ナベブタムシ

指先に乗ってしまう小さな丸い虫、これは ナベブタムシ という。
ナベブタムシ

鍋の蓋のように丸くて平べったく、また似たような色合いをしていることから名付けられたとよく分かるこの虫だが、体長1cm足らずと小さいもののタガメ(→記事)やミズカマキリなどと同じ水生カメムシの仲間。
ただ、タガメやミズカマキリと違い、この虫は流れの速い場所を好む。
川底の石や砂利にしがみつきながら水中生活を送っているのである。
流れのあまりない止水を好むタガメ等とは好む環境が異なるのだが、どちらも比較的キレイな水場を好むのは共通しており、全く同じ場所では見つからないが、近くで見つかることはある。
条件が良い場所ではかなりの数が生息していることがあり、見つけた場所もその「良い場所」のひとつらしかった。
流れの底の小石ごとゴリゴリをこそぐように網で掬い上げると…

ナベブタムシ多数

一掬いで20頭ぐらい平気で入ってくる。
すぐ横を同じように掬えばまた20頭。ちょっと離れて同じように掬えばまた…
流れ全体ではどれほどの数が生息しているのか、ちょっと見当もつかない。

以前に喜界島の採集記(→記事)の中で登場した「アシブトメミズムシ」に通じる可愛らしさがあって、好きな虫のひとつである。
アシブトメミズムシ-2

…ところで、タガメやミズカマキリと言えば呼吸管(おしりの先)を水面に出して呼吸をする姿を思い浮かべる人もいると思うが、このナベブタムシくんは実はそれをしない。
なんと彼らはエラもないのに、プラストロン呼吸という特殊な方法により 水面に上がらなくても息ができる のである。

体にいっぱい生やした細かな毛に空気を纏わりつかせることで、いわば酸素ボンベを作り、その空気で呼吸する。
更に、その空気の中の酸素が少なくなると、周囲の水の中からその空気の中に自然と酸素が溶け込み、わざわざ水面に上がって酸素の補給をする必要がないのである。
他の水生昆虫もプラストロン呼吸も利用しているのだが、それだけでは足りず外気から直接酸素を取り込む。
しかし、このナベブタムシは、ことプラストロン呼吸に関しては特に優れているようだ。

ちなみに、プラストロン呼吸とは違うがゲンゴロウも水中の酸素を取り込むという方法を利用しており、水槽で飼育されているゲンゴロウがおしりの先に小さな泡を付けているのは、その泡の中に水中の酸素を取り込んでいるのである。
ただ、これもやはりその酸素取り込みだけでは呼吸がもたないので時々水面に上がりおしりを上げて、外気を取り込む。
ゲンゴロウが水中でおしりの先に泡を付けているのは、遊んでいるのではなく、実は水中でより長く活動するための工夫なのである。

たかが昆虫、されど昆虫。

彼らは生きていくために、実に様々な工夫をしているのである。
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No title

プラストロン呼吸ですか。
初めて目にした言葉ですが、なんともすごい機能ですね。
一体何が起きたらそんな進化が出来るものなのか、不思議です。
突然変異のたまものなんでしょうけど、不思議です。

しかしナベブタムシって名前が安直ですね~。
昆虫の名前ってシンプルですよね。
クワガタで言えば、小さいからコクワガタ、大きいからオオクワガタ、背中に筋があるからスジクワガタ、脚が赤いからアカアシクワガタ…なんかもう、そのまま(笑)

Re: No title

>たく さん
進化の過程でどうしてこういった機能を身に付けるのか、本当に不思議ですよね。

ナベブタムシ、ヒラタムシ、アカハネムシ、キチョウ…そのまんまな名前の虫って結構多いですね。
あまり捻られても「どうなのよ」ってなりますが、安直過ぎるのも…(笑)

初めてコメントさせていただく者です。いつも楽しみに見させていただいています。


ナベブタムシが渓流に住むとは聞いていましたが、プラストロン呼吸というのは知りませんでした。
考えてみれば、渓流では他の水生カメムシと同じ方法での呼吸は難しいですしね。

そういえば私もこの虫を探そうと思っていたのですが、地形の崩れで探索が困難になってしまいました…


ふと…
プラストロン呼吸だから渓流に住むのか、渓流に住むからプラストロン呼吸なのか、と…

Re: タイトルなし

>EXITさん
はじめまして。
ナベブタムシは自然渓流だけでなく、条件が良いと人工的な水路に生息していることもあるので、近くにそういう場所があれば探してみるのも手かもしれません。

プラストロン呼吸は、呼吸管を持つ他の水生カメムシも併用して使っている呼吸方法らしいので、この仲間の祖先が持っていた方法なのでしょうね。
なので、ナベブタムシは渓流に棲めるようにこの呼吸法に更に適応進化した、という感じでしょうか。
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虫けら屋

Author:虫けら屋
もっぱら採集中心の虫屋さん。当初は東京で発生が確認されたが、後に埼玉県に移入、現在は千葉県での生息が確認されている。
肉眼で見て楽しめるぐらい大きなミーハー虫が好き。

Blog内の写真・文章等については、少しの引用的転用ぐらいならOK…と思っていたのですが、なんか最近フリー素材か何かと勘違いされているフシがあるので、今後は勝手に使わないでね。

※お問い合わせを頂く際はEメールにてお願い致します(採集ポイント等についてはお答えできかねますが…)。なお、採集遠征等により、お返事まで数日以上掛かる場合もございますので予めご了承下さい。
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