逆さトックリ

木の枝に逆さまに付いたトックリ…これは一体何だろう?

巣-1

この季節、植込みの手入れをしていると、藪の中に見つけることもあるかもしれないが、不用意に手を出さないようにしたい。
というのも実はこれ、ハチの巣なのである。
それも、スズメバチ の。

コガタスズメバチ いう種類の蜂が最初に作る巣は、よくあるさざ波模様の丸い巣ではなく、こういう逆さトックリのような形の巣なのである。
※たまにトックリバチの巣と間違われることがあるが、トックリバチの巣はもっとずっと小さく、泥でできている。テニスボールより少し小さいぐらいの大きさのものは、このコガタスズメバチの巣である。

日本には約7種類のスズメバチが生息しているが、どれも一年で生態のサイクルが完結する。
秋に生まれた次世代の女王蜂だけが越冬し、春から活動を始める。
最初は女王蜂だけであり、産卵・巣作り・エサ集め・幼虫の世話とすべてを女王蜂1頭でこなす。
やがて産んだ卵が孵って幼虫が育ち、働き蜂が羽化してくると女王蜂は巣にこもって外には出てこなくなり、産卵に専念するようになる。
すると巣は急激に大きくなり始め、晩夏には最盛期を迎える。
やがて秋になると、次世代の新女王蜂、それに対をなす♂バチが産まれてくる。
新女王蜂が巣立ち、別の巣の♂たちと交尾を済ませ、越冬に入る。
創設女王蜂や働き蜂はやがて死に絶え、♂も死に、新世代の女王蜂だけが越冬して翌年またイチから巣作りを始める。
…古い旅館に飾ってあるような巨大なスズメバチの巣(※1)、あの巨大な巣も一年で作り上げ、そして翌年にはもう使われないのである。

そんなサイクルの中、コガタスズメバチという種の女王蜂が最初に作る巣は、こんなトックリ型をしている。
やがて働き蜂が出てくると下に伸びた出入口は削り取られ、丸い巣へと変わっていくので、この形の巣があるのは今の季節だけである。

トックリ型の外壁を切り取ってみると、中はこんな感じ。
巣-2
この中にある巣の小部屋で幼虫が1頭ずつ育っている。
巣-3

さて、先程「不用意に手を出さないように」と書いたが、もし万一、自宅の植え込みなどに営巣されてしまった場合は、逆に駆除するのであれば今が一番良い。
この形の巣の時には中にいるハチの成虫はほぼ女王蜂のみなので、それを退治してしまえば簡単に巣を撤去できる。
これを怖がって放置しておくと夏には数十頭~百頭ぐらいの働き蜂を擁する巣へと成長してしまい、危険度は高くなる。
民家から離れた場所など人と接触する危険の少ない所に営巣したような巣はそのまま残してあげたいが、庭の生け垣などに営巣してしまった場合はそうもいかないので、早めに駆除しておこう。

スズメバチの巣は女王は常に1頭のみ(※日本では)。
早い時期に彼女が死ねば、その巣は絶えてしまう。
事実、初夏の営巣初期が最も巣が絶えてしまう可能性が高いという。
駆除をするなら今のうちではあるが、でもその時にほんの少しだけ、「今は母ちゃん一人で全部こなしてる大変な時期なんだな」と思ってあげたい。







※1
旅館や田舎の軒先にあるような巨大な巣は、キイロスズメバチという別の種類のスズメバチの巣で、コガタスズメバチの巣は大きくても人の頭ぐらいの大きさ。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

ハチのプロが言うには

このトックリの伸びた部分、蜂の幼虫や蛹を専門で狙うヒメスズメバチに対する外装だそうで、女王だけで子育てをしている間はこれによって侵入頭数の絞り込みと時間稼ぎの役に立っているそうです。ワーカーが羽化して分業が出来るようになると、この部分は切り取られ巣の拡張が始まります。
プロフィール

虫けら屋

Author:虫けら屋
もっぱら採集中心の虫屋さん。当初は東京で発生が確認されたが、後に埼玉県に移入、現在は千葉県での生息が確認されている。
肉眼で見て楽しめるぐらい大きなミーハー虫が好き。

Blog内の写真・文章等については、少しの引用的転用ぐらいならOK…と思っていたのですが、なんか最近フリー素材か何かと勘違いされているフシがあるので、今後は勝手に使わないでね。

※お問い合わせを頂く際はEメールにてお願い致します(採集ポイント等についてはお答えできかねますが…)。なお、採集遠征等により、お返事まで数日以上掛かる場合もございますので予めご了承下さい。
   ↓↓↓
akepon6464@yahoo.co.jp

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
今までに来た虫好きさん
検索フォーム
リンク