ヨーロッパミヤマクワガタ~その1:出遭う~

ヨーロッパミヤマクワガタは、ミヤマクワガタの仲間で一番最初に発見(記載)された種で、このグループの基準種になっている。
ユーラシアに広く分布して、いくつかの亜種(→亜種とは)に分かれており、原名亜種のケルブス(ssp. cervus)、最大亜種のユダイクス(ssp. judaicus)、同じくらい巨大になるアクベシアヌス(ssp. akbesianus)等が有名で、これらは全て「ヨーロッパミヤマクワガタ」という同じ種内での亜種である。
これらの亜種のうち、フランスには原名亜種のケルブスが分布している。
最大サイズではユダイクスやアクベシアヌスに一歩譲るものの、横幅があり同サイズでならこちらの方が迫力勝ちする。

そんなヨーロッパミヤマクワガタの野生の姿を一度は見たいと思っていたため、今回のフランス旅行と相成った。

フランスに着いた当日、午後から早速(Googleマップで見て決めていた)森に行ってみると、思っていた以上に深い。
深いフランスの森
木々も高く、ミヤマが集まるオークの木というのも何本もある。
ヨーロッパミヤマクワガタはまず間違いなくいるだろう。
いるだろうが、一体どこをどう探せば良いのだろう…?
…初めて南西諸島に昆虫採集に行った時に陥る、あの気持ちと同じだ。

森が想像以上に大きく、深く、自分があまりに小さく、何をどうすれば良いのか分からなくなるあの感じ。

それでも他の昆虫を探したりしながら森の中を歩いていると、大きな倒木の上に明らかにミヤマのものと思われる脚パーツが落ちていた。
おそらく鳥にでも食われたものだろう。
パーツの大きさからしてナカナカ大型個体らしい。
さっそくの生息証拠発見に興奮してよくよく探してみると、
ケルブス頭
こ、これは…!!

間違いなく、ヨーロッパミヤマクワガタの頭である。
しかも、それなりに大型の。

…さ、最初の発見がコレか…

明らかに、日本のミヤマクワガタとは違う。
全体に横幅があり、大アゴは太く、大きな内歯(大アゴのギザギザ)は少ない。
これを見て最初に思ったのは、
「本当に野生にいるんだなぁ…」
だった。

生きているのはいないのかと探してみたが、そう簡単には見つからない。
だが、これで自分が選んだ場所にヨーロッパミヤマが間違いなく生息していることは確認できたので、一歩前進したとポジティブに捉えておく。
事前に日本で調べた情報によれば、彼らは夕方に活発に飛び回るという。
今はまだ昼過ぎだし、活動時間まではまだある。
一度宿に戻り、夕方に再び出直す。

夏、フランスの日は長い。
午後5時などまだまだ昼間、7時になってようやく日が傾き始めるが、ここからが長い。
いそいそと昼間にミヤマの頭を見つけた場所に向かっていると、その途中、いきなり足元を歩くクワガタの姿!

ケルブス1号
「いたっ!」
小さな♂。
ミヤマらしい頭部の発達もほとんどなく迫力もないが、これは間違いなく、生きた野生のヨーロッパミヤマクワガタなのである。

手に乗せてみると、一丁前に威嚇してくる。
ケルブス1号-2
今まで、標本か飼育ケースの中に入ったものしか見たことがなかった遠い異国のクワガタが、今、野生のまま目の前にいる。
不思議な感覚である。

正直に言うと、初めてアマミミヤマクワガタを採った時や、初めてミヤマカラスアゲハを採った時のような、手が震えるほどの感動は…ない。
もちろん、嬉しいのは嬉しい。
だが、それ以上になんとも不思議な感覚なのだ。
標本やケースの中の生き虫は何度も見ているハズなのに、今初めてこの虫を見たような。

これがヨーロッパミヤマクワガタという虫なのか…

小さな子供が、初めて見るものを「これはいったい何だろうか?」と興味深げに観察するような、そんな不思議な感覚。
しばし呆けたように虫を見つめていたが、はと気付き、再び先へ向かう。

しばらく行くと、またしても路上に虫が落ちているのが見えた。
路上のケルブス
今度は少し冷静に、雰囲気も分かるようにとカメラを路上に置いて撮ってみる。
飛んでいたのが何かにぶつかって落ちてしまったのか、まだ下翅が出たままでひっくり返って固まっている。


…どちらも小さな個体ではあるが、続けざまに2頭のヨーロッパミヤマクワガタに出くわした。
どうやら、本当にフランスではこの虫は普通種らしい。
行く前はずっと「どうやったら見つかるのか?どんな場所にいるのか?」と悶々と考えていたが、フランス初日にしてなんともあっさりと出遭えてしまった。

彼らがこの森でどんな暮らしをしているのか、その一端を垣間見た。
これからの滞在中に、どれぐらいこのヨーロッパミヤマクワガタに出遭えるのか。
どれぐらい、その生態の一端を見ることが出来るのか。
まだ分からない。

ただ、日本から遠く離れたこのフランスという地で、この虫が確かに生きているのだと、ようやく自分の中で理解できた…
そんな気がした出遭いだった。


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探す前に飛んできた感じですね

ヨーロッパまで虫さがし ・・・・ 羨ましい限りです!

しかもヨーロッパミヤマ この後の記事が楽しみです!

Re: 探す前に飛んできた感じですね

>親子でクワ好きさん
いつかは現地で見たいと思っていた虫でしたが、本当に見に行けて、そして見ることが出来たのは幸運でした。
現地でミヤマ以外にも色々な虫も見てきましたので、順番に紹介していきたいと思います。

素晴らしい!

素晴らしい採集記ですね^^次の更新が楽しみです!

確かに私も奄美大島で、自分の眼で電柱に居るアマミミヤマ♂を発見した時の手の震えは今でも鮮明に覚えています。

ワクワク感って様々な経験と加齢で薄れていくのか、虫けら屋さんの仰るお気持ち、私も同じ様な気持ちになる時があります。

その虫を目的に、その場所まで遠征しているのに、いざその虫が目の前に現れたとき、嬉しさとはまた違ったものもありますね。目的を果たしてしまった達成感なのか?脱力感なのか?

またミニオフで語りましょう(笑)

Re: 素晴らしい!

>魔琴さん
今回は顛末記ではなく、個々の虫を紹介していく感じにしようと思っていますので、次はトンボが登場します。
…ヨーロッパミヤマもまだ書きたいことがあるので、またいずれ登場しますが(笑)

今回、感動とはまた違った感覚になったのは、「先にずっとデカイ頭を見つけていたから」等もあるとは思いますし、あまりにも呆気なく(?)見つかってしまったというのもあるあもしれません。
でも、何よりも「ヨーロッパミヤマって、本当に野生にいるんだなぁ」という不思議な感覚・非現実的な感覚が大きかったです。
自分の中で、憧れつつも遥か遠い存在過ぎて、「野生のものを自分で見つける」という感覚に頭が付いていけていなかったのかもしれません。

オフ会、しましょう。
プロフィール

虫けら屋

Author:虫けら屋
もっぱら採集中心の虫屋さん。当初は東京で発生が確認されたが、後に埼玉県に移入、現在は千葉県での生息が確認されている。
肉眼で見て楽しめるぐらい大きなミーハー虫が好き。

Blog内の写真・文章等については、少しの引用的転用ぐらいならOK…と思っていたのですが、なんか最近フリー素材か何かと勘違いされているフシがあるので、今後は勝手に使わないでね。

※お問い合わせを頂く際はEメールにてお願い致します(採集ポイント等についてはお答えできかねますが…)。なお、採集遠征等により、お返事まで数日以上掛かる場合もございますので予めご了承下さい。
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