分蜂群の悲劇

これもフランス滞在中の話。


昼間の散策を終え、ヨーロッパミヤマの黄昏飛翔前に夕食を済ませるべく一度ホテルに戻ってきたところ、玄関前が妙な雰囲気である。
何か今日はハエが多い気がする。
そして、人々が上を見上げている…?
そんな視線を追って上を見上げた時、思わず 「あっ!」 と声を上げた。

ミツバチ分蜂-1

ホテルの看板に群がる大量のハエ……ではなく、ハチである
ミツバチの分蜂 だ。

ミツバチという虫は女王蜂が数年生きるのだが、次世代の新女王蜂が生まれてくるとその巣を新女王に譲り、自分は半分ほどの働き蜂を連れて新たな営巣場所を探して巣を出ていく。
これを分蜂(ぶんぽう)と呼ぶのだが、その分蜂軍群は新しい巣場所を見つけるまで女王蜂を中心に群れで移動し、女王蜂が休むとその働き蜂も周辺にかたまる。

それがたまたま滞在ホテルの看板に来てしまったのだろう。
群れる蜂の数はすさまじく、数千か数万か。
通り掛かる町の人も思わず足を止め、ホテルを見上げている。
自分も面白くなってバシバシと写真を撮っていた。

分蜂群は比較的大人しく、こちらが危害を加えない限りまず危険はないらしいので、撮影しながら観察を続けていると、ちょうど看板の真横の位置のホテルの窓が開くのが見えた。
“なんだ…?”と思っていると、中から年配女性と思われる腕がニュッと伸びてくる。
その手に握られているのは…
「げっ!マジかよ!?」
思った瞬間、年配女性が握りしめていた物から白い煙状のものが一気に噴射される。

ぶしゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ!
ミツバチ分蜂-2

途端に分蜂群が一気に飛び広がったかと思ったら、次の瞬間に空から無数のハチが雨のように降ってくる。
殺虫剤を噴射されたハチたちはもがき苦しみ、地面に落ちてものたうち回っている。
既に分かって見ていた人たちはともかく、知らずに下を通り掛かった人はパニックである。
いきなり空から無数の虫が降ってきて、それが地面でのたうち回るのである。

見ている間にも次々とハチが降ってきて、路上は苦しみもがくミツバチが散乱するちょっとした地獄絵図と化す。
ミツバチ分蜂-3

分蜂群にとっては、運がなかったと思う。
ホテルの裏側は岩崖になっており、虫けら屋が泊まっている部屋はそちら向き。
表の看板ではなく、そちら側の崖で休憩したのならきっと何事もなかっただろう。
分蜂群は危険が少ないなど普通は知らないだろうし、何万もの蜂の群れが部屋の前を飛び回っていたら普通の人は恐怖する。
…とはいえ、あのバーサンも下を歩く人のコトを考えもせずにいきなり殺虫剤噴射はないだろ…とも思う。


なんとも複雑な気持ちにさせられた、白昼の惨劇であった。
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虫けら屋

Author:虫けら屋
もっぱら採集中心の虫屋さん。当初は東京で発生が確認されたが、後に埼玉県に移入、現在は千葉県での生息が確認されている。
肉眼で見て楽しめるぐらい大きなミーハー虫が好き。

Blog内の写真・文章等については、少しの引用的転用ぐらいならOK…と思っていたのですが、なんか最近フリー素材か何かと勘違いされているフシがあるので、今後は勝手に使わないでね。

※お問い合わせを頂く際はEメールにてお願い致します(採集ポイント等についてはお答えできかねますが…)。なお、採集遠征等により、お返事まで数日以上掛かる場合もございますので予めご了承下さい。
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