい』とは以前から言われていたことであったが、実際採集してみて激しく実感した。
画像でも一目で分かるぐらい、明らかに南部の個体はデカイ。
南北ケブカ比較
画像の南部個体は採集した中でも最大級のものではあるが、やんばるの個体を見慣れていると異様なほど大きく見える。
同じ島で同じ餌を食べて同じような時期に発生しているハズなのに、この違いはどこからくるのだろうか?
…そんなコトを考えながら車を走らせ、名護から一気に知念に向かう。

知念は、以前は知念村であったが合併して南城市になっている。
やや分かりにくいものの2~3ヶ所リュウキュウチク群落があり、そこに仕掛けたライトトラップを確認に行く。
サンゴ隆起の岩をちょっとよじ登ってライトを見に行くが、期待に反してケブカは入っていない。
…ここのポイントはちょっと期待していたんだが、まだ規模が小さいということなんだろうか。
2月の記録だがこの近辺で採れているのは確かなので、どこかに発生源があると睨んだのだが…

知念周辺は古くからの集落なのか道が細く入り組んでおり、一度入るとバックも転回もできない所が多く、走った先がどこに出るか分からない。農道も山裾をどう走っているのか分からない道が多く、さんざん走ってもう元の集落からどれぐらい来たのか分からなくなった頃にぽっと町に出たりする。
山のどこかにリュウキュウチク群落があって、そこで発生しているのか…と思うのだが、足で探すには限界がある。
何処かに良い場所はないものだろうか…

さて知念でケブカが見つからなかったので、昨夜と同じ場所をもう一度攻めるコトにする。
範囲自体は決して広くないので昨日昼間にだいたい下見は済んでしまったし、夜までまだ時間があるので車を停めて体を休めながら色々と考えを巡らせる。

どうもこのポイントは林床がゴチャゴチャと混み入っているせいか、ケブカは林床よりも高い場所の空間を飛んでいることが多いようだ。発生地を外から眺めていると樹冠部近く(と言っても2~3mぐらいの高さだが)を飛んでいる個体をポツポツと見掛けるし、林内で飛んでくる♂も胸高ぐらいを飛んでくるものが多い。
南部ケブカ環境の林床
なんとなく『ケブカは林床近くを飛ぶ』というイメージがあったが、要するに空間があって飛びやすい高さを飛ぶというのが正解なようだ。
北部やんばる地域ではそれがリュウキュウチクの生えた林床で、ここ南部ポイントでは高めの場所になるということ。
…そう言えば、徳之島で採集した時は林床が開けているのに上から落ちてくる個体も多かったな…とか思い出す。
多分、♀が掴まりやすい場所が何処にあるか、もポイントのひとつなのだろう。
ケブカコフキは♀がフェロモンを飛ばし、♂があの大きな触角でそれを感知して探り当て、交尾をする。
だからフェロモンが拡散しやすいように♀は周囲の空間が少し開けて空気の流れやすい場所に付いていることが多い。
(※空間と言っても1~数mの範囲で、人間が言う“開けた場所”という程の広さは無い)

休んだり、ちょっとコンビニで立ち読みしたりしながら時間を潰し、やがて真っ暗になったので装備を整えてポイントへ向かう。
パラパラと小雨が降っているが、ケブカはこの程度なら活動するだろう。

何時頃から活発に飛ぶのかも確認したいので、今日は最初からポイントの灯火に張り付いてみる。
周囲は既に暗いが、まだケブカは見られない。
今日は一日天気があまり良くなかったため、既にポイントの路面も濡れており、非常に確認がしづらいが、いないようだ。
周囲の外灯も確認しながら待つ。




「きたっ!」
目の前をフラフラと飛ぶ影を見つけて叩き落とし、確認すると、予想違わずケブカ♂である。
南部のケブカ♂-2

時計を見ると、19:45。

ふむ…やんばるより遅いな。
外灯があったりして周囲が明るいせいなのか、天気のせいなのか、それとも南部の活動開始時間が実際に遅いのか、はたまた…理由はいくつも思い浮かぶが、とりあえずは活動開始確認、である。
しかし雨は相変わらずで、既に草木は濡れ光っていて、正直あの藪の中に突入するのはかなり気が引ける…ていうか普通はこの時点で諦める。

諦めないのが虫けら屋。

…はい、そこ。「ただのバカ」とか言わない。
思っても口に出さない。

それでもすぐに藪に入る気にはなれず、「とりあえず、何頭か確認して活発に動き始めたのを確認してからだな」と決め、再び外灯探索開始。
しばし間が開き、「後が続かねーな…」と思い始めた矢先にもう1♂。
雨のせいで昨夜より活動が控えめなのだろうか。
…やんばるでは気温12℃の雨の中でも活発に活動していたが、あれはあくまで森の中での話。森の外まで飛び出す個体がどの程度いたのかは分からない。

それでも3♂を得た時点で、“これはもう入らなきゃダメだな”と覚悟を決めて濡れた藪に突入する。
濡れた枝葉をかき分けながら藪の中へと入り込み、周囲を照らす。
足元の枯葉も水を含んで滑り、昨夜以上に足元が悪い。
昨夜♀が付いていた場所や、それに似た場所を思い浮かべながら照らしていくが、すぐには♀は見つからない。
だが、いないワケではない。
大きく育ったクワズイモの群落が見えて、葉裏を覗きこんだら…
「いたっ!」
南部ケブカ♀クワズイモ
クワズイモの葉裏にしがみつくようにとまる♀。
フラッシュに驚いて落ちても良いように、下に網を構えながら数枚撮影。
こういう時、お手軽に撮影できるのはコンデジの利点である。一眼レフのマクロ撮影ではこうはいかない。
水滴でカメラを濡らさないように注意しながら撮影し、♀をケースに入れたら探索再開。
林の中に入ってしまえば雨は樹冠で遮られ、外にいるより濡れない。
オマケに長そでシャツの上から更に登山用の厚手の長そでシャツを着込んでいるので、体までは水分が浸透してこない。
こういう雨中での探索の場合、体が濡れるかどうかで体温の奪われ方は全く違う。
雨合羽を着るという手もあるのだが、枝に引っ掛かるとカッパは破けてしまうことも多く、藪漕ぎを伴う採集だと必ずしも便利なアイテムではない。
胸元の蛍光灯に引き寄せられてポツリポツリと飛来する♂を摘まみながら、♀を探す。

ヘッドランプの明かりと共に視線をゆっくり流していく。
リュウキュウチクの他にも様々な植物が密生するこのポイントは、やんばるとは少し探す感覚が異なるが、既にここでの探し方に慣れた感がある。
こういう時は、多分神経が極度に集中しているのだろう。
いないかな…と覗き込めば、お取り込み中。
南部ケブカ交尾-2
「きゃーっ(照)」

…ちなみに、ケブカコフキコガネの交尾というのは、この状態ではまだ完全には成立していない。
ここから次第に♂が後ろにズレながら交尾器を挿入していき、完全に挿入されると♂は♀の体から脚を放してしまい180°そっくり返ってしまう。
南部ケブカ交尾
なんともアクロバティックな交尾なのである。

…それにしても、だ。
昨夜もそうだったのだが、ここだとクワズイモの葉についている個体というのが意外と多い。
掴まりにくいだろうとは思うのだが、葉がしっかりしていて雨にも濡れにくく、葉の周囲に空間ができる等、利点も多いのだろう。

藪の向こう、背の高い(2m以上ある)ススキの葉に♂がとまっているのが見えたので、藪漕ぎをして近付くとその近くにももう1♂。それを採ろうとしていたら更に1♂が飛来する。
“あ、これは近くに♀がいるな”と思っていたら、またもクワズイモの葉裏に♀。更に欲を出してもう少し探してみたら、灌木の葉裏にももう1♀。
藪が混み入っているせいか、ここでは同じ空間(開けた場所)に複数の♀がいることがある。
やんばるだと林全体が空いているため、♀は思い思いの場所に散っており近くに複数がかたまっているコトは少なかったが、ここではフェロモン拡散に適した場所が限られるため、必然的に集まってしまうのかもしれない。

シャツの袖口は既にビッショリだが、体までは濡れていない。山シャツ優秀!
帽子を被らずに入ってしまったので髪も既にかなり濡れてしまった。
頭からの放熱は体全体の4割にもなるという話を聞いたことがあり、実際帽子を被っているかいないかで寒さが全然変わったりすることもある。枝などからの頭部保護もあるので本当なら当然被った方が良いのだが、今日は完全に失念していた。
目にかかってくる前髪を鬱陶しく払いながら探索を続ける。

一度森から上がって外灯下に落ちている♂を探しに行くが、今日はひとつも落ちていない。
路面が濡れて探しにくいのもあるとは思うが、昨夜はポツポツと拾えたので雨の影響は間違いないだろう。
ただ、林内の♂は昨夜とあまり変わらず飛んでいるようにも思うので、雨が降ると尚更森から出なくなるのかもしれない。
少し休憩をし、再び藪の中へ。

藪が濃いので
入れる場所が限られており、既に見た場所には♀は見つからない。
それでもなんとか探し、1♀を追加。
5♀を得て森から上がった。
南部ケブカ5♀
時計を見れば、昨夜と同じく0時近い。
数や雰囲気からしてほぼ発生ピークだと思うが、やはりやんばるに比べれば個体数はかなり少ない。
これが群落の大きさに比例するものなのか、それとも他の要因があるのかは分からない。
ただ、うるま市のポイントはかなり大きな群落があるにも関わらず、やんばるより密度は低いように思えたので、中南部では元々生息域での密度も低いのかもしれない。
車に戻ってから、どうも視界が悪いな…と思ってメガネをはずしてみると、濡れた髪が何度もレンズに張り付いたせいで脂と汚れでギトギト…。
汚れメガネ
かけると視界が白く濁るほどの汚れ。
やれやれ…と追加捨てのメガネクリーナーで掃除しつつ、車の暖房を全開にして濡れた服を乾かす。

南部のケブカは、北部と比べて明らかに大型個体が多く、逆に生息密度は低い。
この違いがどこから来るのか…興味深くはあるが、それを解明しようと思ったら、それこそ沖縄に住み込んで産卵から幼虫飼育までやって生態を解明しないと分からないだろう。

ケブカコフキコガネというのは、知れば知るほど謎の湧いてくる虫である。
♂が活発に飛び回って灯火にも飛来するので活動期の成虫を見つけやすい半面、その発生シーズンは決して長くなく、また年によってズレることもある。
更に発生時期が冬~春ということもあり副産物が少ない。
…毎度のことながら遠征者泣かせの虫である。


12月29日最終日は、知念のライトトラップを撤収したがやはりケブカは入っておらず。
…ホント、何処で発生しているんだか。

全てを撤収して荷物を片付け、近くの立ち寄り湯でひとっ風呂浴びて、レンタカーを返却しに那覇市内へと向かった。















~ニセあとがきモドキダマシ~

はい、これにて今回のケブカ探索記は終了であります。
マイナーな虫の採集記にお付き合い頂きありがとうございます(^^;

本来なら伊平屋島で初記録のケブカを採ってウハウハする予定だった(をいっ)今回の遠征でしたが、その伊平屋島はケブカの気配もなく沈黙。仕方なしにケブカの噂がある伊江島に転戦するも、謎のソ連製対空機関砲を見つけただけでやはりケブカには出遭えず。ガッツリ2連敗食らったにも関わらず当初予定になかった沖縄本島南部のケブカで大逆転、という波乱万丈な遠征となりました。
出発前からドタバタするし、車のバッテリーは上がるし、懐中電灯は落として無くすし、ライトトラップの光源装置は盗まれるしと某方のダークゾーン を思わせる出来事が多々あったものの(笑)、それなりに満足のいく成果を上げることができました。情報を頂いた方々に感謝し、ここで改めてお礼申し上げます。

…ちなみに、盗まれた光源装置はまだ返ってきてません。
ホント、返して下さい。

さて、気付けばもう2月半ば。
早春の虫達が早々と動き始める頃です。
皆様にも私にも、今年も良い(虫との)出遭いがありますように。
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お疲れ様です。

たびたびの南の島々への遠征。お疲れ様です。いつも楽しく拝見しております。今シーズンもぼちぼちと到来しますが、今年も何処かの自然観察会でお会いできれば良いなとおもっております。埼玉インセクトフェスには今の所行きたいなぁとは思ってますが、ちょっとまだわからない状況です。都内でのリュウキュウツヤハナムグリの発見も聞かれるようで、早く賑やかになってほしいですね。次回楽しみにしています。

お疲れ様でした!

今回の記事も楽しく拝見させて戴きました。

ダークゾーンの某方って誰だろう...(笑)

フィールドでの葛藤ありますよね。
その時は大変な思いをしますが、あとあと良い思い出になって
くれれば良いですね^^

埼玉インセクトフェアに行ければ私も顔出すかもです。

Re: お疲れ様です。

>虫捕り親子さん
ありがとうございます。
副産物のあまりない変な時期の遠征でございます(笑)

西の方では既にモンキチョウが飛び始めたようですし、関東でもそろそろ飛び始めるかもしれません。
明日からはまた寒さが戻ってくるみたいですが、それでも春は近くまで来ていますので、そろそろ春モノを何から始めようかと悩み始める時期ですね。

Re: お疲れ様でした!

>魔琴さん

> ダークゾーンの某方って誰だろう...(笑)

…さて、どなたですかねぇ?(笑)

フィールドでの葛藤、よくあります。
「もう一回だけ見てこようか」「もう一本だけ蹴ってみようか」「あの斜面の上の木を、チェックしに行くか行かないか」
その“もう一頑張り”が成果に結びつくことも多いのですが、一方で空振った時のガックリ感もなかなかのもので、よく悩みます。
でも、「やらずに心を残すより、やって後悔した方がまだマシ」ということが多い気がします。

フェス、お会いできると良いですね。
今回は私もお客として会場をフラフラしております。
プロフィール

虫けら屋

Author:虫けら屋
もっぱら採集中心の虫屋さん。当初は東京で発生が確認されたが、後に埼玉県に移入、現在は千葉県での生息が確認されている。
肉眼で見て楽しめるぐらい大きなミーハー虫が好き。

Blog内の写真・文章等については、少しの引用的転用ぐらいならOK…と思っていたのですが、なんか最近フリー素材か何かと勘違いされているフシがあるので、今後は勝手に使わないでね。

※お問い合わせを頂く際はEメールにてお願い致します(採集ポイント等についてはお答えできかねますが…)。なお、採集遠征等により、お返事まで数日以上掛かる場合もございますので予めご了承下さい。
   ↓↓↓
akepon6464@yahoo.co.jp

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